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ハルトレイン 中編
中編です。スクロール頑張ってくださいm(_ _)m
莉Side
さとちゃんの家にお泊りして、星を眺め、これまで以上に彼への愛を改めて抱いた俺。
これからもきっとずっと、一緒に……
そう思っていた。
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お泊りから数日後―――
友だちとちょっとお買い物した後、一人カフェに寄っていた俺。
かなりの雨量だ。
「雲から見て通り雨かな…でも結構降りそう…雨宿りするかぁ‥」
そう思ったとき、人影が目に写った。
そう。その人影はいつでも綺麗で素敵で、雨に振られてる姿もきれいな、
「さとちゃん…?」
たまたま窓際の席に座っていたため、窓から目を凝らしてよく見る。いや、よく見なくてもわかる。
あれはさとちゃんだ。
雨雲から覗いた晴れ間が、彼を照らす。
俺はほぼ衝動的に走り出した。
こう走り出してはもう後戻りはできない。俺はさとちゃんをめがけてひたすら走った。
意外と距離があったみたいで、俺は息切れしながらずっと走った。
街中に咲いた桜並木が雨に打たれて揺れ、桜が少しづつ散っていく。
そんな様子にピッタリと重なったさとちゃんは、やっぱりとても綺麗だった。
「さとちゃん!!はぁ…はっ……さとっ、ちゃん…!!」
走りながらさとちゃんに向かって必死に叫んだ。
バッと振り返った彼は、泣いていた。
「さとちゃん…!!はぁはぁ……っ!」
「り、莉犬…?はっ…」
そして彼は思い出したかのように後ろを向いて涙を拭う。
「どうした?莉犬…?」
「あ、えっと…いや、そのさとちゃんが見えて…走ってきちゃった…」
「え……ぷっふはは」
突然彼は笑い出した。
「ちょ、笑わなくていいじゃん!!」
「だってっ…俺がいたから走ってきたって……くっ、ははは」
「笑いすぎ!…てか、どうして泣いてたの…?」
「え?あ、それは……後少しかぁって…」
「後少し?確かにテストには後少しだけど」
「ちげーわ!」
笑いながらそういう彼は、とてもかわいくて愛おしかった。
好きだ。彼が好きだ。どうしようもなく好きだ。
そんな気持ちがどんどん大きくなっていって、鼓動が速くなっていく。
「お前と一緒にいられるのが、後少しなんだ………」
俺の方を向いた彼は悲しそうな顔をしていた。
「どういう…こと………?」
さSide
「お前と一緒にいられるのが、後少しなんだ………」
あぁ言ってしまった。
「どういう…こと………?」
彼は困惑していた。当たり前だ。だって唐突に言ったんだもの。
「俺、実はさ、春が終わる前にここからいなくならなくちゃいけないんだ。」
「さとちゃん…それってどういうこと…!?ちゃんと説明してよ…俺、気持ちが追いついてないよ…」
「ごめんな。言ってなくて。」
「さとちゃんって、どこから来たの……?」
「俺は―――」
全て話した。俺がどこから来て、どうして春が終わる前にここからいなくならなくちゃいけないのかということ。
元々は、”こっちの世界”にただ来ただけなんだ。
別に莉犬に出会うなんて、こんな可愛くて愛おしい人に出会うなんて思ってなかったから。
俺の住んでる"ハルの世界"と違う世界に、来てみただけなんだ。
”ハルの世界”はその名の通り、ずっと見た目が春の世界だ。よくがいのないくらいの素敵な雨がふる、そんな世界。そこから来たのだ。
だから、ただただ、この世界にいる期間がこっちの世界の春が終わるまでで、ただそれだけだったんだ。
今じゃそんな縛り、どうしても解きたいよ。だって、莉犬と一緒にいたいから。
でも、それはだめだから……。
”こっちの世界”と”ハルの世界”は特別な汽車で行き来することができて、俺は一度だけと思ってきたんだ。
俺はそのことを全部話した。
「じゃあ、俺もその世界に行けるってこと…?さとちゃんのいる世界に。」
「……うん…」
「そっか……じゃあ一度行ってみたいなぁ…」
莉犬は空を見上げそう言った。
気がつけば通り雨はやんでいた。
「雨、やんだね。さとちゃん」
「そうだな」
「この空から汽車は来るのかな?」
「そうだよ」
「そっか」
そんな話をしていたら、近くにある結婚式場から鐘の音が聞こえてきた。
「あ…誰かが、幸せになったのかな?」
「そうかもな」
そんな言葉を交わし、俺たちは帰った。
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莉Side
帰宅後、自室のベッドに寝転がる。
「嘘じゃなさそうだし、別に信じてるけど…やっぱり、寂しいよ……」
あんな唐突に分かれるって言われたら……無理だよ……。
どうしたらいいかな…春が終わる前に、「好き」って伝えなくちゃだよね……。
わかってるけど、無理そうだな…。
このまま、俺の淡い恋は終わるのかな?それもやっぱり寂しいかな。
ふと、あの時鳴った鐘の音を思い出した。
「あの鐘の音を、俺たちも鳴らせるかな?」
俺はそう呟いた。
うぇいなんか終わり方変かも