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あまねくすべてに(文スト夢?)本編2
やっとここまできたぁあー!
(言われなきゃわかんないくらいの)小説版のネタバレあるかも(探偵社創立秘話の敦君入社前夜のほう)
目線というか、時間ちょっと飛ぶときに区切を使ってるので結構多くて煩わしいかもしれないですがすみません…これでも4個くらい減らしたんです。回想のところとか
電話が鳴った。
一応出社の用意はとっくに済んでいるけど朝一で電話をかけてくるような迷惑野郎は一人しか思い当たらない。
「…なに」
『やぁ普ちゃん、おはよう。よく眠れたかい?』
「あんたのせいで寝起きから最悪の気分です」
嘘。
『そうかい、まぁそれはいいんだけど―』
いいのかよ。
『助けて。死にそう』
「……」
私は息を大きく吸って、近所迷惑にならない程度に叫んだ。
---
「「おはよう敦君」」
「おはよう…ございます?」
戸惑っている敦君。それはそうだ。なぜなら…
「…なんですか?これ」
「なんだと思う?」
「朝の幻覚」
「ちがう」
ドラム缶にはまった太宰。そして助けるでもなく横でそれを見下ろす私。
「いや、このような自殺法があると聞き、試してみたのだが…苦しいばかりでいっこうに死ねない。」
「探偵社の皆さんに助けを求めなかったんですか?」
「求めたよ?そこにいる普ちゃんにも。でもなんていわれたと思う?」
「よかったじゃん」
「ご名答。只普ちゃんに関してはもっと非道い。」
「え……」
『助けて。死にそう』
「……」
私は息を大きく吸って、近所迷惑にならない程度に叫んだ。
「勝手に死んでろ糞太宰ぃー!!!」
「ってね!」
「えぇ…」
(この後無事太宰は敦君によって救出されましたとさ。
めでたくない、めでたくない)
---
「まぁ任せたまえよ! 私は太宰、民の尊敬と探偵社の信頼を一身に浴する男…」
太宰治だ!でしょ?
「おい太宰!何をしている!この包帯無駄遣い装置が!!」
太宰のホラ自慢話は国木田さんの怒声によって遮られた。
有難う、国木田さん。
「クニキダクン。イマノコショウハドウカトオモウ…」
「この非常事態に何をとろとろ歩いて居るのだ! 疾く来い!」
「朝から元気だなぁ…。あんまり怒ると禿げるよ?」
「そうなのか…?!」
そのあと嘘だといわれて国木田さんが太宰を締めていたのは言うまでもない。
揺さぶられて『うへへぇ』と笑っている太宰。気持ち悪い。
「あの……『非常事態』って?」
「そうだった! 探偵社に来い、人手が要る!」
なんだろう。
「何で?」
「爆弾魔が…人質連れて探偵社に立て篭もった!」
なんか手伝わされそう…逃げよ。
「え」
私の腕をつかんだ手の行く先は太宰。
「どこに行くのかな?普ちゃん」
うわぁぁぁあああん!!
---
「ワー、ナンテコッター」
今私達の目の前には人質である見覚えある制服を着た女学生|爆弾魔《谷崎君》。
…ほんとになんてこったーパンナコッタ―…パンナコッタって何?おいしいの?(知らんがな)
「犯人は探偵社に恨みがあって、社長に会わせないと爆発するぞ、と」
「ウチは色んな処から恨み買うからねぇ」
「爆弾に何かを被せて爆風を抑える手もあるけど……」
「この状況じゃ無理だろうね」
「どうする?」
がんばれ二人。私には無理そう。いろんな意味で。
あー…昨日の会議出とけばよかった。
太宰…なんで|此奴《敦君》探偵社に入れるなんて言ったんだよ…!
