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心を持つ者持たぬ者
森での夜は、都市とは違い、風が静かに、しかし冷たく吹き、空には満点の星が瞬く。
焚き火の前で座るユイナ。レイは眠っていた。森から戻ってきたマフィラがユイナに聞く。
「おや?ルシフェルは?」
「祈ってます」
「そうかい」
マフィラは少し考えた後、隣に座った。しばらく、黙る。
「君は、心は持つものだと思うかい?」
マフィラは怒っているような悲しんでるような声で、ユイナに聞いた。ユイナは瞬きを二回する。
「問いの意味が分かりません」
「聞き方を変えよう。君は、心は持った方がいいと思うかい?」
「分かりません」
ユイナは嘘偽りのない声音で喋る。
「いいな。君はなにも知らなくて」
「それは、"悲しい"のですか?」
「………そうかな………はは………聞いてもらおうか。俺は、人の死を見すぎた。不老不死なんてくだらないよ。自分はただの化け物だ。心が無かったら、ましだったのに……。人類が崩壊しても無様に生き続けて、セイラに恋して、セイラが死んでからは研究も放棄。だから、不老不死に心なんていらないんだ。分かったか」
「分かりません」
ユイナはさっきと同じように返す。ただ、さっきよりもはっきりと力強い言い方だった。
「私は、心を持った方がいいと思います」
「なぜ?」
「分かりません。分からないから、探すんです」
マフィラはユイナを見つめて、瞬き一つ。それから、フッと立ち上がった。
「君は、素晴らしいアンドロイドだね」
その言葉は、本心だった。マフィラは伸びをすると、夜明けの光に目を細める。
「探す……か。セイラ。俺は、もう一度探すよ。君と探した、心を」
嘘か本当か分からない言葉。嘘つき青年は、日の出を見ると、みんなの元へ帰って行った。