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今世こそは青春を謳歌…って謳歌するどころかモテモテですが!? NO.2
「は、勇人…?」
その女の人は10秒くらいの沈黙の後に口を開いた。俺はその言葉に頷くしかなかった。
「よかった…よかった…」
抱き着いてきた。涙流しらながら。うん。誰…?
「え…?え…?だ、誰?」
「あ、ゴメンね。知らない人がいきなり飛びついてきて。私のこと…覚えてる?」
俺は無言で下を向いた。
「ゴ、ゴメン…」
「やっぱり?じゃ、改めて自己紹介しておくね。私の名前は一ノ瀬葵。あなたのお姉ちゃんだよ。あ、私、先生呼んでくるから」
そう言ってパタパタと病室を出ていった。そっか…。俺はこの世界では憑依した感じになってるんだよな…。俺は…誰かの体乗っ取ってるんだ。ちょっと罪悪感あるかも…。
そう思う俺は、窓の外を見る。女の人しかいない。男は見つからんな…。これが神様が言ってた世界か。ま、俺はしばらく記憶喪失の振りでもしておこうかな。
外は桜並木が川に沿って続いている。
これまで分かったことを並べるとだ、まず、俺のこと。俺は3月の初めごろに交通事故にあって死にかけたこと(ちなみに、目覚めたのは3月29日)。そしてその事故で俺は一部の記憶を失ったこと。その一部の記憶は家族のこと、自分の生い立ち、の二つ。なぜこんな大事なのがぽっかり二つ開くんだよ。あー、あと、俺は今後、中学生だから4月から学校行くわけだけど、その4月から行くところが、全寮制の名門中高一貫校なんだと。構わんけど
あと、この世界のこと。神様が言っていた通り、この世界は男女比が狂っていること。この世界の男は基本的に、ヒキニートであること。理由は女性による強権支配で外出したくないから。あと、これは後付けで知ったんだけど、この世界では一夫多妻制が復活してるらしい。まあ、簡単に言えばハーレム作ってウハウハできると。でも、それでも、この世界の男はヒキニートだからその制度も無いに等しいと。
ま、ざっとこんな感じかな?まとめると、俺は死にかけて記憶喪失で4月から全寮制の名門中高一貫校に通うこと。この世界は、男女比が1対1000の世界であり、ハーレム作り放題だけど、男は引きこもり。
そして、今日は4月5日。つまり、目覚めてから1週間がたったと。んで、昨日新しく入った情報だけど貞操逆転してると。あ、簡単に言うと女の人の方が性欲強いってことや。で、そのせいで事件とかもちょこちょこ起きてると。物騒。
そういえば、まだ学園のことを話してなかったね。学園=さっき言った全寮制の中高一貫校こと。正式名称は月桜坂学園。月と舞う桜の花びらが特徴の校章の学校。そんで、最近ネットで調べたんだけど、その学校の先生・生徒全員女の人らしいんよ。構わんが。てか、慣れないとこの世界やって生けないしね。慣れ。慣れ。
おっと、話が脱線しちゃったね。そんで、今わかる学校の詳しいことだけど、基本的に校風は緩いっぽい。制服着崩してるヤツも居るっぽいね。OGの姉さんが言ってた。俺の住んでる地域唯一の男子用教育もできる学校なんだと。その男子用教育が何かは知らんけど。そして、寮。大きく分けて二つで、中等部が暮らす|鳥桜《ちょうおう》館と、高等部が暮らす月光館があるっぽい。
部屋は鳥桜館は4人部屋で、異学年との交流をっていう学園の方針で同級生は一人もいないらしいね。学園自体の建物の作りは和洋折衷。鳥桜館は基本的に和風モダンで、月光館は洋風モダンな造りらしい。姉さんが言ってた。
あと言っとく事といえば、制服のことかな?制服は中等部か高等部か、男か女か、夏か冬かで分けられ、中等部男子は夏は半袖ポロシャツ、冬は長袖ポロシャツとブレザー。あとは随時説明してこうかな。
4月7日。俺は電車待ちをしていた。俺ん家から学園までは電車1本で行けるからよかったよ。寮生活に必要なものは、段ボールに詰めて学園に送ったから安心安心。
ところでなんだけどさ、家出た時から色んな人から見られるのは何で?