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”普通”じゃない俺と、”普通”の君、夕闇に包まれて。 #3 「こんな俺でも」
✡今回のあらすじ✡
ついに悠くんは、律輝くんに秘密を話す。
苦し紛れに紡がれる悠くんの言葉に、律輝くんは…?
お久しぶりです!!
リナリアさんに少しでも元気になってもらいたかった…でも今回は元気になるような
内容じゃない…
しかもあっちが受けなら慰めになったかもだけどあいにく俺が受けなんだよなぁ…
ごめんなさいリナリアさん…
今回で完結(の予定)です。
そういえば、この世界であんなことやこんなことしてたら既に性別のこと
バレてるはずですよね。
まぁ、まだやったことないって言う設定で…読んでくださいお願いします
あ、わかった設定追加しよう?
・お風呂は一緒には入らない!
・えっ、なことはしない!
「なぁ、悠」
頭上から響く、優しい声。
それだけでまた、涙がりつの服を濡らす。
「”話さないけんくなる”…別に話さんでもよかとよ?でも俺は…悠ん話が
聞きたか」
真っ直ぐそう言ってくれるりつが、どうしようもなく好きで。
でも、好きだから…好きだから、言いたくない。
嫌われたくない。
このままがいい。
「っ、や、ぁ」
「ん、わかっとーよ。やけん、話さんでもよか」
声が、体が、手が。全部が、あったかくて。
わかってる。りつなら何ともなく「それでも好き」って言ってくれるって。
でも…でも、
「な、ぁ」
「ん?」
「きらいに、ならんよな…?おれ、はなしても…はなれてかん、よな?」
「当たり前」
そう言ってふわ、と笑う。あぁ…俺が初めて見た笑顔と、おんなじだ。
りつなら、こいつなら…はなせる。
俺の中で、何かが動く音がした。
「あ、のな」
˖ ࣪⊹ ִ┈┈┈┈ ♰ ┈┈┈┈ ⊹ ִֶָ𓂅
「おれ…な、? 女やねん、」
震える声で、そう言う悠。
俺の思考は、一瞬だけフリーズした。
でも、すぐに無理矢理動かして、言葉を探す。
「ぁ、」
「や、っぱ…きもいよな、!わぁってるって、そんくらい…そん、くらい…っ」
涙でぐちゃぐちゃの顔が、どんどん下へ向いていく。
「ご、め…おれ、もう」
やんわりと俺の体に手を突き付けてきた。
これは、今の弱っている悠にとっての…精一杯の拒絶なのだろう。
「悠」
もう一度自分の方に悠を引き寄せながら、俺は出来るだけ、優しく声を出した。
震えている声がバレないように、必死に。
「俺って…そげん信用されとらんかった?」
わかってる。悠はいつも、俺のこと信用してくれてるって。
でも…そんな人生の変わるような悩みを、話して貰えなかったことが…
素直に悲しかった。
「は、ちがっ…」
「悠は…!ゆう、は」
それから先、言葉を続けることができなかった。
否定しても、肯定しても、何を言っても…今の悠には。
なんだか俺の視界まで滲んでくる。
何も出来ない。
勇気を振り絞って、ずっと悩んできたことを今、話してくれた。
なのに…俺は彼氏として、向き合わなきゃいけないのに。
正直、女の子だっていう事実にはあまり驚いていない。
まぁ、そりゃあちょっとはびっくりした自分もいるはず。
でも…気持ちは、変わってない。
俺は悠が、好きだ。
「っ…もう、いいって」
「ぇ、」
「むりに返さんでいい、おれはもう、りつの彼氏やめる」
「そ、れは…っ」
「もうあかんねんっ…!これ以上、偽って生きていくんとか、嫌や…」
やから…と、それ以上は声が聞こえなかった。
「悠」
悠から言葉が出ないなら、まずは俺から話せばいい。
