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もう一つの降誕祭
学生時代です!
https://tanpen.net/novel/af49721b-546a-4d36-9732-3f6929518a57/
こちらの話の、中也が思い出そうとしていた學園エピソードです!
是非、どちらもご一読ください。
中也side.
今日は降誕祭前日。終業式があった。
太宰は部活に入っていないから、今日を逃せば次に会えるのは年が明けてから。
降誕祭なんてとっくに終わってしまう。だから、それまでに太宰と…
何で太宰の事ばっか考えてんだ、俺。
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兎にも角にも、俺は太宰を待っていた。
幸い、今日は部活も無いし、生徒会も無いと敦に聞いた。
お互い一人暮らしだし、帰りが遅くなっても問題はないはず。だから、二人で見たい物がある。
そう言おうと思ってた。
「中也〜?どうしたの、こんな所で。」
「っ太宰!?手前ェ、何時からいたっ?」
「ん〜と、中也が此処に来た頃かな?」
「ずっとじゃねぇか(キレる気力失せた)…
じゃあ、何で今まで話しかけて来なかった?」
「…二人だけがよかったから。」
「…はっ?」
「それに、中也は僕に話があるんじゃないの?」
「…ああ、そうだ。
太宰、今日一緒に行きたい所がある。」
「何処?」
「…まだ言わないでおく。19時に、学校の門集合な。」
「…分かった。行こうと思ったら行く。」
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約束の2分前。まだ姿が見えねえ。 1分前。あと30秒。あと、10…、5、4、3、2、1。
来なかった。諦めて、一人で向かおうと体の向きを変えた。
「やっほ〜、中也。」
後ろからかかった声に、弾かれるように振り向く。
「置いてかないでよ〜、そっちから誘ったくせに。」
「ほんとに、来た…?」
「中也を揶揄うチャンスだしね。」
「…置いてくぞ。」
安心して少し潤んだ目を隠すため、慌てて背を向けた。
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「…で、此処?」
「ああ、これが見たくて。」
二人で、ヨコハマでは有名なイルミネーションを見に来た。
「…あっ…、中也、此処って…、」
「何かあったか?」
「否、なんでもない。」
「なあ太宰、此処の噂知ってるか?」
「噂?」
「想い人と訪れ、その想いを相手に打ち明けし時。」
「…魔法にかけられたかのように、イルミネーションの星が降る。
その光に包まれた二人は静寂の中、結ばれる…。」
「知ってたのかよ。」
「聞いたことある程度だけど。」
「なら、話は早いな。
…太宰。好き「待って。」」
「その先は、中也から聞くわけにはいかない…。」
まだ言い切れてないのに、振られた。
「…だよな。ごめん、」
「何か勘違いしてない?」
「え、」
「こういうのは、先に意識した方が言う物でしょ?
中也、好きです。僕に愛されてくれない?」
「っえ、だざ、」
気付かぬ内に、涙声になっていた。
「中也。ちゃんと聞かせて。
僕に愛されてくれませんか?」
彼奴の瞳は少し潤んで輝いていた。
ここだけが光に包まれたかのように、静寂が二人の間をよぎる。
「こっちこそ、こんな奴を愛してくれるか?」
「中也じゃなかったら愛せないよ。」
今まで見てきた中で一番優しく、嬉しさが隠しきれていない笑顔。
俺の頬を濡らした涙を綺麗な指でそっと拭って、愛おしさを滲ませる。
もどかしくなって、思わず太宰の顔を引き寄せる。そのまま、唇を奪った。
丁度、魔法が解ける時間。時を告げる鐘の音が、遠くで鳴った気がした。
「…ねえ、中也。僕のファーストキス、君にあげちゃった。」
「それは俺もだ。」
「初めてにしてはうまくない?」
「き、キスに上手いも下手もあるか!」
「じゃ、確かめる。」
太宰が少し屈み、今度は彼奴からのキス。
「我ながら恥ずっ…」
…我ながらって何だ?
「中也。僕達は、その、」
「付き合ってる以外の何者だ?」
「だよね。良かった…」
「…っくし!」
「そろそろ帰ろっか。」
「…ああ。」
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降誕祭の魔法にかけられて、やっと結ばれた赤い糸。
もう決して解けないように、思い出という結び目を重ね合わせている二人の原点。