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灰の翼と、奪われた空
薄暗い廃墟の中に、重苦しい静寂が漂っていた。
かつては活気に満ちた街の一部であったその場所には、
今や崩れた石材と、正体不明の黒い羽だけが散らばっている。
羅奈「……ここなのね。私の故郷を焼き尽くした『devil crow』の拠点が」
彼女の声は震えていた。
しかし、その瞳には強い意志の火が灯っている。
隣に立つ晴矢もまた、愛剣の柄を強く握りしめていた。
晴矢「ああ。俺の両親を奪い、この街を地獄に変えた連中……必ず追い詰める」
二人の背後には、彼らを守るために集まった仲間たちがいた。
優夜「大丈夫だよ、二人とも。僕たちがついてる。絶対に、あいつらを許さないからね」
藍那「そうよ! 負けるつもりなんてないんだから。私が全力で回復してあげる。準備はいい?」
冷「……無駄口を叩くな。敵の気配が近い。集中しろ」
鋭い視線を放つ冷の声と共に、廃墟の奥から黒い影が現れた。
それは人型でありながら、全身を漆黒の羽で覆われた異形の存在――『devil crow』の使い手たちだった。
羅奈「見つけた……! 逃がさないわよ!」
羅奈の鋭い指示(コマンド)と共に、戦いが始まった。
優夜は真っ先に前へと躍り出た。
優夜「みんな、下がってて! 僕が盾になる!」
彼の体から放たれる守護の力が壁となり、敵の猛攻を弾き返す。
その健気な姿に、藍那は思わず声を上げた。
藍那「優夜くん、無理しすぎないで! ……でも、今の攻撃は私がカバーするわね!」
彼女が地面に手を触れると、柔らかな光が溢れ出し、傷ついた仲間の体力を瞬時に回復させていく。
一方で、晴矢の剣筋は鋭く、正確だった。
晴矢「俺の両親を……カラスに変えた報いを受けろ!」
彼はサポーターとしての役割を果たしながらも、自らも剣を振るう。
彼の放つ支援魔法が仲間たちの動きを加速させる。
冷「……チッ、遅い。俺が行く」
一瞬で距離を詰め、冷の刃が敵の急所を正確に貫いた。
彼は無愛想な表情のまま、しかし誰よりも迅速かつ確実に敵を排除していく。
戦いは激化し、ついに中心部に座る「支配者」が現れた。
巨大なカラスの頭部を持つその存在は、不気味な鳴き声を上げた。
羅奈「……信じられない。街の人たちがみんな、この羽に変えられていたなんて……」
彼女の目から涙が溢れる。
しかし、それは絶望の涙ではない。
奪われたものを取り戻すための決意の涙だった。
晴矢「見てろ……俺たちの復讐を!」
二人の叫びと同時に、全員の力が一つに結ばれた。
優夜の防御、藍那の治癒、冷の攻撃、そして羅奈の指揮と晴矢の支援。
しかし、その時。
支配者の背後から現れた影が、晴矢の両親の魂を宿した「カラス」たちが姿を見せた。
それは彼らが追い求めていた復讐の対象でありながら、同時に守るべきものでもあった。
優夜「……っ!? 違う、これは……!」
藍那「嘘でしょ……? 両親の魂が、まだここに……?」
晴矢は剣を止めた。
彼の顔は驚愕と悲しみで歪む。
復讐を果たしたはずの組織の正体は、奪った者の魂すらも支配下に置くという残酷な真実。
羅奈「……そんなこと、あり得ないわ。私たちはただ、街を取り戻したかっただけなのに!」
冷が静かに歩み寄り、晴矢の肩に手を置いた。
冷「……決めるのはお前だ。復讐を完遂するのか、それともこの悲劇を止めるのか」
沈黙の中、廃墟には黒い羽が舞い落ちる。
彼らは「devil crow」という悪魔と対峙し、自分たちが向き合っている真実の重さに震えていた。
しかし、優夜は再び前へ出た。
優夜「……どっちにせよ、僕たちは仲間を裏切らない。みんなで一緒に、この地獄を終わらせよう!」
その言葉に、藍那も晴矢も羅奈も頷いた。
その言葉は、絶望の淵にいた仲間の心に熱く灯った。
彼らの戦いはまだ終わらない。
奪われた街の記憶と、囚われの魂を救い出すための長い旅が、今ここから再び始まるのだ。
しかし、目の前に浮かび上がるのはあまりにも残酷な光景――かつて愛した両親の面影を持つカラスたちが、支配者の意志に従い虚空を見つめている姿であった。
晴矢「……っ、うあああああ!!」
耐えていた感情が爆発し、晴矢は剣を地面に突き立てた。
膝から崩れ落ちる彼を、冷が背後から支える。
その手は震えていたが、瞳には揺るぎない意志があった。
冷「……泣け。ここで泣き果てろ。だが、このまま絶望で終わらせるつもりはないぞ」
羅奈「(唇を噛み締めながら)……信じられない。私たちの故郷の住人も、晴矢くんの両親も……みんな『devil crow』に魂を奪われ、ただの操り人形にされているなんて……」
