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Happy Birthday,Lewis
Q.アリスと違って真面目に書いてないの(特に始めの方)は何故?
A.深夜テンション&思い付いてしまったから
1月27日。
今日はルイス・キャロルの誕生日だった。
ルイス「……うーん」
本日の主役は、何やら考え事をしている様子。
ルイス「何だっけなぁ……」
天井を仰ぎながら、何度も腕を組み直す。
その様子を見ていた探偵社員は、何も云わない。
否、云えないのだ。
ルイス「今日、何かの記念日だった気がするんだけど……」
何だっけ、とルイスは何度目か判らないため息を吐いた。
この阿呆はなんと、自分の誕生日を忘れていたのだ。
何かの記念日、までは出ているのに全く思い出さない。
しかも、この状況は一時間ほど続いている。
ルイス「敦君、心当たりない?」
敦「え、ぁ、そういうのは自分で思い出した方がいい気が……」
ルイス「まぁ、そうだよねぇ……」
この場にいたルイスを除く全員が思った。
「「今すぐにでもツッコミを入れたい……!」」
自分の誕生日を忘れる阿呆がいるだろうか。
否、実際此処にいるのだが。
この金髪の少年(26歳)は一体、日々なにを考えて生きているのだろうか。
誕生日は年齢を重ねるごとに迎えたくなくなる(|天泣《個人》の感想です)
しかし、この阿呆のようにド忘れする人間はいない。
因みにもう半日終わっている。
このまま残り半日も終わってしまうのではないだろうか。
そんな不安が探偵社には漂っていた。
しかし、そうはならない。
何故なら定時になった瞬間、マフィアの面々が『誕生日の歌』を歌いながら事務室へ入ってくるからだ。
定時は17時。
それまでの辛抱と思いながらも、探偵社員達の不安や緊張は募るばかりだった。
ルイス「……ぁ」
国木田「ど、うかされましたか?」
まさか思い出したのか。
国木田が恐る恐る声を掛ける。
ルイス「卵の特売……」
よくあるバラエティのように(?)全員同時に転びたくなった。
誕生日だったことを思い出したのかと思えば、まさかの“卵の特売”。
確かに卵の特売は12時からスーパーでやっていた。
今行っても、もう完売していることだろう。
ルイス「やらかした……早めに休憩もらおうと思ってたのに、最悪だ」
鏡花「ただいま」
探偵社の扉が開いたかと思えば、鏡花と谷崎兄妹が入ってくる。
三人の手には、大きなスーパーの袋が。
中身は━━。
谷崎「卵、お一人様三パックまでだったんですけどすぐ完売しちゃいました……」
ナオミ「でも鏡花ちゃんのお陰で九パック手に入りましたわ!」
鏡花「大変だった」
谷崎兄妹が卵を配り始め、ルイスも受け取る。
ルイス「本当にいいの?」
ナオミ「勿論ですわ。遠慮なさらないでください」
まだ夏よりはマシだが外に置いとくのは良くない、とルイスはすぐに異能空間へしまう。
ルイスは卵が手に入り、満面の笑みを浮かべている。
福沢「すまない、依頼が入ったのだが誰か行けるか?」
乱歩「パス」
敦「あ、僕が行きます!」
鏡花「私も」
国木田「いや、ここは俺が」
谷崎「僕が行きますよ」
与謝野「妾が行こうか?」
賢治「僕も行けます!」
福沢「……そんなに必要ないのだが」
太宰「間を取ってルイスさんでいいのでは?」
ルイス「君と僕にしようか」
太宰「ゑ」
この流れであの有名な「どーぞどーぞ」じゃねぇのかよ。
ルイスは福沢から資料を受け取った。
そして逃げようとする太宰の首根っこを掴み、ずるずると扉へ向かう。
太宰「ちょ、敦君助けて!?」
敦「気を付けてください、太宰さん」
太宰「ねぇ敦君!?」
ルイス「行ってきまーす」
さて、本日の主役が消えたがどうしたものか。
とりあえず時刻を確認する探偵社一同。
現在時刻12:45。
依頼にどれだけ時間が掛かるかは不明。
もしかしたら、17:00までに帰ってこない可能性も。
国木田「社長、どうされますか?」
福沢「……プランBに変更する」
説明しよう!
