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第5章:夢封の深層《オフィウクスの囁き》
星環領域《セレスティア》の南端―― そこには、霧に包まれた谷があった。 昼でも夜でもない、時間の境界に浮かぶ場所。 そこは、夢と現実が交錯する領域。 星霊オフィウクスは、眠りの中に封印されていた。
ちゃいは、静かに谷へと足を踏み入れた。 彼の姿は霧に溶け、気配すら曖昧になっていく。 だが、彼の瞳は冴えていた。 夢の奥に潜むものを、見逃さない者の目だった。
「ここは、目を開けていても夢の中。 星霊の記憶は、眠りの底に沈んでる」
彼は、祠の前に立ち、目を閉じた。 その瞬間、夢が開いた。 星霊の囁きが、彼の心に流れ込んだ。
「私は、夢と闇の星霊。 世界の深層を見つめ、虚星の影を知る者。 だが、空白が広がったとき、私は眠りに落ちた。 闇は、記憶を飲み込み、夢は封印となった。 あなたは、私の夢を解けるか?」
ちゃいは、静かに答えた。 その声は、霧の中でも確かだった。
「夢は、真実より深い。 記憶は、言葉よりも静かに語る。 あなたの眠りを、俺が解く。 でも、目覚めたあとに何を見るかは―― あなた次第だよ」
その言葉に、祠が震えた。 霧が渦を巻き、蛇の幻影が空に舞い上がる。
ちゃいの手が輝き、夢の魔法陣が展開される。 星の蛇が舞い、命の光が眠りの底から昇る。
オフィウクス・リザレクション: 倒れた仲間を蘇生+HP回復+夢状態解除。 闇の中で灯る命の魔法。
霧が晴れ、空が静かに明るくなる。 封印が解かれ、オフィウクス座が夜空に戻る。 その輝きは、夢と真実の境界だった。
「あなたの沈黙が、私の夢を解いた。 闇は、語らずとも理解されるもの。 あなたたちの旅は、虚星の深層に届くもの。 だが、空白はまだ終わっていない。 最後に待つのは――空そのもの。 星霊の器。 あなたたちの中心にいる者。 その記憶が、空白の真実を照らす」
ちゃいは、夢の谷を後にした。 空には五つの星座が輝いていた。 そして、仲間たちは静かにティナを見つめた。