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公開中

ちいさなハナミズキ

「ただいーまー!」 ふんわりとしたほっぺが柔らかく揺れ、赤く染められている。 まだ1メートルにも達しない小さな体の持ち主が、お菓子の入った袋をブンブン振り回している。 「ハル、買って来たぞ。父さんと一緒につくろうな。」 平たい顔の人が、俺にそう話しかける。 「うん!」と元気よく言ったものの、どこかぼーっとする。 暖かくて、だけど冷たくて、ここにいたら全部飲み込まれそうで____。 まばゆい光がちょうど顔に当たっている。 じんわり目を覚ますと、ぐちゃぐちゃに絡まった布団の上で、俺はだらしなく落ちていた。 「……ゆめ…」 いつもよりぐぅっと重たい体はびくともしてくれず、またまぶたもつられて重くなってゆく。 「ハルー!あんたぁ寝坊するよ!さっさと起き!」 「…へーい。」 気だるい体をよっこいしょと動かして、俺は起き上がる。 かちゃっとドアを開けて、真っ先に洗面所へ。 ぴゃっと顔を濡らし、濡れた服をまとめて脱ぎ捨て、学ランへと着替えた。 そろそろ2年生にもなるのに、未だ制服に着られている感じがしてこそばゆい。 ちゃっと飯を済まそうとした時、皿の上の小さなハンバーグに目が付く。 「ハル?どうした?」 かぁさんが不安そうに聞く。 「ちょっと寝ぼけてるだけ。」 俺はハンバーグをそっと箸で突いて、でも躊躇って、葉野菜に手をつけた。 しゃもしゃもと口の中でシワクチャになる葉野菜を咀嚼しながら、ハンバーグをじっと見つめた。 俺はハンバーグが大好きで、大嫌いだ。 もし俺がハンバーグが好きじゃなかったら、きっとだなんて都合のいいことを考える。 でもやっぱり、あの時俺が大人だったら____。
夏休みも中盤に差し掛かった頃、兄弟のような2人が、並んでゲームをしていた。 チュドーンとなるテレビの音と共に、トウヤが倒れ込んだ。 「よわいねートウヤー。」 ハルが少しおちょくったようにトウヤに言う。 「次は勝つ…」 負けじとトウヤは立ち上がりコントローラを手にした。 「ところでさハルにぃ。宿題は?」 「ぎくっ」 トウヤはすかさず聞き、ハルはひどく動揺する。 「どこまで終わってるのぉ?もう中盤だよ?ハルにぃちゃーん?」 「…」 ハルはそのまま黙り込み、スッとゲームを始めあっという間にトウヤを倒してしまった。 「あっ!」 「…俺のハートを痛みつけた罰だぜ。」 だが反抗虚しく、ハルはトドメを刺された。 「罰って、やってない自分が悪いでしょ。」 「うっ」 ハルは夏バテみたいに倒れた。 トウヤはそんなハルを心配することはなかった。
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