「偽っとったとしても、どんな悠やったとしても…
俺は、悠んこと好きっ…」
こんな俺じゃ、励ましにも、慰めにもならない。
でも…俺の言葉で、少しでも悠の心が動けば。
もしかしたら…なんて、淡い希望を抱いてしまった。
「やから、そげんこと言わんで…?どんだけ辛くても、しんどくても…
俺が絶対、幸せにするけん…っ、」
気づけば俺も、バカみたいに泣いてて。
あぁ…俺ってこんなに弱い人間だったんだ、って思った。
ぱっと吐いた言葉だったけど、本当に、俺が幸せにしたい。
正直、俺以外に幸せにさせる権利は渡さない。
俺が絶対に、悠の全部を愛すって誓うから。
だから……っ
✡
「偽っとったとしても、どんな悠やったとしても…
俺は、悠んこと好きっ…」
聞こえる声に、涙を止めようとする思考が消え去った。というか、消された。
思ってたんだよ、最初から。
どうせ幻滅されて、嫌われて、軽蔑されるまでがセットなんだって。
だって今までもそうだった。
好きになった人は全員離れていって。
もう人なんて好きになるかよって、覚悟を決めて一人暮らしに挑んだのに。
初日から好きな人が出来て、告白されて、付き合って。
こんなん、俺バカみたいやん…って。
でも、付き合う中で気づいた。
こいつは、幻滅しないんじゃないかって。
好きでいてくれるんじゃないか…って。
すぐ消えると思った、そんな甘えた考え。
消えなかったんだ。だってずっと、好きだったから。
ネガティブなこと考えさせてくれないくらい、愛してくれたから。
これはいつもの自意識過剰じゃない、本当に。
「やから、そげんこと言わんで…?どんだけ辛くても、しんどくても…
俺が絶対、幸せにするけん…っ、」
声が震えてる…あのりつが。あのりつが、泣いてる。
いつだって、泣くことだけはしてこなかった。
ずっと”俺が攻め”って言い続けて、俺はずっと下にいた。
メンタル面でも、立場でも。
また涙が溢れて、話せるわけがなくて。
でも、これだけは伝えようって、乾いた口を開く。
「…おれ、初めてやってん、こんな愛されたの…
やからな、?嬉しかったんや、ずっと…出会った時から、」
「…うん、」
静かに話を聞いてくれるりつが、やっぱり好きで。
「こんなおれでも、いい…?」
ずっと聞きたかったんだ、これだけが。
不安だった、かっこよくて、なんでも出来て、挙句の果てに資格なんて
取ろうとして。
皆に必要とされそうなりつの隣に、俺なんていていいのかなって。
「っ…当たり、前」
俺から離れて、最初の笑顔で言う。
それにつられて、俺も昼ぶりに笑う。
俺、生きててよかったなぁ…
なんて思った自分に、思わずびびる。
そんなこと思ったこと無かった…ふっ、これも…りつのおかげやな。
「りつ」
「ん?」
「好きやで」
「俺は愛しとーよ」
「ふは…りつっぽいな、笑」
✡
エセ博多弁ですまん。
あと別にリナリアさんを弱い人間だとか思ってるわけじゃないんですよ
ただただ俺の性癖に刺さればいいなと思った結果がどっちもメンタル弱めな
タイプだったんですよぉ…ごめんねりつゆう;;
まって…これ題名「こんな俺でも」じゃん
え、書き終わって気づいた…「こんなおれでも、いい…?」って
え、俺天才?そういう才能?え、これまじで狙ったとかじゃない。
まじで。え、ほんとに。まじで。奇跡。信じろバカ(いきなり口悪。さーせん。)
夕闇シリーズ、最後まで読んでくれてありがとう!
これにて幕を閉じさせていただきます…!
大してすごくもないのに時間かかってしまった…
さっき見返したんですが、想像力豊かですね~前の俺!
楽しかった!りつくんかっこいい!