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ネッ友は消耗品
私は最近あるサイトにハマっている。
小説投稿サイトというものだ。
元々本が好きだったのもあり、自分でも書いてみたいなと思った。
ユーザー登録をして早速小説を書いてみる。
もちろん小説なんて書いたことがなかったので中々筆が進まない。
サイトの仕組みだってよくわからない。
でも少しずつ少しずつ書き進めてやっと読めるものが出来上がった。
初めてにしては上手く書けたんじゃないかな。
完成した喜びに酔いながら公開ボタンを押す。
私の記念すべき一作目だ。
その日はドキドキして何度もサイトを開いたり閉じたりしていた。
次の日、朝一番にサイトを開くと通知が来ていた。
ファンレターが来ている‥!
心臓が飛び出てしまいそうなほど嬉しかった。
『あなたの小説とっても面白かったです!ぜひネッ友になりませんか?』
面白いと他人に認めてもらえた喜びで舞い上がっているとふと我に返った。
ネッ友‥?
ネッ友ってネットの友達ってこと?
危険じゃないのかな‥そう思いつつその人のユーザーページをタッチする。
「凄い‥こんな人に声をかけられたの?私」
その人のユーザーページにはネッ友がズラリと並んでいて日記も山のように公開されていた。
こんなに友達が多くて素敵な人に声をかけられて。
そして小説を褒めてもらえた。
これは友達になったほうがいいよね‥?
その人の一番上の日記をタップしてコメントを書いた。
『ファンレターをもらった〇〇です!ネッ友ぜひならせてください!』
これでいいかな‥
ひとまず送って自分も日記を書いてみよう。
自己紹介でもしておけばいいかな。
なるべく個人情報を出さないように。
でもちゃんと私ってわかるように。
日記を投稿して自分のページに戻るとまたコメントが来ていた。
『ネッ友になってくれてありがとう!〇〇ちゃんって呼ぶね!ユザペに名前書いて良いかな?』
凄い‥返信が早い‥こんなにネッ友がいるのに返事返せて凄いな…
「もちろんです…っと」
自己紹介を出した日からネッ友のお誘いが沢山来た。
その度に私はOKを出していった。
ネッ友のみんなは凄い。
沢山友達がいて、日記にも小説にも全部コメントをくれる。
「嬉しいなぁ…でも…」
やっぱり活動を引退してしまう人も中には居る。
そういった人達が増えるたび私は悲しい気持ちになった。
ある日ネッ友の一人が病んでしまった。
沢山辛いことを書き殴っていた。
『死にたい』と何度も書かれていた。
私は急いでコメントを書いた。
『大丈夫?辛かったね。生きてていいんだよ。私は味方だから‥』
その日のうちにネッ友の日記が投稿された。
『もうすこしがんばってみようかな』
良かった生きててくれた。
送ってよかったんだ。
何人かのネッ友は何度も何度も病んでしまっていた。
死にたくなってそのたびに慰めるコメントを送った。
でも少し疲れてしまったかもしれない。
どうしても同じような言葉ばかりになってしまうのだ。
最近小説を書いてもコメントがつかなくなった。
ネッ友達は引退なんてしていないのに。
そこで私は気付いた。
私、全然ネッ友の投稿に反応してないや。
私は急いで全部のネッ友の投稿にコメントをした。
そうすると次の日には返信や私の日記へのコメントで溢れかえった。
良かったやっぱりコメントし合わないとね!
大好きなネッ友だもん!
気づけば小説より日記のほうが沢山投稿していた。
自分の日常、嫌だったこと。
沢山共感のコメントが付く。
でもそれも段々と少なくなっていった。
「どうしてだろう‥私はちゃんと全部に反応してるのに…」
もっとネッ友を増やさないといけないのかもしれない。
もっと確実に反応してくれる人を。
そうして私は新規のユーザーに手当たり次第に声をかけた。
すると次の日にはまたコメントがちゃんと届くようになった。
日記を書いて。
ネッ友を増やして。
時々反応して。
小説を褒めてもらう。
こんな事始めた時はできるなんて思ってなかった。
でもこの世界ではこれがきっと普通。
ある日、日記を見ていたら知らない人の日記に出会った。
「…なにこれ」
このサイトで自分と最近仲のいい人をランキング付けするというのだ。
「TOP5を日記に公開します‥?どういう事?」
これはみんなも嫌がるんじゃないか。
仲良くしていたつもりがランキングが下の方だったらどんな気持ちになるのか。
きっとみんなはなにも言えないだろうから私が言ってあげなくちゃ…
『ランキング付けなんてみんなが嫌がるんじゃないですか?
仲の良さに順位なんてつけてどうするんですか?
しかもそれを公開するってどう考えても嫌がらせですよね?
ネッ友の気持ちになってみたらどうですか?』
言いたいことを書いて送信した。
でもこれが間違いだった。
なんとこのコメントが晒されていたのだ。
「私のネッ友達は楽しみにしてる‥?」
なんで私が叩かれなくちゃいけないわけ?
どうして?
その人が言うにはネッ友達は楽しみにしていて交流が増えたとか。
だからって晒される意味がわからない。
そうやってみんなで私のことを叩いて楽しい?
その日は日記もコメントも何もできなかった。
すると私に心配のコメントが来た。
私は毎日投稿をしていたからきっと心配してくれたのだろう。
この人になら事情を話しても良いかも。
『実は最近荒れているランキングの日記で…』
そうするとその人は私を庇う日記を出してくれた。
〇〇さんは悪くない!そんなに言う必要はない!と
これで一安心かと思ったが現実は甘くなかった。
名前を出したことにより私に直接批判のコメントが付くようになったのだ。
名前出すなんてどうかしてる。
勝手なことするなよ…!!
ネッ友は味方だと思っていたのに!
私は全ての感情を乗せた日記を投稿した。
私は悪くない!集団で叩く方が間違っている!
なんで私が責められなくちゃいけないの?
みんなが言えないことを言ってあげただけなのに!
どうして!!!
私はそのままそのアカウントを引退した。
勢いで出した日記も荒れてしまったからだ。
どうせ今頃逃げただのなんだの言っているんだろう。
また別のアカウント作らなきゃ…
次こそ仲良くやれるよね‥?
【ネタ帳】タイトルのみ
https://tanpen.net/novel/0fa457e7-48d9-411d-9bdc-5099ba48217d/
タイトルはこちらです。