プランAはマフィアが突撃してくる。
そして、プランBはルイスがいない間にパーティーの撮影を終わらせるというものだ。
国木田「太宰に連絡をしておきます」
福沢「私は森医師に電話する」
残った探偵社員は思った。
「「本当に何してるんだ、彼奴」」
もちろん太宰もプランAについて理解している。
しかし、あの場をどうにかするにはルイスを連れ出すしかなかった。
太宰自身も出ることになるのは予想外だが。
森『まぁ、探偵社員の誰かがパーティーに参加できないよりは良かったんじゃないですか?』
福沢「そう思うことにする」
森『それにしても、私達が突撃するのはどうしましょうか。戻ってくる時間が判らないことには動けないのですが』
福沢「帰社については、太宰から連絡が来ると思われる」
それならまぁ、と森は頭を掻く。
森「では、連絡をお待ちしてますね」
中也「どうかされたんですか?」
森「太宰君のせいで5時に突撃できなくなっちゃった」
紅葉「何しとるんじゃ、太宰は」
全く、と紅葉は頭を抱える。
他の面々も何とも言えない表情をしていた。
ポートマフィア本部内にある、一番広い会議室。
そこに構成員、幹部、首領という中々おかしな面子が集まっていた。
もちろん彼らの目的は誕生日であるルイスを祝うため。
老若男女、役職関係なく愛されているルイスは凄い(?)
広津「では、どうされるんですか?」
森「彼方から帰社するときに連絡が来る手筈になった。だから、電話が来たら移動開始しようね」
立原「早くなるかもしれないし、遅くなるかもしれねぇってことか……」
樋口「まぁ、いつでも移動できるように準備しておきましょう」
各々がリラックスしている中、芥川は壁際で目を閉じていた。
仮眠を取っていると思い、誰も近づかない。
そもそも、あの“禍狗”に近づこうと思う者などいないが。
銀「兄さん」
あ、いたわ。
芥川「……銀か」
銀「昨日も遅くまで仕事だったんですから、寝るなら仮眠室を使った方が━━」
芥川「眠いわけではない。少し、昔のことを思い出していたのだ」
銀「昔のこと、っていうとマフィアに入る前ですか?」
あぁ、と芥川は開いた目をまた閉じた。
昨日のことのように思い出せる出来事の中の一つ。
ルイスとの出会いは、それほどまで芥川の中で大切な記憶になっていた。
銀も同じだ。
芥川「……こうやって生誕を祝えるのは良いことだな」
銀「そうですね、兄さん」
少し時が経ち、探偵社。
太宰もいるというのに中々依頼を解決せず、ルイスは帰ってこなかった。
敦「何かあったんですかね……?」
国木田「救援が必要なら連絡が入るはずだ。そもそもあの二人に助けが必要とは思えないが」
敦は国木田の言葉に納得してしまった。
現在、マフィアとは休戦中であり組合戦のような大変な状態でもない。
そもそもルイスは元英国軍で、太宰は元マフィアだ。
戦闘面でも、頭脳面でも心配はいらない。
賢治「そういえばルイスさんって幾つになるんでしょうか?」
乱歩「26」
賢治「え、でも今の年齢も26ですよね?」
与謝野「賢治、深く考えちゃ駄目だよ」
谷崎「僕らも年齢変わってないですからね、10年間」
国木田「メタいな」
鏡花「でも、確かにずっと14歳やってる。原作は10周年迎えたのに」
敦「つまり僕は18歳じゃなくて28歳……?」
何メタい話をしてるんだ、こいつら。
え、させてるのは|作者《天泣》?
それは云っちゃ駄目だろ。
国木田「……ん?」
ふと、国木田が携帯を取り出す。
画面に映るは「ルイス・キャロル」の文字。
国木田「もしもし」
ルイス『あ、国木田君。ごめん」
国木田「ごめん?」
国木田は首を傾ける。
対してルイスは苦笑いを浮かべていた。
ルイス「迷っちゃった」
国木田『はい?』
いつもの地下鉄使ったのに、とルイスはため息を吐く。
何度か同じ場所を回っており、なかなか目的の八番出口に辿り着かない。
ルイスも太宰も、少し疲弊していた。
ルイス「まぁ、どうせ異能力の暴発か敵意を抱かれているかの二択だしすぐに帰るよ」
国木田『大丈夫なんですか?』
ルイス「うん。だから気にせず仕事とかしておいて」
国木田『わ、かりました』
電話を切り、ルイスはもう一度異能を使おうとする。
しかし、何も起こらなかった。
|異能空間《ワンダーランド》に行くことも出来なければ、鏡を出したりすることも出来ない。
太宰「ルイスさん、これについてなんですけど」
ルイス「なにこれ」
ご案内 Guide
異変を見逃さないこと
Don't overlook any anomalies.
異変を見つけたら、すぐに引き返すこと
If you find anomalies,turn around immediately.
異変が見つからなかったら、引き返さないこと
If you don't find anomalies,do not turn back.
8番出口から外に出ること
To go out from Exit 8.
