公開中
飛鳥時代の始まり
目を開けると、そこは豊かな緑と古代の建物が並ぶ、飛鳥地方――今の奈良県にあたる地だ。
遠くには豪華な塔、仏を祀る堂が立ち並び、どこか神聖な空気が漂っている。
「ここでは、かつて日本の中心に立とうとした二つの勢力――物部氏と蘇我氏が争っていた。
特に大きかったのは『仏教』を巡る考え方の違い。蘇我氏は、昔からの日本の神、物部氏は仏教を推していたね。」
君たちは、甲冑に身を包んだ武人たちが緊迫した顔で睨み合うのを見る。
緊張が張り詰める中、Mが静かに告げた。
「この争いは、やがて蘇我氏が勝利し、物部氏は歴史の表舞台から姿を消した。
それと同時に、新しい希望が現れたんだ――」
そのとき、遠くから一人の青年が現れた。
高貴な装束を身にまとい、静かながらも目に強い意志を宿している。
「彼こそが――聖徳太子。本名は|厩戸皇子《うまやどのおうじ》、
そして|豊聡耳皇子《とよさとみみのおうじ》とも呼ばれた人物。
伝説によれば、十人の話を同時に聞けたとか。名前に耳が入っているから生まれた伝説の一つだ。」
Mがウィンクをすると、君たちの隣で思わず笑いが漏れる。
「太子は、まだ若かった推古天皇の摂政として政治を行い――
蘇我馬子と手を取り合いながら、天皇中心の政治制度づくりに力を注いだ。」
その場面が目の前に映し出される。
宮殿の中、重臣たちが並ぶなか、聖徳太子が穏やかに語りかける。
「冠位十二階――これは、血筋ではなく才能と働きで役職を決める新しい制度だ。
色で位が分かれ、努力する者が報われる世を目指したんだ。」
次に映るのは、巻物に書かれた17の条文。
「これは十七条の憲法。今でいう法律とは違って、心構えを説いたものだ。
仏教や儒学の影響を受けながら、天皇の命令に従い、和を尊ぶことが強調されている。」
Mがそっとささやく。
「まるで道徳の授業みたいだけど……これは、日本が国として生きていくための大きな一歩だったんだ。」
その後、聖徳太子は隋に使いを送り、進んだ文化や制度を学ぼうとする。
「遣隋使だね。代表的なのが、小野妹子。
彼は“日出ずる国の天子、日没する国の天子へ”という手紙を送った。
……中国の皇帝が怒ったという話もあるけど、日本が自立した国として名乗りを上げた証でもあるんだ。」
君たちは、日本最初の外交の場面に立ち会っているような気がした。
視界が変わる。今度は、唐の都・長安のような、壮麗な都市が映る。
「時は流れ、隋は滅び、唐が中国を統一した。
唐の力は強大で、日本もまた彼らの文化・制度を取り入れようと遣唐使を送り続けた。」
そのとき、風が騒がしくなる。
「・・・けれど、国内では再び不穏な空気が流れていた。」
画面の中、豪奢な屋敷に座る男の顔が浮かぶ。
「蘇我蝦夷とその子供の入鹿。
蘇我氏の権力が膨れ上がり、誰も逆らえないほどになっていたんだ。」
その裏で動き出す二人の影――
「そこに立ち上がったのが、中大兄皇子と中臣鎌足。
彼らは密かに力を蓄え、ついに――645年、クーデターを起こした。」
君たちの目の前で、燃え上がる蘇我氏の屋敷。人々のざわめき。
パチパチと炎が広がり、人は逃げ惑う。
「これが――大化の改新。
蘇我氏を倒した後、彼らは大胆な政治改革を始めた。」
舞台は新たな都、難波、つまり今の大阪へ。
「そして、日本史上初の元号『大化』が生まれる。国家の始まりを象徴する名前だね。」
さらに、Mの手が空に地図を浮かべる。
「彼らは土地や人民を国家が管理する『公地・公民』の原則を掲げた。
これまで豪族が私有していた土地や人々は、国家のものとなり、
天皇中心の中央集権国家が形づくられていく。」
風が吹く。
その風に乗って、君たちは飛鳥の都を歩き、法隆寺の静けさに耳を澄ませる。
「これは、飛鳥文化。
仏教が広まり、日本の美術や建築が大きく発展した時代でもある。
あの法隆寺は、今でも残っている世界最古の木造建築とされているよ。」
遠くに見える、整った屋根と静かなたたずまい。
風が吹き抜けるたび、仏の教えがささやくように聞こえる。
Mがふと立ち止まる。
「どうだったかな? この時代は、戦いだけじゃない。信念、改革、そして未来のための行動がつまっている。」
「そういう歴史を覚えるのではなく、感じてほしい。」
目を閉じると、君たちの心にさまざまな場面が浮かぶ。
冠の色、古代の寺院、天皇を中心とした政治。
そして、未来へとつながる人々の一歩一歩。
「では行こうか。」
Mが微笑む。
「この先の時代――ついに、日本が律令国家として本格的に歩み出す。」
再び、時空が揺れる。
次なる旅の扉が、静かに開かれたのだった――。
またもや投稿遅れました。
これが日常になっている自分が怖い。