彼女は指揮官としての冷静さを保とうと努めるが、その瞳からは絶え間なく涙が溢れ出していた。
羅奈は震える手で魔法の円陣を展開し、仲間の位置を再確認する。
羅奈「全員へ指示! ターゲットは支配者……そして、彼らを守る『カラス』たちではない。この地獄を作り出したシステムそのものを破壊するわ!」
藍那「分かってる! 私が全力で守り抜くから!」
藍那の叫びと共に、彼女の周囲に神聖な光の障壁が展開される。
彼女は自身の生命力を削るようにして回復魔法を連打し、傷つく仲間の肉体を癒していく。
その表情には、負けず嫌いな少女らしい強烈な闘志が宿っていた。
優夜「みんな……僕の背中を見てて! この盾を絶対に通さない!」
優夜は再び前線へと躍り出た。
彼の体から放たれる黄金の輝きは、かつての平和な街の陽光のように周囲を照らす。
彼はただ守るだけではない。
仲間の悲しみを分かち合い、その痛みを肩代わりしようとするかのような力強い構えを見せた。
冷「……チッ、いい面構えだ。だが、俺の剣も負けてはいないぞ」
冷が地を蹴った。
彼の移動速度は目にも止まらぬ速さで、敵の防衛線を一瞬で切り裂く。
鋭い刃が空を切るたび、黒い羽が火花のように散った。
晴矢「……俺の両親を、カラスに変えた報いを受けろ!!」
ついに立ち上がった晴矢の剣術は、もはや復讐のためだけのものではなかった。
それは奪われた魂を取り戻すための祈りであった。
彼の放つ支援魔法が仲間たちの身体能力を極限まで引き上げ、戦場に異様なまでの熱量が生まれる。
支配者が不快な鳴き声を上げ、巨大な翼を広げた。その瞬間、周囲の空間が歪み、黒い霧が立ち込める。
羅奈「今よ! 全員、一斉攻撃!!」
優夜の鉄壁の防御、藍那の絶え間ない治癒、冷の精密な斬撃、晴矢の加速する剣技。
それら全てを束ねる羅奈の指揮が、一つの巨大な奔流となって支配者へと突き刺さった。
轟音が廃墟に響き渡り、衝撃波で周囲の石材が粉砕される。
光と闇が激突し、一瞬の静寂が訪れた。
……そして、全てが終わった。
塵が舞う中、巨大な支配者の姿は消え去っていた。
代わりにそこに残されたのは、無数の黒い羽と、力無く地面に倒れ伏す「カラス」たちの姿だった。
晴矢「……っ、あ……」
晴矢は震える手で両親の魂を宿した個体へと駆け寄った。
彼らが意識を取り戻し、弱々しく目を開ける。
その瞳には、かつての慈愛に満ちた輝きが僅かに戻っていた。
藍那「やった……みんな、生き返ったんだね……」
藍那は涙を流しながら、地面に倒れた仲間たちを見つめた。
彼女の治癒魔法の効果と支配者の崩壊により、魂の呪縛が解け始めていたのだ。
優夜「(息を切らしながら笑う)……みんな、無事だね。本当に、よかった……」
冷は何も言わず、ただ静かに剣を鞘に収めた。
しかし、その口元には微かな安堵の笑みが浮かんでいた。
羅奈「……私たちの街も、両親も……まだ完全ではないかもしれない。でも、私たちは今日、この地獄の一端を終わらせたわ」
彼女は立ち上がり、崩れた廃墟を見渡した。
そこにはもう、「devil crow」の支配する絶望の色はなかった。
ただ、朝日が昇り始める空と、共に戦い抜いた仲間の姿があった。
晴矢「……ありがとう、みんな。俺を一人にしないでくれて……」
晴矢の声は震え、涙で滲んでいた。
彼らは復讐を果たしたのではない。
奪われたものを取り戻すための第一歩を踏み出したのだ。
優夜の明るい笑顔、藍那の誇り高い瞳、冷の静かな守護、羅奈の強い意志、そして晴矢の決意。
五人の絆は、この廃墟から始まった新たな物語へと繋がっていく。
彼らの旅はまだ続く。
---しかし、その歩みにはもう迷いはない。
(終わり=完)
今回の小説を書いて思ったことは,もし私が登場する人たちだったら耐えれないだろうなと言うことです。
それと,しばらく感動系は書かない方がいいと言うことです。(←別に聞いてない)
泣き疲れました。《皆さんはどうでしたか?》
もし書いて欲しいテーマとかあれば教えて欲しいです。
よろしくお願いします。
感想はファンレターで送ってくれるとめちゃくちゃ喜ぶし頑張らないとって思います!
【名前】
桜井 玲奈
アカウント名は桜井 玲奈(本垢)です。
【作品に込めた思い】
この小説を読んでくれたみんなにいろんな感情を抱いてほしい。と思いながら書きました。
【目指している賞】
必ず書いて欲しいとのことでしたが,特にないんでおまかせはダメですか?
ダメだったら,参加賞か感動賞がいいです。