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眠り姫/wrwrd
「ーーごめんな。もう、俺ダメらしいからなぁ…」
「なぁ、シッマ僕嫌や、まだいかんとってや」
「ごめんな。でもまだ明日は大丈夫やって言ってたで。」
「明日だけじゃ足りひんよ…」
もう、いいよ。僕はシッマから充分すぎるくらいの宝をもらった。けどまだ貰えてないものだって沢山ある。僕は別にこんな宝なんて要らなくて、ただ欲しいのはシッマと居られる時間だけなんだよ。
「大先生、元気出せ。俺まで悲しくなってまうし、お前は笑顔が似合う男やろ?」
「えへ…どう?笑えてる?僕」
「ううん。不細工」
「んなっ!」
「んふw大丈夫やで。無理に笑わなくても。
笑えなかったら笑わなくてええねん。それに、泣きたい時は泣いてええんやで。」
そういうシッマの顔はどこか悲しそうな顔をしていて、僕もつられて泣きそうになる。
「シッマも、泣きたきゃ泣けばええのに…」
「泣きたいけど、泣けないねん。」
……泣けない、かぁ。
いいなぁ
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俺は昔から、病院の先生からも治せないと言われるくらいの難病だった。
いつその命が尽きるかはわからないが、徐々に弱っては行くだろう。と言われたんだ。
それから母は俺を見捨て、父は仕事で忙しくなり家に帰ってこず、帰ってきたと思えば夫婦喧嘩ばかり。
……俺のことなんて元々いなかったかのように。
だから俺は家出したんだ。暗い真夜中に。
そんなとき、1人大人がおった。
たしか、「猿山」とか言うやつやったな。
猿山は俺に、「こんな時間にどうしたの?」と優しく声をかけてくれたっけ
「元気しとるんかなぁ」
「誰が?」
「前に会った猿山って人」
「…元気なんじゃないかな」
「でもな?その人なんか俺のこと知ってるような感じやったんよ。なんでやろ…」
「シッマも疲れとるんやろ。」
「ほおか…」
なぜか、知っているような気がした。なぜだ?
別に小学校や中学校でお世話になった人ってわけでもないだろう、し…
あれ、
『早く帰れよ』
小学校の先生って、
『おーがんばったな。』
誰だっけ?
「大先生、俺、忘れちゃいけないことを、忘れてる気がする…」
「…猿山らだ男先生だよ。」
「え、」
「小学校の頃、最後の担任だったのが、らだ男先生だった。けど、らだ男先生は俺たちが七不思議を解決しようとかで夜に学校に来るから、宿直で学校におってん。」
ああ、
『早く帰れって言ったよな?』
あああ、、
忘れちゃいけない人を、忘れていた。
「そっか、だから覚えがあったんやな。
ごめんな、らだ男くん。忘れちゃってて…」
「大丈夫やと思うで。先生優しいし」
「せやなぁ」
俺も、もうそろそろらだ男くんのところへ行くんだろう。
待っててな。らだ男くん。
けど、大先生が寂しくなってまうな、俺が逝くと。
俺はずっと鍵っ子だから独りには慣れてるけど、大先生は慣れてないだろ?なぁ。
そんな事を考えていればまた1日が終わってしまう。
…心臓が痛い。
眩暈がする。
頭も痛い。
吐き気がする。
もう、動けない
何も考えられない
何も、考えたくないや。
---
朝日が眩しい。
僕が目を覚ました。けど、シッマはまだ気持ちよさそうに寝ている。
「シッマ。起きて、や…っ!?」
おれの目の前にいたのは、彼の形をした抜け殻みたいに静かで。
もう、この世界にシッマはおらへんの…?
嘘だ。
きっと、きっとシッマなら俺が不貞腐れた顔してたら「なにしてんねん」って言ってくれるはず…
なぁ、起きてや。
それから、何時間も待ってみた。けどやっぱりシッマは起きてくれへんかった。
全然僕にいつもの元気な声を聞かせてくれなくて、笑っちゃうなぁ…
シッマは、とくに何もない日にいつもより深い眠りについた。もう、目を覚まさないんじゃないかってくらい、深い眠り。
「ほんっとこいつイケメンやな…」
病室の窓から入ってきた光に、シッマの髪や睫毛が反射してより綺麗に見える。
ガラスみたい。
「さて。これから僕はどうしようかな。」
僕はん〜と数分考える。
「そうや。シッマと今までに行ったところもう一度行こう。でも、僕はシッマと冒険したこと、冒険した世界と、今度は一人で|冒険《 戦 争》するんだね。」
「思い出沢山できたね。
怖い怖い堕天使も、僕ら2人で戦ったね。
従うべき人も、見つけてきたよね。
大切な親友も沢山できたよね。
大切な後輩もできたね。それに部下も。
…相棒も、できたよね。」
そんなことを聞いてるかわからないシッマに向かって言いながら、シッマの寝顔を見てた。
「髪の毛ふわっふわ。それにここあったかいから、僕も眠くなったなぁ…ちょっと、ちょっとだけ、僕も寝るかぁ。」
僕はそう欠伸しながらシッマのベットに寄りかかった。
重かったらごめんね。
おやすみ。大切な|相棒《シ ッ マ》
おやすみ。|大先生《 相 棒 》
なーんかへーんなのぉぉぉ!!!
誤字脱字等はお見逃しください!!
next…さよならエレジー