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𝐏𝐚𝐫𝐭 𝟏〖異世界転移〗
「じゃあ、また短カフェの世界で!」
「うん。ばいばーい!」
学校の帰り。私──えくれあは、親友──和音と別れて、今日もまた短編カフェを開く。
「んー、何しようかなぁ……今日はからまほ書けないしなぁ……。」
__※からまほ とは、私がちょこぱんだのアカウントで書く小説のこと__
呟きながら、|皆《短編カフェユーザー》の日記や小説を見たり、面白そうな自主企画を探したり……。
「っていうか、からまほ書くの手伝ってよ。お前が発案者だろ?」
ちょいとお口が悪い|現実《リアル》の私が言葉を向けた先は、妹──てん。
「えぇー気が向いたらねー」
「っていって毎回やってないんでしょーが。このクソガキ。」
「はいはいクソガキでぇーす」
「|小学生《お前》の方が時間あるのに何で書いてくれないわけ? そのせいで投稿休止になったって言っても過言じゃないんだからね??」
懲りずに学タブをいじるてんを横目に、私はスマホを手に取る。
そして、開催予定の自主企画を書き始めた。
和音がこの場に居たら「いや、からまほ書こうよ」と突っ込まれそうだが、スマホだと書きにくいし、それ以外にもれっきとした理由があるので、許して欲しい。
「あ゙あ〜! |プリ小説《別の小説投稿サイト》でフォローしてる人の神小説読みたい゙い〜!!」
アプリは入れてあるんだけど、今日の制限時間はもう超えてしまったんだ。
……ん? 普段私がどんな小説を読んでいるか?__ おや、そんなこと聞いてない、って? 気のせいだろう。__
うーん……そうだな。二次創作とか、異世界転移系とかかな。
あ、じゃあ画面越しの皆さんに質問です! 貴方は異世界転移を信じますか?
異世界転"生"じゃないですよ。転"移"です。
私は信じるか信じないかと言われると、信じない方かな〜。
「あったらいいなぁ、なーんてね!」って感じくらい。
非現実的なことを、ぼんやりと考えていたそのとき。
--- ピカッ ---
突然だった。
スマホの画面がまばゆい光と強い風を放ち、視界が真っ白に染まる。
ごちゃごちゃとした机の上の荷物が落ち、髪と服の裾が後方に流される。
「ッ!? 何!?」
「何これぇ!!?」
叫び声に振り向くと、てんのタブレットも同じく光っていた。
まともに目が開けられないほど強い光に、目が眩む。
(っ……電源切ればなんとかなるか……!?)
無理矢理瞼を持ち上げ、スマホへと手を伸ばす。
──ぐい、と。
後ろから急に押されたように、身体が前のめりになる。
「ゔわっ!?」
転ばないよう反射的に手が前に出る。
指はスマホを掠め……ずに、**画面の中に入った**。
理解するよりも早く、肘、肩、頭と吸い込まれ……
「……えっ。」
✁┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
眩しいと感じて目を開ける。
「……ちょ、待っ、ん? え? 夢? ほっぺ……あでっ、痛かった…。」
そこは、自分の部屋──
ではなく、**色とりどりの花**と、**鮮やかな緑をしげらせた木々**。
と、そこに倒れる様に寝る**二人の人**。
見るところ、私と同じくらい……小学生高学年から中学生くらい。
「待て待て待て待て、何ここ誰この方達何この服??」
自分の服は上下体操服から黒ダボパーカーに、水色の短パンとなっていた。
「……んー、うん……一旦落ち着け|私《えくれあ》、とりあえずこの誰かさんたちを起こそうじゃないか。」
だが忘れてはいけない。私はコミュ症。そんな簡単に初対面の人を揺さぶって起こすなんてことができるような奴ではないんだ。
数分間腕を伸ばしては引っ込め、伸ばしては引っ込め……を繰り返し、ようやく二回だがつんつんできた。
まあ非力はつんつん程度で起きてもらえる筈もなく。
「……起きない。」
【えくれあの選択肢】
▷自分から起きるのを待つ
▷全てを諦める
▶︎ヤケクソ
「__ぉ……__ぉ、起きろーーー!!!」
「うっさ!? 誰!?」
「あと五分……」
………ちょっと待て。今……**リアルの てん と和音の声がした?**
でも容姿は二人とは違う。
私の知る二人は、黒髪ポニーテールに、基本、各自の学校の体操服またはジャージ。
だけど、てんと思しき奴は、黒髪だけど低めの位置のツインテール。灰色の猫耳付きパーカー。そして、リアルより背が高い気がする。__いや決してリアルてんがチビって言いたい訳じゃなくて。うん。__
和音と思しき人は|白髪《はくはつ》を垂らし、横髪にシンプルなヘアピン。オシャレなお団子ヘアに黒リボンを結んでいて、白パーカー。そして月の飾りが付いたチョーカーをしている。
「え、|[自主規制]《てんの本名》? |[自主規制]《和音の本名》?」
「……なに|[自主規制]《えくれあの本名》……」
「……ん? なんで|[自主規制]《えくれあのあだ名》の声がするんだ……って、えええええええぇぇぇ!? ここ何ーー!??」
「うるさい……何和音ってえええええええ!? どこここぉぉおおおお!!?」
私の言葉に反応する二人。ということは……
|本人《てんと和音》だ。
「よぉくそぱ、じゃなくて、てん。和音。おはようございませんえくれあです。」
ん? 待てよ、相手がこの二人ならコミュ症発動しなくて良かったじゃん。
初対面どころか家族と親友だったし。
遠慮もしないで叫んで良かったじゃん。
「ってその髪と目どうしたん? あれ? てんはともかく、和音ってカラコンしてたの?(( 青目キレイだね((」
「んなわけねーだろぽまえ。ってゆーか、そんなこと言ったら、気付いてないかもだけど**ぽまえもだよ?**」
てんの言葉に、和音は うんうん とでも言いたげに頷く。
「……。」
3人で付近の水溜りを覗き込む。
私と目が合ったのは、黒目黒髪ポニーテールではなく黄土色のショートカット。エクレアのピン。
その姿はまるで……**私が思い描いていた、短編カフェの『えくれあ』のよう**。
「……薄々そんな気がしてたよ!!」
「え、誰だよこれ!! いやうちだけどさ!!」
「私、髪真っ白になってる……まだ学生なのに……!!()」
逆ギレ(?)と悲痛(?)な叫びが、森に響いた。