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単独任務。1
言い忘れてました。
澪は同期組ほどじゃないけど五感が他の人より鋭いです。
「じゃあ任務行ってきます!」
「あぁ。気を付けろ」
義勇さんに見送られて、任務がある山に歩いて向かう。
今日はちょっと気分がいいから任務も調子は出るといいな、とか思いながらも夜道を歩く。
確か、任務内容はこの山の中にある小さな村に鬼がでた、という内容の様だ。
少し急いだほうがいいのだろうか。
鬼が出た、っていう事は死人が出ていてもおかしくないな。
そんな事を思いながら走って山まで向かうことにした。
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「ここ……だよね……」
息を整えつつ、村の入口の手前まで歩いた。
何の変哲もない、ただ何処にでもあるような村に入る入口……の筈なんだけど。
(さっきから妙な違和感が……)
誰かから見られている、何か変なものが身体にまとわりついている。
端的に言ってしまえばそんな感覚が私の全身を覆っていた。
でも、考えていても仕方ない。
さっさと鬼を殺さないと行けないんだから。
そう思って、村に足を1歩踏み入れた。
─────瞬間、ぞわっと背筋が凍るような……そんな感覚が襲ってくる。
「!?」
刀に触れ、何時でも抜け対応できるように神経を研ぎ澄ませた。
…………でも、少し待っても何も来ない。
「気の所為……?」
気にしていても仕方ないのだろうか。
いや、もしかして今既に敵の血鬼術にハマったのだろうか。
そんなことばっか考えてしまうため、頭を振って考えを捨てる。
早く村の人に事情を聞きに行かないと……
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おかしい。
流石にこれはおかしすぎる。
「なんでこんな人居ないの……!?」
人の気配いるかなーとか思いながら探ろうとしてもぞわぞわする感覚が来るから宛にならない。
そんな事を思いながらも歩いていると、遂に人がいるのが見えた。
腕を痛そうに抑えていて、腕を切っちゃったのかな、とか考える。
「大丈夫ですか?」
そう言って、腕を抑えて地べたに座り込んでいる女性に話しかけた。
女性は身体がぶるぶると震えていて、余程怖かったのだろうか、目には涙を浮かべている。
「腕、見せてください。止血だけします」
「はい……」
優しく言うと、女性は腕を見せてくれた。
あまり傷は深くないけど、未だ血は出ている状態だった。
腕を清潔な布で縛り、止血をしてから
「誰にやられたんですか?」
「分かりません……気付けばやられていて……」
そういって下を向く。
多分だけど、血鬼術か何かでやられたんだろう。
ふと他の方向を向くと、血痕が点と繋がって向こうに続いてることに気づく。
「……家の中にいて、絶対に出ないでください。絶対にです」
女性はこくりと頷き、立ち上がって家の中に入っていった。
それを見届けてから、私は血痕を慎重に辿って行く。
……少しだけ、血の匂いが強い気がする。
「急ぐか……」
小走りで向かっていき、向かいの角を勢いを殺さずに曲がった。
「……!!!」
鬼殺隊士が一人、血まみれになって死んでいた。
腹が裂かれていて、血が沢山溢れ出ている。
更に、顔の方向が人間では曲がれない方向に曲がっており、結構酷い。
それに、これだけ溢れ出ているんだから勿論血の匂いは酷いわけで。
「っ、……どうやって殺されたの……」
見た目だけだと、鋭利な刃物で斬られたんだろう。
だけど重要なのはそこじゃないわけで、此処から読み取れる鬼の情報が殆どないためしんどい。
──────ふと、少し後ろから気配がした。
気付かれないように柄に手をかけ、息を吸う。
「水の呼吸・壱ノ型……」
"水面斬り"
気配が一番強くなった瞬間、後ろを振り向いて背後まで歩み寄ってきていた鬼の首を斬り落とした。
気付かれていないのだろう、とでも思っていたのだろうか。
舐められたものだな、と思って鬼の崩れていく亡骸を見つめる。
ふと、違和感を覚えた。
この鬼、さっき腕を怪我していた人と服装が同じだ。
「私と同じ風に襲われて、死んだのか……?」
考えていても仕方ないな、って思ってしまった。
もう死んでいるんだし、起こったことをうだうだ考えているのも時間の無駄だろう。
それに、このさっきから気持ちの悪い感覚はさっき殺した鬼のせいじゃない。
鬼が群れている……?
