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公開中

ガレキレガ

「ハカセ、太陽とは何ですか?」 人工的な薄い光しか無い暗い実験室にて、実験机に前鏡に座って、メガネをかけた中年の薄毛の男にロボットは話しかけた。 部屋の床にはガラスの破片や、実験に失敗したのだろうか、液体が溢れたような形で変色しているところもあった。 ロボットにハカセと呼ばれた男は、ロボットの方を振り向きもせず、ただノートに何かを書きながら、ロボットに対し答えた。 「うんとまぶしくて、手には届かないほど高いところにあるモノだ。」 ボールペンで書いている音がしゃーしゃーと聞こえてくる。ロボットは返事をした。 「手には届かないと言うと、どこにあるモノですか?私がハカセより大きくなれば、届くモノなのですか?」 ロボットはまるで子供みたいに質問をした。 男はまたロボットに答える。 「お前が俺よりデカくなっても届かない。そもそも空よりも高いところにある。メラメラと燃えてるんだ、たとえ触れる機会があっても、すぐにスクラップになれる。」 淡々と話す男に、ロボットはまたもや質問をした。 「なぜですか?なぜ燃えているんですか?空の上は宇宙と聞いています。宇宙には酸素が無いはずです。そもそもこの地球も…」 ロボットが質問をしている最中に、男は呆れたようにため息をつき、こう言った。 「私はそこまではわからない。…お前は人に聞くんじゃなくて、自分で調べたりしたらどうだ?」 そう言われたロボットは、何も言わずに男の方から遠ざかっていった。 「そういや、ここに閉じ込められてもう数ヶ月ほどか…いつになったら、お天道様を拝められるのかね。」 男のノートは、もうすでにヨレヨレになって、ページも僅かとなっていた。 時間もわからないままここで暮らし、過ぎてゆく時に、男はただひとり恐怖を感じていた。
「ハカセ…起きてください。」 「あー。もう朝か。」 「はい。現在時刻は7:00。天気、湿度の情報は、共に受信できませんでした。」 「了解。それじゃ、外へ出ようか。」 ガチャガチャ。 「ハカセ。私は階段を登れません。」 「ん、じゃ、持ち上げるか。」 ぼんやりとした光が差し込む階段をしばらく歩くと、次第に光は強くなっていった。 「ハカセ、この光が太陽ですか?」 「違う違う。太陽はまだだ。」 「ハカセ。そういえばスリープ中に突然電気の供給が停止されました。今までこの様な事態はなかったのですが。」 「停電かもな。たまにあるんだよ…と、ついたぞ。」 登り切った先には、砕けたガラスの様な世界に差し込んだ、たった一つの光が支配する世界が、広がっていた。 「ハカセ、これが。」 「あー。よかったな…」 … 「ハカセ。ありがとうございます。」 「私は、ハカセのロボットでいれて、嬉しかったです。」 「これが、太陽なんですね。ハカセ、下を向いていたら、太陽は見れませんよ。」 「ところで、知っていますか?太陽と言うのは、古くから…____。」