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34.
今日は朝早くから作戦会議。
それが終わったら、いよいよ戦闘を申し込む。
専用の用紙に日にちと参加者を書き込むんだ。
「相手は何人かわからない、だから複数の作戦をたてておく。」
まだホワイトボードは真っ白、ただ美音のメモは真っ黒。
「けど、基本の動きは変わらない。」
「魔王は、美咲に任せる。」
美音はまっすぐ私を見つめている。私はそれに頷く。
「少人数のときは僕と朱里、シャルムさんと美和さんのペアで他の敵を叩く。」
「お嬢様を一人にした理由はありますか。」
シャルムはやっぱり私のことを心配している。
「やっぱり・・・・本人に決着をつけてほしいから。」
美音だって魔王に思ってることがあるはずなのに。
私に敵討ちを譲ってくれた。
それに対して何か言おうとしたけど、やめた。
窓の外からふく風が、私の頭を冷やしてくれる。
「美音の思いも、全部託してよ。絶対に倒す、あいつを。」
美音とご両親のためにも。絶対に勝ってみせる。
それが私にできる最大限のことだと思うから。
私の考えに気づいたのか表情が柔らかくなる美音。
何も言わずに頷く。
「相手の人数が多いときは、朱里とシャルムさん、僕と美和さんのペア。」
朱里ちゃんとシャルムは範囲攻撃が得意なイメージがある。
美和さんはその中で強い敵を貫く担当かな。
「もちろん、美咲のほうにすぐ行けるようにする。」
私は話に耳を傾けながら、温かいコップに口をつける。
「オッケー、それでいこう。」
他のみんなも大丈夫そう、朱里ちゃんは寝てるけど。
「申し込み、するね。」
シャルムから借りた万年筆で、名前を書いていく。
「あれ、おかしいな・・・・。」
手が震えて、書けない。
「美咲。」
美音が近づいてくる。
私が思わず目を瞑った瞬間に、私の手を何かが包みこんだ。
「一緒に書こう。僕らなら大丈夫。」
私はなんとか名前と日付を書ききった。
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「よし、模擬戦しよう。」
今回は実際に戦うときを想定した練習らしい。
私は一人、朱里ちゃんと美音、美和さんとシャルムのペアで戦う。
「今から始めるよー!」
朱里ちゃんの明るすぎる一言で、場の空気が締まった。
「『中級零魔法 |小規模爆発《スモール エクスプロージョン》』」
私が起こした爆発で小石や砂がパラパラと舞う。
「『上級光魔法 光という名の免罪符』」
「『上級植物魔法 守りの籠』」
どっちのペアも素早く対処してきた。
「『上級支援魔法 攻撃よ、地に伏せろ』」
「『神降 |無慈悲な世界《クルーエル ワールド》』」
シャルムの技の影響で、少しの間は攻撃が効かなくなっている。
自分たちは安全に、相手を追い詰める。
堅実なシャルムならやりそうなことだ。
「『上級妖術 舞妖』」
美和さんの技は、『覇霊』で逸らすことができないらしい。
生み出した鳥で相殺している。
「『上級植物魔法 はらりと散る葉と命』」
「『上級聖魔法 八神結界』」
葉が散り、結界が消える。
もちろんシャルムはこっちも狙ってきた。
「『上級闇魔法 |闇吸花華《ナイト フラワー》』」
葉ごと闇で侵食する。
「『|連撃 花咲乱断《ナイト フラワー ダンス》』」
すかさず斬撃にして叩き込む。
今のところは、互角。
朱里ちゃんと美和さんは攻撃に力を入れてる。
シャルムは防御もこなすけど、美音は防御全振り。
それだけ朱里ちゃんを傷つけたくないんだろうけどね。
「この中なら、私が火力出るもんね。『中級雷魔法 斬断の雷雨』」
朱里ちゃんがいくら強いとはいえ、まだ9歳。
火力バカの私や美和さんには勝てない。
それに、防御ばかりしていても勝てない。
「『神降 月華神威』」
レーザーが5本、そのうち私の方へ向いているのは4本。
「『究極妖術 死神の迎えは命との別れ』」
朱里ちゃんも私のほうへ死神を飛ばしてきた。
レーザーも死神の鎌も避けないといけない。
―――だなんて、誰が決めたの?
「『上級闇魔法 影潜』」
「―――消えた。朱里、備えて」
「そうか、美咲はあの技を―――」
美和さんの前で使ったことのある技。
影の中に潜み、何からも影響を受けなくなる。
アレにさえ気づかれなければ、無敵だ。
「影に潜む、ですか」
「お嬢様に攻撃すると、これで回避されてしまうのですか。厄介ですね」
まだ気づかれてない、いける。
「―――美咲、僕が気づかないと思った?」
「・・・・・」
ハッタリだ、嘘に決まってる。
「朱里、僕のことを守って。シャルムさんたちが手を出してこないように。」
「うん、わかった!『上級黒魔術 争いの真実とは?』『覇霊王』」
私は目を見開く。
朱里ちゃんの『覇霊』だけでも、かなりの攻撃を跳ね返す。
『覇霊王』なんて使われたら、攻撃が通るわけない。
ただ、2人はもとから攻撃する気がないのか離れている。
「僕のこと、舐めないほうがいいよ。『初級光魔法 閃光』」
・・・本当に気づいてるじゃん。
私の技は自分の影に隠れる。
だから影が光によって消えたり薄まったりすると―――
「出てきちゃうんだよね。『究極水魔法 |水華連銃爆裂の術《アクアブラスト》』」
水で生み出した銃、そこから魔力でできた銃弾が飛び出す。
「お嬢様、いつの間に技を増やして―――」
「『神降 |月光銃《ルナ バレット》』シャルム、今は心のなかに留めてくれ」
「『変化術 |幻影《ファントム》 改』美咲でもこれは厳しいでしょ」
「何言ってるの、美音。この技はまだ終わってないよ」
「その銃だけで一体何が―――」
美音は気が付いた。
いや、シャルムも美和さんも朱里ちゃんも気づいている。
私の銃が、銃の周りの空気が震えていることに。
「『上級聖魔法 八神結界』」
「『上級支援魔法 攻撃よ、地に伏せろ』」
「『上級妖術 貴方は生と死の間にいる』」
「デジャヴを感じるぞ。『神降 |無慈悲な世界《クルーエル ワールド》』」
朱里ちゃんと戦ったときもこんな感じだったなぁ。
私の馬鹿力が証明されたっけ。
「そろそろかな、込めた魔力も尽きそうだし。」
空気の震えが最大に達し―――
爆ぜた。
『|小規模爆発《スモール エクスプロージョン》』よりは大きい、でも『|宇宙の始まり《ビッグバン》』には敵わない。
そんな大きさの爆発が、生まれた。
砂埃がひどい、『重力操作』でもとに戻す。でも、これなら―――
「『魔剣』」
「ちょ、やばっ『妖刀』」
間一髪で受け止める。
「『上級光魔法 天魂落とし』」
美音も追撃してくる、でも動きが遅いから避けるのは簡単。
すっと避けると、美音は笑みを浮かべる。
「そこしかないもんね、避ける場所。」
真上を見ると、避けたはずの美音の光が。
「一つしか落とさないなんて言った?」
私がさっきまでいた場所にも光がある。
左には、シャルムの魔剣。
少しでも動いたら、負ける。
「お手上げだよ・・・・」