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消えゆく神の子 第三話
<注意事項>
・このお話はフィクションです。
フランス 山奥
「あったぞ……」
指示された通り山奥までやってきたエースは、謎の建物を見つける。かなり植物が生い茂っているが、建物自体はここ何年かの物に見える。建物の9割が白色で、独特だ。
「俺とエースが中に入る。実行部隊は建物の周りを固めておけ」
「了解。総員へ、建物の周囲に防衛線を張れ。オーバー」
建物に入ると様々な実験道具や薬品がちらばっていた。
「電気つけるぞ?」
と言ってエースがスイッチを押すと、部屋の明かりが順々についていった。
それを目で追っていくと、その先に縦長のモニターがあった。
「なんだこのモニター?これだけ植物もついてないな……」
そう思い近づこうと数歩歩くと突然モニターがつき、警戒した天野たちは銃を向けた。
モニターは水色を基調とした映像が流れており、地球が映されていた。今いる研究所から矢印が伸び、その先に赤い点が現れ、フランス語で『位置情報』と画面の上部に表示されていた。
「んだよこれ」
「何かの位置情報みたいだな。とにかく、まずは神の子をさがそう」
「了解」
ふと天野が振り返ると、カーテンのようなもので閉じられた部屋があった。
天野が不審に思い片手でピストルを構えながらカーテンを勢いよく開けた。
すると、地面に9歳くらいの男の子と女の子が二人寝ていた。白い毛布を掛けている。
「エース……ちょっと来てくれ」
「どうした?」
天野は二人の傍に落ちているカードを拾い、エースと一緒に見た。エースが書いてある文字を読んだ。
「特定遺伝子所持者……」
「間違いない。神の子だ」
「どうする?」
「もう少し建物の中を調べて、何もなかったら連れて帰ろう」
「わかった。天野は二人を見張っててくれ」
「了解――」
建物の外
隊員たちは建物を囲む森を警戒し、周囲を見渡す。ときどき、鳥のさえずりが聞こえる。
静かな森に目をとがらせていると、突然隊員の一人が「うっ」と声をあげ倒れた。
「どうした?大丈夫か?」
近くにいた隊員が近づき、手を伸ばそうとしたその時、突然いくつもの飛翔体が高速で自分の周りを通り過ぎた。それらは背後にあった建物の外壁に当たる。
「敵襲だ!」
その声を合図に暗い森から大量の弾幕が飛んできた。弾が当たらないことを祈りつつ、倒れた隊員の足を掴んで建物の中へ逃げ込んだ。
「アルファ0-4より総員へ。北東から銃撃を受け、アルファ0-5がダウンした!」
「総員戦闘用意‼建物の中まで撤退しろ。急げ!」
「なんだ?」
天野は突然の銃撃音に驚き、振り返った。
「正体不明の目標から攻撃を受け、現在交戦中です!」
「なんだと?」
「本部へ。神の子を発見したが、正体不明の目標からの攻撃を受けた。……包囲されている。回収部隊を要請する!」
「了解した。待機しろ……10分ほどかかる。それまで耐えてくれ」
「了解……総員へ。回収部隊が10分で来る。それまで耐えるぞ」
「耐えられるか?」
「やらなきゃ死ぬんだ。やるしかない」
そう言って天野は窓から森にいる敵へ撃ち始めた。
しかし、明らかに火力不足で押され気味だった。
「クソ、数が多い……」
「総員へ、森の奥から何か来る……装甲車だ!機銃付きの!」
「外にいる隊員は至急建物の中まで退避しろ!」
「天野さん!全員入りました」
それを聞いた天野は外にいる敵を撃つが、機銃掃射を受けているため狙う事ができずにいた。
「クソ!あの装甲車を何とかしてくれ!」
エースが大声で言うが、C4もなく、接近することも出来ないこの状況では対処しようが無かった。その時、機銃を撃っていた男が突然倒れた。驚いていると、ピストル1つだけ持った男の子が弾幕の中一発も被弾せずに悠々と歩きながら敵を撃ち殺していた。
「あいつ、さっきの男の子か⁉」
しばらくすると、銃声は鳴り止み、森の方に敵の死体が大量にあった。
窓から男の子の後ろ姿を見ていると、突然振り返り、早足で近づいてきた。
(殺される――!)
そう思った天野は一瞬怯えるが、すぐにそれが勘違いだと思い知らされた。
男の子は手を差し伸べ、無言で握手を求めていた。天野がその手を握る。
「ありがとう。お兄さんたちがいなかったらあぶなかったよ」
「あ、ああ」
「ケガはない?」
「大丈夫だ。ところで君は……」
「見たでしょ?カード……」
そういって、男の子はマジックのように天野が持っていたカードをどこからか取り出した。
「それで、何のためにここに来たの?あの敵は何者なんだい?」
「敵は分からない。俺は……君たち特定遺伝子所持者『神の子』を連れて帰るよう言われてきた」
「ふーん」
男の子は後ろで手を組みながら敵の死体を生きているのか、何者なのか、探るように見て回りながら答えた。
「お兄さんたちについていくよ。助けてくれたし、何より楽しそうだしね」
「いや、助けてもらったのは――」
俺たちの方、と言おうとすると「シッ――」と人差し指で天野の口を押えて、
「お兄さんたちがいなかったら、僕たち野足れ死んでた。だから、助けてもらったのは、僕たち」
「わ、分かった……」
そのあと、また後ろに手を組み、辺りをジロジロと見渡していた。
すると、誰かが天野の背中をトントンと叩いた。
エースが呼んでるのかと思い振り向くと、さっき寝ていた女の子だった。
「ど、どうした?」
「はいこれ」
そういって、女の子はUSBを渡してきた。
「これは?」
「あのモニターに出てる位置情報を取得するために必要なデータを入れといた。これで場所が分かるでしょ?」
「場所って……一体何の場所なんだ?」
「私たち『神の子』の位置情報よ」
「なんだと?」
「他の神の子も連れていく必要があるんじゃない?多分、他の人たちも襲われてるんじゃないかしら?」
「つまり、本部は神の子を保護しようとしてたのか……」
辻褄があい納得する天野。となれば、後は安全に連れて帰るだけだな。
「天野さん。回収部隊が来ました。ここに留まるのは危険なので、脱出しましよう」
言われて外を見ると3台の防弾仕様の車が止まっていた。
「よし。2両目に俺とエース。神の子を乗せる。他の隊員は1両目か3両目に乗ってくれ。撤収する」
「了解。総員へ、撤収だ。車に乗り込め!」
全員が車に乗る。
「で、本部までどう帰るんだ?」
「空港で専用のジェット機が待機しているので、そこまで向かいます」
「よし、出せ」
天野たちの車が土煙を上げながらUターンして山道を下っていった。
その後ろ、森の中でその様子を観察している者がいたことに付かずに……。
「総員へ、|目標《ターゲット》は空港へ向かった――」