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6.クランは、知り合いを紹介してもらう
「ネイラ先輩、起きてください」
ネイラ先輩はまだ気絶している。
「え? ……あ、私、あなたに負けちゃったんだっけ?」
「はい。……ところで、ネイラ先輩はランクダウンにならないんですか?」
今回、わたくしは八ポイントを手に入れた。そして、ネイラ先輩はマイナスが八ポイントでランクダウン……のはずだったのだけれど。
「昔は私もSランク同士で戦っていたからね。大丈夫なの」
「あ、そうだったのね。それなら安心だわ」
「まあこれからはいったんこれを無くしておかないとね」
「あはは……申し訳ないわ」
「いいのよ、私も人見る目がまだまだだった、ということね。気にしないで」
「そう言ってもらえると救われるわ」
心優しいのね。
「あと……」
「なにかしら? 先輩、なんて付けなくていいわよ。負けたのと年齢を鑑みて、私たちは平等くらいじゃない?」
「それもそうね、分かったわ、ネイラ」
「ありがとう。……あなたはこれで大変になってしまうのね」
「どういうことかしら?」
「まず、私に勝ってしまったことであなたは注目されるわ。あることないこと囁かれるかもしれない。それが一つ」
「もう一つは?」
「あなたのランク上げが難しくなるのよ。一応一つ上のランクまでは戦っても損はないから戦ってもらえるでしょうけど……」
ランク上げ、ね。どうしようかしら? そこまで大した興味は抱いていないのよね。
「あ、けれど、新学期になったら闘技大会があるわ。クランは運がいいのね」
「闘技大会?」
「ええ、全学年合わせて九百人程でトーナメント方式で戦うの。もちろん勝てばランクにも反映されるわ」
「へえ、面白そうね」
こちらでは実力を隠さないで過ごしてみる、と決めたし、頑張ってみようかしら?
「女王様も見に来るらしいから、みんな気合が入る戦いなのよね」
女王様も見に来るのね。
……このサスティーナ国は、|王《・》国とはついてないけれど、立派な王政をしいている国よ。ただ、女性が王になる、というだけの。
面白いわよね。
「それは楽しみだわ。わたくしも頑張らないと」
「あ、それで知り合いを紹介するのだったわよね? ……今だったら、ちょうどあそこにいるかしら? ついてきて!」
大人しくネイラについていく。
「ここよ!」
そこは、学園に隣接した森にあった、広場だった。木漏れ日が差してきて、綺麗なところだった。
そして、そこでは、5人くらいの男女がゆっくりくつろいで話していた。
「ん? ネイラじゃん! どうしたの?」
「ヤッホー、ルル! 今日はこの子を紹介しに来たよ!」
「ん? ……はじめて見る気がするけど……誰?」
「この子はクラン・ヒマリア、さっき戦って負けちゃった……」
「え? あなたが!?」
「なになに、ネイラ、とうとう負けちゃったの?」
「あ、レンブリンじゃん。実はそうなんだよね……本気で戦ったんだけれど……」
「嘘でしょ!?」
「嘘じゃないよ」
「……信じられない」
だんだん騒がしくなってきたわね。
えっと、確か、水色の髪の女の人がルル、金髪の男の人が、レンブリン、ということよね?
「……話を戻したらどうだ?」
「あ、そうだね、ヴィール。フィルゲ呼んでくれる?」
「フィルゲ? 分かったよ……って」
ふむ、ルルはフットワークが軽いのね。助かる人材だわ。
「僕?」
「うん」
「今日はお願いがあって来たんだけれど……」
「何?」
「この子、クランと知り合いになって欲しいの」
「また? この前そういうのはやめてって言ったよね? 僕に不向きだ」
「実はね、さっき私、負けちゃった」
「負けた!? っていうかネイラが戦ったの!?」
「そうよ。クランにね」
「……分かった。それならいいよ」
「ありがとう!」
なんだかよく分からないし、複雑な事情がありそうだけれど、ネイラがわたくしに紹介したかったのは、この黒髪のフィルゲ、という方だと言うことよね?
「クラン。この子がフィルゲ。あなたと同じ一年生で、もうSランクになっちゃったという秀才よ」
「あのさ、一年生でSランクになった、だったら私もだよ?」
「あ、ルル……うん、そうだね。ルルも凄いんじゃない? ……いつも一緒にいすぎてよくわからないけれど」
「酷いよ、ネイラ!」
「ついでにルルも紹介するわね。SSランクの三人のうちの一人のルルよ。私と同じ六年生。三年生のときにSSランクになって以来、一度もランクを落としていないの」
……凄いのだけは分かったわ。
わたくしはSランクのネイラでさえ、勝てるのか怪しかったんだもの。きっと勝てないわ。
うーん、一度戦ってみたいわね。
「凄いのね」
「褒められると照れるなぁ」
「自分から振った話題でしょ?」
「まあそうだけど」
「……で、この人がレンブリン。王族よ、男子だから王位を継ぐわけではないんだけれどね」
「王族……」
「ちなみに、Sランクよ」
「そしてこの人はヴィール。同じくSランク。五年生のときにSランクになったのよ」
「皆さん優秀なのね」
「そうなのよ! それであそこで寝ているのはアリア。ついこの間Sランクになった五年生よ。そこまで喋ることはないのだけれど、あそこで寝ているのがほとんどね」
ああ、天才肌、みたいなイメージね。どこが似ているかはうまく言葉に出来ないのだけれど、楽園であったエレナを思い出すわ。あれも天才だもの。
……そう言えば、ここにいる皆さんは、もしかしてみんな呪いにかかったりしているのかしら?
けれど、優秀といえば、わたくしのお兄様はふたりとも凄いはずよね。いえ、ユーリお兄様にはわたくしは勝てるし、そこは別ね。だけれど、エステルお兄様は呪いにかかっていてもおかしくはないのだけれど……かかっていなさそうなのよね。
まあ、いずれ分かるときは分かるでしょう。
「紹介してくれてありがとう」
「いいえ、まあそういうことだから、ぜひフィルゲとは仲良くなって欲しいな、同じ一年生なんだし」
「ええ、心に留めておくわ」