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𓅁
蛇𓆓
界 regne:
動物界
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網 classe:
鳥網
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目 ordle:
スズメ目
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科 famille:
カラス科
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『小悪魔のように空を飛び回り、死肉とそれに群がる虫に惹かれ、死体に爪を立てて貪る。』
『使者として人間界に現れ、魔法使いと言葉を交わし、地獄の主人の石を伝える。』
『――鴉の心臓を持ち歩く者は、安息が訪れることはない。』
とんだ言い伝え。
信じたのは、この村。
鴉を1匹残らず炙り殺し、
村の者を魔女だ、魔法使いだと仕立て上げ、
殺す。
毎朝男が
一軒一軒を渡り歩き、
今日の生贄を神に捧げる。
否定はない。
肯定もない。
名を呼ばれれば、
首と胴はおさらばだ。
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風の強い朝だった。
朝日が昇る前から、
我が家の戸は鳴った。
真っ白な面梟を肩に
私は階段を丁寧に下った。
戸を開けると
羊皮紙を片手に、若い男が
私の家を覗き込んでいた。
「ずいぶん、お早いことで」
愛想を振る舞うも
返事はない。
我が家を苦々しく見渡している。
「何か、問題でも」
ほう、と
肩の梟が小さく鳴いた。
頭を撫でてやると
今度は続けて2回
目を細めて鳴いた。
若い男は、
私から一時も目を話そうとしない。
「とぼけるな」
聞き覚えのない返答に
私は首をかしげる。
「とぼけるな、とは、何を?」
若い男は
羊皮紙を丁寧に広げ、
私に見えるように
押し付けた。
「ビビ・コーボ」
「礼状が出ている」
「鴉を出せ。」
「お前は魔術師だな」
一瞬にやりと
若い男は頬を緩める。
男の笑顔を見れたのは
これで最後だ。
「なんのことだか」
はて
と
緩んだ口元は
ぽかんと
重量のまま落ちた。
再び目先を釣り上げ
私を力一杯
鋭い目付きで
睨みつけるも
冷たい視線を送ってやると
男は押されたように
焦りだした。
「ノーはない。ついて来い。」
若い男は羊皮紙を丸め
帽子を深く被り
私に背を向け、
歩き出した。
雪のように白い梟の羽根を
静かに撫で
我々はただ
男の背中についていった。
しばらく歩くと
村の中心部に出た。
村の者共が家を影に
私をじまじまと見つめている。
「何か髪にでも付いているかね。アルコ。」
ほう
また
アルコ、梟は
静かに鳴く。
「呑気なものだ。今から死ぬのだぞ」
くだらない、と
吐き捨てるように
男は言った。
「ずいぶんと、死を恐れているように見える」
男は
一瞬の躊躇を押し殺し
言葉を探り探りに
引き出した。
「死など恐れるわけが」
動揺を隠しながら
男は
村を歩き続ける。
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炎が焚かれた。
じりじりと
我々に近づいて来る。
村の者共が
我々に目を伏せるのが見える。
立ち昇る炎を
前に、
私は聖杯を
空に掲げた。
「Corbeau noir」