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早すぎる1日
――
あの後私は碧と別れ、それぞれ帰路についた。
ええ子やったなァ…(
会ったばかりでも笑顔で接してくれる、優しい子。
あんなに良い子久しぶりに見た気がする。
『 あれ、碧からメッセージ来てる 』
ふと目の中に入ってきたのは、スマホの通知画面。
〝 今日はありがとう! 雪穂ちゃん、これからもよろしくね!! 〟
なんて良い子なの。お姉さん感激。(
――
布団に潜り込みながら、今日を振り返ってみる。
まず、電車に轢かれてー、何故か転生しててー…
…この時点で結構やばいな(
入学式に遅刻してー、迷子になって、碧に会って仲良くなって…
濃厚すぎないか、今日。
そもそも、死んでなかったら今日もまだ仕事をひたすらにこなしてて…
会社の同僚と、ブラックだぁ なんて言いながらも楽しくやっていた。
あの時、最期の風景は…
慌てた運転手の顔と…笑った ✘ ✘ ✘ …?
あれ、? ✘ ✘ ✘ って、何…?
そもそもホームの方なんて見てないハズなのに、何でこんな事覚えてるの…?
あー頭痛くなってきた気がする。…いや痛くはないな(
『 やーめた。今考えてもしょうがない気がする。未来の私に託そ。 』
そう言いつつも、布団から出て部屋をがさごそと探り始める。
もしかしたら、私が何で死んで更にそこから転生したのか分かるかも知れない。
私の魂がこの身体に入る前の、JK後藤雪穂はどんな生活をしていたのだろう。
私を落とした✘ ✘ ✘について、何か手がかりはないだろうか。
そんな考えが、ひたすらに私の身体を突き動かす。
足の踏み場が殆ど無いくらい物が散乱しているから期待大である。(
『 …日記? 』
今時の子がアナログなんて珍しい、なんて思いながらぺらぺらとページをめくる。
日付が飛ばし飛ばしで、いかに飽き性で好きな時に書いていたかが分かった。(
ふと目に入った後ろの方のページには、こんな事が書いてあった。
❝ 3月15日
今日は、田中と、山田と、田辺と一緒に遊びに行った。
田辺が、中学はみんなバラバラだけど、高校は一緒だから楽しもうね
って言った。
高校行ったらみんなでクラスが一緒だと良いな、って思った。
卒業まで後少し。今を楽しもうと思った。 ❞
何この小学生が宿題で提出するみたいな拙い文章の日記。(
『 …あれ、 何で田辺たちの名前が書いてあるの…? 』
田辺、田中、山田は、私の会社の同僚であり幼馴染である。
この世界にも同姓の友人が居るのかな。
前世では高校から一緒だったはずだけど…
もしかしたらこの世界は、元いた世界のパラレルワールドなのかも知れない。
この世界で私は今高校生であり、田辺達は中学もしくはそれ以前からの付き合い。
そして、人間関係や環境など、あちこちに違いがある…
そうであれば私が同姓同名であること、容姿が高校時代の私まんまなこと、
田辺達との付き合いなどにも納得がいく。
『 並行した世界線なのかなぁ、此処って。 』
日記の記述を更に読み込もうとした時、時計が深夜0時を告げる鐘を鳴らす。
『 げ、もう深夜回った…!!? 』
今日の体感3時間くらいなんだけど。
いそいそと布団に戻り、明日の朝にでも早起きして見てみようなんて考えながら、
私は転生初日を終えたのだった。