公開中
山吹、再起動。
リメイク
山吹あずさが死んだ。病気だった。彼女は私の幼馴染だった。私たちはずっと仲が良くて、幼稚園の頃、彼女はどうしてかわからないけれど、いつも私の後をついてきていたのが懐かしい。中学2年になった頃、山吹あずさが悪性リンパ腫であることを知った。つまり癌だ。医者に余命半年だと告げられたことも続けて教えてもらった。私は悲しみに暮れ、そして彼女を支えると決めた。勉強より、部活より、友達より、あと半年しか一緒にいられない彼女に時間を使った。彼女はそのことに対していつも申し訳なさそうな顔をしていた。ごめんねと度々言われた。私は聞こえなかったふりをしていた。
余命宣告をされてから7ヶ月後、あずさは息を引き取った。もちろん、多少の心構えはできていたけれど、それでも私を鬱にさせるくらいには衝撃的でショックの大きい出来事だった。あずさが死んでから私は家に引き篭もるようになった。なので鬱だと診断されたわけではないが、両親は完全に鬱だと思っているし、私自身もまあそうだろうなと頭のどこかで感じていた。
カーテンを閉め切った、人工的な光に照らされている部屋。外はきっと真っ暗だ。でも私は眠れなかった。体も心も疲れているのに、寝ることができなかった。スマホで時間を確認すると深夜2時半だった。「2:30」その数字に体が少し跳ねた。
山吹あずさが死んだ時間だ。
平静を装いつつ、スマホの画面を下に向けた。その時、ピコンとスマホが鳴った。こんな時間に?と不審に思いつつ、だからこそ気になった。だがまたあの数字を見るのだと思うと、スマホに伸ばした手が一瞬止まった。それでも数字を見ないように通知を確認した。トークアプリからの通知だった。インストールしたは良いものの、部屋に篭りっぱなしになってからは大した働きをしていないアプリ。あずさが生きている時は頻繁に使っていたのにと、そんなことを思って胸が締め付けられる。もうこれ以上それについて考えてしまわないよう、メッセージに意識を向ける。誰がこんな時間に送ってきたのだ。確認して、目が釘付けになった。相手の名前が、「山吹あずさ」____彼女のものだった。おかしい。彼女のスマホはとっくに処分されたはずだ。もうこの世に存在していない。同姓同名の人は登録していない。
恐怖心も、確かにあった。でもそれ以上に、期待が膨らんでいった。その通知が、彼女の名前が、光り輝いて見えた。私は震える手で送られたメッセージを開いた。2通、送られてきていた。
『いつまでも部屋に篭りっぱなしじゃだめだよ』
『前に進んで』
ただの文字のはずなのに、視界が滲んだ。頬を生ぬるい液体がつたった。
ただの文字のはずなのに、それには特別な力が込められているように感じた。さっき以上に胸が締め付けられた。でも、苦しくはなかった。
彼女に背中を押されたから、だから、私は進む。未来に向かって。
---
リメイク前(多分小6後半〜中1前半あたり)
君が死んだ。ずっと前から医者に余命宣告をされていた。
心構えはできていたからショックはある程度減っていたのかもしれないが、少なくとも私を鬱にさせるくらいは悲しかった。
君が死んでから私は家から出なくなった。だから鬱と正式に診断されたわけではないけれど、両親は私を完全に鬱だと思っている。
カーテンを閉め切った、人工的な光に照らされている部屋。
外はきっと真っ暗だ。スマホの時計を見ると深夜2時半だった。「2:30」。その数字に体がびくりと反応する。
君が死んだ時間。
ぴこん、とスマホが鳴った。またあの数字を見ると思うとスマホを伸ばす手が一瞬止まった。
「LINEか‥‥。」
数字を見ないように通知を確認する。
インストールしたはいいものの、部屋に篭りっぱなしになってからは大した働きをしていないアプリ。
君が生きている時は頻繁に使っていたのに。
でも、奇妙なことが起きていた。
送ってきた相手の名前が____『山吹 あずさ』君の名前だった。
目が名前に釘付けになる。
意味がわからない。君のスマホはもう処分されたはずだ。だから誰も持っていない。
君と同姓同名の人は登録していない。そもそも、私とLINEを交換しているのは両親とあずさだけである。
私は震える手であずさから送られてきたメッセージを開いた。
2通、送られてきていた。
『いつまでも部屋に篭りっぱなしにならないように』
『前に進んで』
ただの文字のはずなのに視界が滲んだ。
ただの文字のはずなのに、それには特別な力が込められているように感じた。
君にそう背中を押されたから、だから、私は進む。未来に向かって。
リメイク前のほう短編カフェのリレー小説から引っ張ってきた。リレー小説っていいね。