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1 - 首吊り
首に|紐《ひも》をかける。後ろで淡く結う。|顎《あご》に紐が触れて、少々くすぐったい。
涙が|頬《ほほ》を伝う感覚がする。
足元の台を蹴った。
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宙に舞い、堕ちる。
苦しいもがき声が聞こえる。
『———! ———っ、———!!』
『———! ———!! ———!!』
エコーがかかったような声。
濁った殴打音が聞こえる。何かが転がる衝突音に落下音。けたたましい破砕音に顔を|顰《しか》める。
ドン、ドカン、バン、パシャーン、脳の奥で反響する。
誰かが|嘲笑《ちょうしょう》を浮かべている。|歪《ゆが》んだ口元が見える。
誰かが泣いている。手が|腫《は》れるまで、扉を叩いている。———可哀想に、閉じ込められたんだ。
ゴミ箱にぬいぐるみが捨てられている。目はくり抜かれ、耳は引きちぎられ、頭部と|四肢《しし》は引き裂かれ、ひどい有様だ。
宙に浮いている自分の影が見える。
音もなく部屋のドアが開く。
誰かが入ってくる。
じっと、巨大なてるてる坊主を見て、すぐに扉の向こうへ消えた。
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気がついたら、どこかに寝かされていた。
周りには|覆《おお》い尽くすほどの花が置かれている。
誰かの泣き声がする。
誰かの|啜《すす》り泣きが聞こえる。
———ああ、相変わらず お上手だな。