公開中
貴方と、夢の合間に。
最近、よく眠れない。
「っ………夢、か」
悪夢を見てしまうのだ。
クラスメイトに罵られる夢、親に見捨てられる夢、大事な人を失う夢……。
「……いや、思い出さないでおこう」
もう眠る気にもなれず、夜空を見ようとカーテンを開ける。
すると__目の前に、小さな少女がいた。
背中に生えている羽で、綺麗な満月をバックにふわふわ漂っている。
「……はっ?」
「あ、起きちゃった?」
何も見なかったことにしようと思ったが、目が合ってしまった上に、話しかけられてしまったので諦める。
「……貴方は誰?」
「わたしは、夢管理官のモエ! 君を助けに来たんだ」
「…………えっと、ごめん。意味がわからない」
「だろうねぇ。安心して、今から説明するよ」
天使の様な少女__モエ曰く、とある世界には夢管理局というものがある。
そこは名前の通り夢を管理する場所で、そこで働く者を夢管理官という。
わたしが最近悪夢をよく見るのは、夢管理局から漏れてしまった未処理の夢が流れ込んできたから、らしい。
妙に腑に落ちていると、急にモエが謝ってきた。
「ごめんね……! これは、夢管理局のミスだよ。本当に、ごめんなさい!」
「えっ? いやいやいや……別に、ミスは誰にでもあるし。確かに寝不足だけど、たったそれだけだし……」
「でもっ、睡眠は大事なんだよ? それに、わたしたち夢管理官の仕事は『いい夢』を見せることなのに……」
また謝ってくるモエに、わたしは心の中で頭を抱える。
(ど、どうしよう……)
「……そうだ。じゃあ、わたしの話し相手になってくれない?」
「へ? 話し、相手……?」
「そう。貴方を許す代わりに……。話し相手に、なって欲しいんだけど」
呆然とするモエに、そう告げる。
「えっと……つまり、友達になって欲しいってこと?」
「っ、ま、まぁ……有り体に言うと、そうなるね」
目を逸らしてわたしが言うと、モエはふふっと噴き出して
「うん、いいよ! 友達になろう!」
と満面の笑みで言ってくれた。
その笑顔は、満月にも負けないくらい輝いて見えた。
---
「そろそろ、帰ろうかな。また来るね!」
「うん、またね」
モエはそう言うと、どういう原理なのかパッと消えた。
「……今度は、いい意味で寝不足になっちゃうかもなぁ」
わたしの呟きは、澄んだ夜空に溶けていった。
いいねぇ、うん。こういうの好きよ。()
おつみらー!