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揺れる命、繋ぐ思い(後編)
後編です
先に前編をお読みください。注意事項なども書いてありますのでよろしくお願い致します。
「…ねえ、百合、花火大会だってさ」
「行こうよ、百合」
河川敷に走った。
その時、空に、花が咲いた
百合、あなたはもういないってわかってるけど。
話しかけてしまうんだよね
そうやって話しかけてくれてるの、私いつも見てるよ。聞いてるよ。
でもこっちからは、何も伝えられないんだよ。
なんでだろう。
でも、思わず、話しかけてしまう。
「本当だ、」
そして、目の前に、咲良がいることに気づいた。
「……綺麗だね」
「本当だ。綺麗だね」
…なんでだろう。百合からの返事が、聞こえた気がする。
「…百合?そこにいるの?」
やだ、馬鹿みたい。あっちに聞こえているはずなどないし、そもそも百合は今ここにはもういない。
「いるよ」
「……え?」
百合、そこにいるの?どこにいるの、私あなたに会いたいんだ
「会えて嬉しいよ、咲良。
……でもまだだめだよ、咲良は、こっちにきちゃ、だめ」
「なんで」
「あなたには、まだ、沢山残ってるでしょ。いろんな、ものが。生きられなかった私の分まで、生きて。
__幸せに、なってね。」
百合は、儚い笑みで、涙を零しながら、言った。
意識がそこで途絶えた後
瞼を持ち上げたら。
「咲良さんが目を覚ましました!!!」
そんな声が、耳に飛び込んだ。
そうか、百合、私そっちに行きそうになってたんだね。
事故か病気か、そんなの知らないけど、
あなたがくれたこの命、繋ぎ続けるよ
咲良、熱中症で倒れるなんてさ、そんなどうでもいいことでこっち来ないでよね。あんまり早く来られたら、私怒るから。
私のこと忘れてもいい。あなたは、天寿をまっとうして、幸せになってから、こっちに来てね、咲良。
私は、いつまでも待てるから。焦らないで。
どうでもいいことで、こっちに来るのを早められたら、辛いからさ。
どうかその身に、幸せが訪れますように。
百合。
救ってくれたんだよね、私のこと。
ありがとう。
きっと、いつか幸せを手に入れてから、そっちにいくよ。
長く待たせることにはなりそうだけど、
あの邂逅のおかげで、生きるってこと、
少しわかった気がするよ。
河津桜の、花言葉は、「思いを託します」。
赤の百合の、花言葉は、「優しさ」。
あなたに、思いを託して。
優しいあなたから、受け取った思い、繋いでいく。