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第七話:葛藤と決意
グライアの神殿での対話は、明確な結論を出せないまま終わった。ゲネシスはグライアに深く謝罪し、自らの神殿へと戻っていった。彼の足取りは重く、その表情には深い絶望が滲んでいた。
ゲネシスが去った後、グライアは一人玉座に残された。静寂の中、冷たい霧が彼女の心をさらに冷やしていく。
――**なぜ、あそこまで理想に固執するのか。**
彼女には理解できないわけではなかった。彼と出会った次神時代から、ゲネシスは常に生命に対する深い慈愛を持っていた。その純粋な理想に惹かれたからこそ、クールな彼女が猛アピールを受け入れ、長年にわたる秘密の関係を築いてきたのだ。
しかし、今は私情を挟むべきではない。「死を司る者」として、世界の「理」を守り、秩序を回復させる義務がある。
――**殺したくない。**
心の奥底で、愛する彼を失うことへの恐怖が鎌首をもたげる。だが、「柱神」としての責任感がそれを押しとどめる。彼女は立ち上がり、神殿の奥へと向かった。心を落ち着かせ、冥府の神としての冷徹さを取り戻すために。
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一方、ゼフィールの神殿。
「分析の結果、このままでは世界の生命バランスは完全に破綻し、新たな理を構築しなければ、全ての生命活動が停止する」
ゼフィールは、シルフィアに最終的な分析結果を見せていた。彼の言葉は常に冷静だが、そのデータが示す未来はあまりにも絶望的だった。
「そんな……じゃあ、ゲネシス様を罰するしかないの?」
シルフィアの目に涙が滲む。優しいゲネシスも、クールだが頼りになるグライアも、どちらも大切な仲間であり、家族のような存在だ。どちらかを失うなど、考えられなかった。
「排除が最も単純な解決策だ。しかし、データはもう一つの可能性を示唆している」
ゼフィールは新たなグラフを表示させた。「新たな理の構築」――それは、世界の根幹を揺るがす壮大な計画だった。
「この案なら、誰も失わずに済むかもしれない。ただし、前例がない。成功確率は非常に低い」
ゼフィールの表情は真剣だった。彼は感情を排しているが、その選択肢に賭けたいという密かな願いがあった。
「やりましょう、ゼフィール様!少しでも可能性があるなら、自分、グライア様とゲネシス様を止めてみせる!」
シルフィアは涙を拭い、決意の表情を見せた。彼女の行動力と風の力が、物語を動かす鍵となる。
そして、天帝の宮殿から、正式な勅命が改めて下された。
「柱神グライアよ、秩序を乱す創造神ゲネシスを討ち、理を回復せよ」
ついに、避けられない対立の時が来た。四人の神々の運命は、一点に収束していく。
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