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雪女の過去
雪女との物語が全く進まないのです
生前、|わたし《雪菜》は雪山に捨てられた。
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生前、わたしは|華菜《かな》と名乗っていた。普通の人間だった。
父親は、とても、厳しい人だった。母親は、優しかったが、臆病に見えた。
寝ている時、たまに|雑音《ノイズ》みたいなのがあって、眠れない時もあった。
それが、父親の暴力と知るのは、後の事である。
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小5の時、わたしは雪永丘に山登りに行った。
母親は荷物をたっぷり持って、父親は手ぶらでいた。
そのとき、ちょうど近くにあった小屋に、わたしは待っているように言われた。
重い大きいリュックをどすん、と置いて、
「戻ってくるからここにいるように。」
と言われた。災害が起こるから、と。
わたしは中に入っていた携帯用裁縫セットで、暇を潰した。
これは、母親の、気遣いだったんだと思う。
新品の寝巻きに刺繍を施して、かんづめとパンで食いつないでいた。
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捨てられたと気づいたのは、数ヶ月後。
冬になって、猛吹雪がわたしを襲う。
パンも、かんづめも、ほぼなくなっていた。
死んだな、と悟った。
少しだけ、吹雪がやんだ。
「…綺麗。」
光を浴びてとけかけた雪は、綺麗だった。
そして、意識を失った。
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数年後…
わたしは目覚めた。肉体は成長しているらしいが、妙だった。
体温を感じない。軽い。
そして、幽霊だと思った。
わたしは技を手に入れ、食べ物を出す方法も知った。
今も、父親が唯一褒めてくれたシチューを作って、遭難者、自殺願望者をもてなしている。
それなのに。
地球が隕石によって滅亡する、というニュースを聞いた。