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最後の日
「…だってよ。」
彼はため息をつきながらリモコンを手に取りテレビをつけ、頭の中をきれいにしようとした。
しかしそんな彼の考えは甘く、かえって彼の頭にそれを刻み込んだ。
明日地球に隕石が落ちるらしい。
現在時刻は21時。
地球滅亡まで残り3時間だ。
皆財産を使い果たそうと物を爆買いし、テレビなどの報道機関は今までにないほど忙しく、どのチャンネルもその話題で持ちきりだった。
そしてSNSが普及した今、案の定ネットにはデマ情報が流れた。
隕石は明日ではなく今日落ちてくると言う者、そもそも隕石など落ちてこないと言う者が現れ、さらには公道を全裸で歩くものまでもが現れた。
こうして世界は混乱に陥った。
しかしあるカップルは違った。
隕石が落ちてくることに関心がないらしく普段と同じ怠惰な生活を送っていた。
少し顔色が悪いことと、動きが鈍いこと以外は何も変わらなかった。
特にデートをするわけでもなく、ただソファに寝転がってゲームをしたりしていた。
どこへ行っても人だらけで外に出る気力が起きないのもその原因の一つかもしれないが、一番はやはり世界に関心がないことだった。
少し時間が経ち、地球滅亡まで残り1時間になると二人はようやく動きだし、最後の食事をしようと料理の準備をした。
最後の食事は二人の好きなオムライスだった。
特に急ぐわけでもなく、彼らがいつも通りゆっくり料理をしていると時計の針は地球滅亡の10分前を指していた。
窓の外からはやはり人の騒ぎ声が聞こえてくる。
天と地の差だ。
二人は席に着きオムライスを口に入れた。
「…やっぱりオムライスはいつ食べてもおいしいね。」
「そうだな。」
気がつくと地球滅亡の二分前になっていた。
彼らは全く急ぐ素振りを見せずにオムライスを食べ続けた。
残り1分になり彼女はほほえみながら言った。
「好きだよ。ずっとずっと、これからも。また、天国で会えるといいね。」
「ああ。」
彼もまたほほえみながら言った。
そこには窓の外とは真逆の穏やかな空気が流れていた。
そして世界はだんだんと明るくなり、夜とは思えないほどの明るさになった。
そこには綺麗な世界が広がっていた。