ルイス「今の表記は……“0”か」
太宰「異変ってなんですかね」
ルイス「まぁ、とりあえず進んでみようよ」
角を曲がり、何度か通った道が目の前に広がる。
前からは|勤め人《サラリーマン》であろう男性が歩いてきた。
右手には三枚の扉。
“分電盤室”に“従業員専用”、それから“清掃員詰所”。
一般人のルイス達は、もちろん何処にも入ることはできない。
左手には六枚の広告があった。
“歯科医院”、“アルバイト募集”、“ドッグサロン”、“司法書士”、“メイクアップ写真展”、“ミュージックフェス”。
太宰「順番とか時間も覚えておきましょうか」
天井にある案内看板の表は“ ↑ 出口8”、裏側には“↑ 地下広場”と書かれている。
まぁ、ルイス達が戻っても地下広場なんてないわけだが。
ルイス「太宰君なら覚えられるだろうし進もうよ。早く帰りたい」
太宰「私任せですか? まぁ、良いですけど」
ルイスと太宰が進み、案内の表記は“1”に変わる。
今のが異変のない状態。
つまり先ほどの状況と次の状況を比較すれば良いということだ。
太宰「……異変はなさそうですね」
一度覚えたことは、なかなか忘れない。
ルイスも太宰もそんな天才だったのでサクサクと進む。
たまに扉が開いたり、広告が怖い画像になっていたりしたが即座に気づく。
普通にこの二人を閉じ込めたのは間違いだろう。
そんなこんなで、ルイス達は“7”まで進むことができた。
太宰「それにしてもおかしな異能ですよね」
ルイス「……と、云うと?」
太宰「何て云ったら良いんでしょうか。異能者に触れなければ解除できないのはまだ良いのですが、こういう場合って外部との連絡が取れない筈では?」
確かに、とルイスは携帯を見る。
特に使えない機能もなく、メールなどもしっかりと届いていた。
太宰「もしかしたら、これは異能ではないんじゃ……」
ルイス「ま、僕達はただ出口を目指す。それだけだ」
太宰「……そうですね」
異変がないように感じた二人は道を進み、案内を見る。
ルイス「はぁ……やっと“8”だ」
太宰「階段が出ますかね」
安心していた二人の前に見えた人影。
また|勤め人 《サラリーマン》かと思ったが、違う。
こんなに早く此方側にはいなかったのだ。
ルイス「……ぁ」
ルイスは、足を止めた。
白い髪に赤い瞳。
見慣れた英国軍の服は、ルイスが着ていたものと違って女性らしさがある。
何度、会いたいと願ったことか。
ロリーナ「ルイス」
ルイス「ロリーナ……ッ」
無意識に進もうとする足を、ルイスは必死に止める。
これは、確実に異変だ。
でもルイスに戻ることは出来なかった。
異変と認めると云うことは、ロリーナがもうこの世にいないと認めることでもある。
太宰「……ルイスさ──」
ルイス「趣味が悪い」
太宰「……。」
ルイス「ごめんね、太宰君。出来れば手を引いてもらいたい」
太宰「……判りました」
ルイスは太宰に手を引いてもらい、来た道を戻る。
ロリーナ「ルイス! ……ねぇ、ルイス、行かないで」
名前を呼ばれても、二人は止まらなかった。
太宰が一歩前を歩いていき、ルイスが涙を拭いながら進む。
ロリーナ「太宰君」
太宰「……!」
ロリーナ「ルイスとアリスのこと宜しくね」
太宰「……勿論、判っていますよ」
来た道を戻ると、階段が見えてきた。
二人が上っていくと同時に、異能空間は消滅する。
ロリーナ「|何で置いていったの、莫迦《Happy birthday. The person I love.》」
八番出口から出たルイスと太宰を、夕日が照らす。
太宰「帰りましょうか」
ルイス「……うん」
探偵社に着いた太宰が扉を開けようとする。
しかし、足音が止まった。
太宰は振り返り、ルイスの方を見る。
ルイス「今日が何の日か、本当は忘れてなかったんだ」
太宰「……あの方がロリーナさんですね」
ルイス「うん」
太宰「誕生日は嫌いですか?」
ルイス「少し、僕だけ年を重ねるのが怖くてね。ロリーナも、みんなも、あの戦争で死んでて、」
ルイスの手は震えている。
ルイス「僕は、幸せになっても良いのかな……?」
今にも泣き出しそうな、そんな少年のような顔をしているルイス。
太宰は少し考える振りをしてから、微笑む。
太宰「この先に、答えが待ってますよ」
太宰が扉を開き、恐る恐る目を開く。
ルイスは、その先の光景を決して忘れない。
昔も、今の仲間も。
どんな自分でも受け入れてくれた。
──Happy birthday, Lewis
時間がなくてとりあえずで投稿。
また後でちゃんとしたの書く。
お礼のファンレターは明日になるかもです。
すみません。
誕生日おめでとう、ルイスくん。