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雨
晴瀬です。
雨が降る。
君の痕跡が消えていく。
母も父も君も殺された。
なんだかわからない。
自分だけが生き残った。
最後に見たのは僕を庇う君の、必死に歪んだ顔だった。
雨の冷たさに目が覚めて、状況が理解できなくて、起き上がろうと頭を持ち上げると酷い頭痛が刺して、周りを見渡しても以前の街の様子はなかった。
ここはどこだ。
ここはどこだ。
ここはどこだ。
ここはどこだ。
ここはどこだ。
あの店は街灯は笑顔の住民は野良猫は
どこへ行った。
何かの罰だろうか。
瓦礫と化した自分の街を見回す。
僕には何も残っていない。
雨に混ざる涙を感じた。
君の顔が、母の顔が、父が、昨日まで笑っていた友達が、今まで出会った人達の顔が脳裏に浮かんでは消えた。
君の最期の言葉が脳で鋭く響く。
「|Втеча до!!《逃げて!!》」
目を凝らせば道に転がる死体と潰れた車。
僕が何をしたと言うのか。
雨は降り続ける。
怒号は、叫声は止まない。
もう思考が働かなかった。
雨は止まない。
君が跡形もなく消えていく錯覚を憶えた。
雨は赤く染まって流れ続ける。
想像しか出来ないけれど