考えただけで吐き気がしてきた。
「……まぁ、行くか」
そう呟いて、歩き出した。
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さっきとは違う違和感が、また私を襲った。
幾ら歩いても、全く他の景色にならない。
小さな村なのだから、ある程度歩けば家は途切れるはずなんだ。
でも途切れなくて、ずっと無限に続いていた。
試しに角を曲がってみる。
「……!?」
おかしい。
なんで此処にも鬼殺隊士の死体がある。
しかもさっきと同じ腹の裂かれ方、同じ死に方で。
顔も全く同じだ。
少し考えて、すぐにわかった。
「血鬼術か……!!この村全体が……!!」
こりゃあめんどくさい。
多分だけどここの村自体が存在しない、或いは別空間……
そこら辺の何かだろう。
そして、固定の距離の空間から出られない様に、出口に向かおうとすると入り口に戻る……みたいな原理の空間か其処ら辺なんだろう。
多分解除方法は、無理やり此処から出て鬼を探す……しかないと思う。
さっき襲ってきた鬼自体、偽の可能性も充分ある。
………そういえば、此処の村だっただろうか。
鬼殺隊士が突然音沙汰もなく消えてしまっている、という村は。
だとしたらやばいなこれは……
此処の空間にいる限り、元凶の鬼にやられ放題だ。
「………沢山いるなこれは……」
鬼の気配が沢山する。
とにかく今は考えていても仕方がないな、と思いながら目を瞑った。
呼吸を整え、柄に触れて構えた。
瞬間、一気に気配が沢山、強くなった。
「水の呼吸・参ノ型……"流流舞い"」
滑らかな足取りで、一気に私に集中した攻撃を全て避け、一番近くにいた鬼の首を斬り落とした。
すぐさま流れる様に二体目の鬼の首を斬り、最後に残り二体の鬼の腕、首の順で斬る。
「まずい……この調子だと消耗戦になるぞこれ……」
向こうは形で鬼を生み出せるのだろう。
それか別だから私が幻覚を見ているとか……?
いやでも斬った手応えはある。
取り敢えず落ち着こう。
そう思って家の壁に手をつくと、少しだけ違和感を覚えた。
他の所に触れてみても違和感はないのだが、此処だけ何かおかしい。
どこか……少し脆い様な……
「これ……もしかして壊せるか……?」
そう呟いた瞬間、また後ろから気配がした。
しかも、今度は本当に真後ろから。
「……っ!」
刀をバッと鞘から抜き、脇腹を掠ったもののなんとか攻撃を受け止める。
脇腹からじわじわと痛みを発しているが、関係ない。
「ちょっとは考える時間をくれよな……」
一言呟き、静かに息を吸った。
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一体の鬼が、くすくすと笑いながら手を軽く光らせて何かを見ている。
其処には、少し苦しそうな顔をしながら襲ってくる鬼……
いや、幻影の鬼を斬っている澪の姿があった。
「可哀想ね……ただただ消耗していくしかない子ってのは……」
そう呟いて、ふっと手の光を消した。
そのまま近くにあった他の隊士の死体を手に取り、ゆっくりと口に運んで食べ始めた─────。
深夜テンションから生まれた血鬼術。
その空間の代わりに別空間を生み出して、幻影を生み出す……みたいな。
代償としてその空間から鬼自身も出られなくなる。
でも一歩踏み入れば別空間に引き摺り込める、
そんな血鬼術を思い付いてしまいました。