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又旅浪漫
"ネコ呼んで零戦のキヨシ"だなんて別に
他のネコにそう呼ばれたからとかではない。
自分がそうなりたいと、そう|在《あ》れるようにと、
自分で言い始めたというだけのことだ。
|滑稽《こっけい》だろうか。
俺はそうは思わない。
ある日、|九つ葉《ここのつば》の形をした植物を
手入れをしながら"ヒト"が言った。
「俺がこの街のフッドスターだ。」
俺は落雷を食らったかと思うほどに痺れた。
何と言ったのか意味は分からないが
その日から俺はヒトと同じ仕事をしている。
辺りをよく見る。
神経を研ぎ澄ませる。
山に入る。
マタタビの手入れをする。
洞窟で乾燥させる。
懐の深いニンゲンに配達する。
無駄な争いを避ける。
そして二度と同じ下手を打たない。
ネコは馬鹿だ。
馬鹿だが同じ事をこなすうちに
ひとつだけ分かったことがある。
ヒトとは、ネコである。
ネコである自身がヒトに痺れたのだから
ヒトとネコは同じということになる。
それに寝る前はよく食べるし
起きた後は顔や頭を毛繕いして一日が始まる。
違うのは"笑う"くらいだ。
俺も笑う、が分かれば...