「会わせてあげたら? 社長に」
「殺そうとするに決まってるだろ! それに社長は出張だ」
あのあと私が帰ってから、何やってたんだろーなぁ…。絶対楽しかったやつじゃん。谷崎さんが揶揄われるタイプのやつじゃん。善いなぁ…。
などと考えていたら国木田さんが爆弾魔さんを宥めに行っていた。
いつの間に。てかアドリヴ苦手なのにあんだけの演技力ってことは相当練習したんだな…
「おい、落ち着け少年」
「来るなァ! 吹き飛ばすよ!」
「ふむ、普ちゃん。どう見る?」
無理やり私に振られた。おい太宰。今度『うずまき』のパフェ奢らせるぞ万年ツケ野郎。
「えっと、やっぱり探偵社に私怨を持つだけあって社員の顔と名前ぐらいは調べ上げている。もちろん、太宰君や私が行っても余計警戒されるだけ」
「そうだねぇ…却説、どうしたものか」
そう言った彼の視線は敦君を捉える。
「…はぁ」
にやぁ、と笑って太宰は予想通りの提案をした。
「________」
---
「ややややめなさーい!お親御さんが泣いてるよー!」
「ぐふっw」
「敦君ダメ人間の演技うまいなぁ」
思わず吹き出すところだった。てか吹き出した。
「ぼぼ、僕はさ、騒ぎをき、聞きつけた一般市民ですっ! いい、生きてればいいことあるよ!」
「誰だか知らないが無責任に云うな! みんな死ねば良いんだ!」
「ぼ、僕なんか孤児で家族も友達も居なくて、この前その院さえ追い出されて、行くあても伝手も無いんだ!」
「え……いや、それは」
困ってる…
「社員が行けば犯人を刺激する。となれば、無関係で面の割れていない君達が行くしかない」
「む、むむ無理ですよ、そんなの!」
「犯人の気を逸らせてくれれば、後は国木田君が如何にかしてくれるでしょ」
能天気だ。
「それか普ちゃんが」
「おい。やらないぞ」
「ね、張り切ってるでしょ」
「やらねぇからな?!」
「そうだね、落伍者の演技でもして気を引いては如何かな」
「訊けぇ!!」
「害獣に変身しちゃうらしくて軍警にバレたらたぶん縛り首だし、とりたてて特技も長所も無いし、誰が見ても社会のゴミだけどヤケにならずに生きてるんだ!」
「えぇ…」
「ね、だから爆弾捨てて一緒に仕事探そう」
目がガチだなぁ…。
てか|アイツ《谷崎》、めっちゃ困ってるし。まだまだだなぁ…。でもその隙に太宰が国木田さんに何か指示を出した。
「手帳の頁を消費うから、ムダ撃ちは厭なんだがな……!」
『独歩吟客』
「手帳の頁を___鉄線銃に変える…!」
彼が手に持っていた爆弾の釦を弾き飛ばし、ついでに彼を投げ飛ばした。砂埃が薄くなって見えたのは伸びている彼。
うわぁ…、と思わず声が漏れてしまう。
谷崎君かわいそう。
これでめでたしめでたし…?
「ピ」
「ピ…?」
「あ」
「あと五秒?!あと五秒で爆発する?!」
敦君の叫ぶ声が部屋中に響き渡った。
_____その時、信じられないものを見た。
「__は?」
『爆弾に何かを被れば爆風を抑えることが___』
でも、実践するとはだれも思わなかっただろう。___それも人間『自身』が。
「莫迦!」
そんな誰かの声が後ろで響いた。
・ ・ ・ ・・・・・・・・・
「やれやれ……莫迦とは思っていたがこれほどとは」
「自殺愛好家の才能があるね、彼は」
「へ?」
「ああーん兄様ぁ! 大丈夫でしたかぁ!?」
ゴキッ、と爆弾魔の___谷崎君からすごい音がした。
あれ|胸骨《あばら》折れたんじゃね?
ちらっと敦君のほうを見るとぽかんとしていた。それもそうだよなぁ…。
「恨むなら太宰を恨め。若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた己を恨め」
「そう云うことだよ、敦君。つまりこれは一種の──入社試験だね」
「入社……試験?」
「その通りだ」
バッと後ろを見ると和装の男性が立っていた。
「社長」
探偵社社長、福沢諭吉。
「そこの太宰めが『有能な若者が居る』と云うゆえ、その魂の真贋を試させて貰った」
「君は社長に推薦したのだけど、如何せん君は区の災害指定猛獣だ。保護すべきか社内でも揉めてね。で、社長の一声でこうなったと」
「で、社長……結果は?」
社長は少し目を瞑って何か考えるようにしてから、口を開いた。
「太宰に一任する」
「合格だってさ」
「よかったねー敦君」
ちょっとかわいそうだけど。
太宰と敦君が揉めている。
「いやこんな凄い仕事!僕には無理ですよ!」
「えー…じゃあ社員寮引き払わなくちゃな―…電話代の払いもあるけど…大丈夫?」
・・・これからまた、いや
今以上に五月蠅くなるなぁ…
敦君気を落としちゃだめだよ!縛り首にされないってことは希望はある!
…ということで買い出しに行こうか!帰りに甘味処にでも寄ろう!
白玉あんみつが食べたいから!