公開中
遣う者
🦇
『不老不死の成り方。』『死者蘇生を可能にする方法。』
私が身体を動かせるようになったのは12星座が発足されてから少し経った時だった。抑え切れないほどの嫉みや恨みを退け,私は目を開いた。近くには冷たくなった1匹の蛇と,様々な医療器具が床に散らばっていた。記憶は曖昧だが,どうやら私はこの蛇を救いたかったらしい。しかし,望み叶わず失った,と言ったところか。
視線を移してみると,ふと乱暴に開かれた一冊の魔導書と何かが書かれた紙切れ,そして羽の付いた筆記具が転がっていた。私はそれを拾い上げ文字に目を通す。
『不老不死の成り方。』『死者蘇生を可能にする方法。』
大きくそう書かれていた。よく見ると,開かれた魔導書……いや,これは禁忌のみを特集した“禁忌書”だ。生半可な気持ちで目を通す代物ではない。
さらに,先ほどの文字…『不老不死の成り方。』と書いてある方には大きく真っ赤な丸印が描かれていることに気がついた。つまり,私の身体は“不老不死”である,ということだろうか。試しに私は机に置いてあったダガーを手に取り自分の心臓に突き刺してみる。……痛みはある。流血もする。が,歯を抜くとすぐに傷口が塞がり血も止まってしまった。なるほど,不老不死ということは俄かには信じ難いが本当らしい。
では次は,『死者蘇生を可能にする方法。』の方だ。恐らく私は,この冷たくなった蛇に何か特別な思いを抱いており,どんな手を使ってでもこの世に呼び戻したかったのだろう。生憎記憶が曖昧でどのような思いだったかまでは思い出すことができないが。
禁忌書の指示通りにいけば,死者蘇生も何ら難しいことはなかった。蛇も時期に目を覚ますだろう。曖昧だった記憶も,時間が経つことに鮮明に思い出せるようになってきた。だが依然としてあの蛇のことはあと少しのところで思い出せない。途方もなく大切であるということだけは確かだ。それさえわかれば十分,自然に振る舞える。そんなことよりも,私の目的は変わらずただ一つ……
私を蔑ろにした12星座を殲滅すること,ただそれだけ。
と意気込んでいたが,生憎一度は敗北した。4星座も固まっていることは予想外だった。…いや,ただの準備不足だ。私が不老不死でなければあえなく全滅していたところだっただろう。が,この通り生きている。問題ない。
そしてさらに,蛇座がこの歴史を塗り替えてくれた。これを使わないわけにはいかない。次こそは,念入りに準備をし,念入りに調査する。そして何より,
念入りに信頼を積んでおく。さすれば,次こそ12星座の首を獲れる。確実に。
私はそのためであればどんなことであろうが遂行する。"12星座を殲滅する",ただ,それだけのために。
【注意】
不老不死になった場合,“自分が一番大切にしている記憶”を失うことになる。それでも本当にこの力を手に入れるのか,それは己の意思次第だ。
『後悔、先に立たず』という言葉を忘れること勿れ。自分の選択を恥じぬよう生きよ。
では,良い人生を。