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18.
私たちが家に戻り、美和さんに関することを美音に説明する。
「この人が神の使い・・・・?」
急に現れた人物が、神の使いだなんて到底信じられない。
―――そんな疑念が見て取れた。それは仕方ないけど。
「私も、最初はそう思いました。『は?』って」
・・・シャルム、そんなふうに思ってたんだね。
「まぁ、信用はできると思うよ。僕を掴んでたやつに蹴りを入れてたでしょ?」
「我が蹴ったのは、氷で出来た偶像だったがな。」
「もしも敵なら、完全に利敵行為ですからね。」
そう、美和さんが味方だといえる根拠はそれだけ。それで十分だけど。
2人が気づくのが早かったし。
「美和さんが来たから、全部で4人になるよね?」
美音が、当たり前のことを言う。
「そうだね、それがどうした?」
「家の部屋が余ってないんだよね。」
それってつまり―――。
「我の住むところがない、ということか・・・・?」
「えー、単刀直入に言うとそうですね。」
美和さんは青ざめた。
でも、私の中にはアイディアがあった。
「美和さん、私の中に入れるでしょ?それなら場所とらないよね?」
「3人が布団でぐっすり寝てるのに我だけ悲しくないか?」
「たしかに。」
美和さんって、意外とこだわりが強いよね。
言いたいことは分かるけど。
「美音さん、私の記憶が正しければ一つ空き部屋がありませんでしたか?」
シャルムはそう言った。私は覚えてないから、何も言えない。
「・・・あそこは倉庫になってるんですよ。だから、元空き部屋ですね。」
少し間が空いて、美音はそう口にした。
ほんの少しの違和感を抱えながら、私は話す。
「ベッド自体はあるの?」
「ベッドはあるけど、置くところがないんだよね・・・。」
「美音さん、そのベッドはどこに?」
「倉庫にありますよ。ただ―――ホコリまみれなんですよね、あそこ。」
「つまり、倉庫を美和さんの部屋にするのは難しいと。」
「そういうことですね、非常に残念ですが。」
シャルムと美音はそんな会話をする。
美和さんはそれを聞くと、明らかに悲しそうな顔をする。
うーん、私にできることってあるかなぁ。
そこで私はひらめいた。きっと頭の電球の光がぱっとついていた。
「私の能力でさ、増築できないかな。」
「美咲の能力で―――」
「増築を?」
息ぴったりだね、2人とも。
「なんかこう・・・、説明できないや。やってみる!」
「ちょ、美咲!? 失敗したらどうするの!?」
それは本当に言う通りなんだけど・・・・。
私はちらっと美和さんの方を見る。
「美咲、我の部屋を作ってくれ!」
先程までが嘘だったかのように、目を輝かせてこちらを見ている。
「・・・美音。」
私は、できるだけ落ち着いた声を出す。
「どうしたの、美咲。」
「もし、失敗したらごめん!」
こういうときは謝っておこう、多分成功しないもん。
「ちょ、絶対に成功させてね!?」
「それは出来ない相談だよ、美音。」
使ったことない魔法を成功させろなんて、無理だ!
「いつから私の主人はこんなにギャグに染まったんですか・・・?」
最初からだよ。
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私達は、美音の大きな家を見上げる。
「相変わらずデカいね・・・・。」
美音によると、人間界でいう「豪邸」ってやつらしい。
「美和さん、どんな感じの部屋がいいの?」
美音が言っていた、できるだけ細かくイメージしたほうがいいって。
そのほうが、より自分が考えていた技に近づくらしい。
「The 和って感じがいいとは思っているが―――。」
美和さんはその先を言うのをためらった。
それもそのはず、この家は洋風なのだ。
でも、和風もいいよね。美和さんの気持ちも分かる。
どうしよっかな・・・・。
「ならさ、木を使った洋風にしてみれば?」
木を使って洋風に、か。
それなら、温かみのある部屋になるかも。
「美音、ナイスアイディア!それじゃ、早速・・・。」
これが私の悪い癖、無鉄砲なところ。
「お嬢様、壁や床の色も聞いておいたほうがいいのでは?」
こんなふうにシャルムから指摘をもらう。
いつもありがとう、シャルム。君が止めてくれないともうダメだ。
「そうだな・・・、壁が白で床が茶色がいいな。」
「了解です! 早速作ってみますね!部屋の位置はどこがいいですか?」
「そうだな、東側がいい。ダメなら南側で。」
私は、頭の中でイメージする。
この家の東側・・・、ここから見て右側に部屋が一つ増えるのを。
(何回考えても、歪な形になっちゃうんだけど・・・・。)
もとが綺麗な形をしているせいか、ボコッとしてしまう。
(南側にしてみるか・・・?)
私は移動して、反対側へ行く。
他のみんなは、邪魔してはいけないと思ったのか離れた場所にいる。
(イメージ・・・、イメージ・・・・。)
部屋を単に取り付けるわけではない。
完成途中のパズルに、ピースをはめるように。
それを含めて一つの作品として完成させるんだ。
その最後のピースをはめるのは、私。
きっといけるよ。
「『能力創造 構築する程度の能力』」