公開中
二度目の人生
……沈黙。
エリカは不安になって、悪魔の表情を窺う。
「…?」
エリカは、こてんと首をかしげた。
——悪魔は、啞然としていた。
「……あの…?」
「…は?え、お前……は???」
ようやく、悪魔は反応を示した。目に見えて混乱している。
「…嬢ちゃん…今、俺に友達になれといったか?」
「え、うん…」
「……マジで言ってる??」
「…うん」
「俺がいつお前を殺すかわからないんだぞ?そんな奴と友達になりたいのか?」
「……一人でいるより、ずっといいから」
エリカの瞳に影が差す。悪魔は、開きかけた口を閉ざした。
「…本当に、良いんだな?」
「うん……」
エリカは、はっきりと頷いた。彼女の瞳にはもう、迷いはなかった。
「……わかった」
「…?」
悪魔は、一言告げる。
--- 「——この俺…悪魔“ネロ・アビス”は、お前と契約すると誓おう」 ---
「……本当…?」
「あぁ。悪魔は嘘の契約宣言をしない」
「…!ありがとう…!」
小さく、それでも嬉しそうに笑うエリカを、悪魔——ネロは、じっと見つめる。
(本当は、契約した瞬間殺そうと思っていたんだがな…)
「…俺はお前に興味がわいた。少しの間生かしといてやる」
「ふふ…よろしくね、ネロ」
「はいはい、よろしくな嬢ちゃん」
「……私、エリカ」
「あ?」
「…私の、名前」
「エリカ…ふん、悪魔と契約した魔女にしては可愛らしすぎる名だ」
反応に困り、エリカは口をつぐむ。
ネロの深紅色の瞳が、そんなエリカの姿を捉えた。そして、ふっと笑う。
(案外、こいつといても退屈しなさそうだな)
「——俺が新たな名を与えてやるよ、嬢ちゃん」
「……えっ?」
あまりに突然な提案に、エリカは素直に困惑する。そんな彼女の反応を楽しげに見ながら、ネロはエリカの前に立つ。木漏れ日が、彼の後ろで強く輝いていて。
--- 「今日からお前は、“|エリス・ノクス《【夜の闇】》”だ」 ---
「……エリス……」
その名は、エリカの心にすんなりと入り込んできた。
「……ありがとう。この名前、大切にするね」
「別に、適当に付けた名前なんざ好きにすればいいさ」
そう言いながらも、ネロはまんざらでもないという顔をする。けだるげな目つきが、少しだけ細められていて。
「…素直じゃないなぁ」
「逆に素直な悪魔など見たことないぞ」
「あ、素直じゃないって認めるんだ」
「まぁな。それが悪魔ってもんだ」
そう言ってネロはクックッと笑う。
——気が付くと、それにつられて《《エリス》》も微笑んでいた。