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美莉花と聡一の海
リクエストありがとちゃーん!
「どうやって千葉から海に行くの。てか、どこの海行くわけ?」
私は駅に着いて聡一に聞いた。
「分かんない。何も決めてない。」
「バカか、あんたは。」
聡一と二人で立ち尽くしていた。
私は引きこもり(遊びに行く人がいないのよ。バカにしないでね)なので、どこに何の海があるのか特にわからなかった。
「じゃあデ○ズニー行こう。」
「すぐ金無くなるからやだ。」
マジでこいつ何も考えてない。
私は聡一の頭をゲンコツしました。
とりあえず私はスマホで調べて一番近い海、|稲毛海浜公園《いなげかいひんこうえん》(読みづらいのでこれからいなげ、と呼ぶことにしますね)に行くことにしました。
「てかガチで暑い。水買おう。」
私たちは水を買って、切符を買いました。
JR総武線快速で市川駅から稲毛駅まで。
7時電車でも人は何気にいます。
家族連れの人もいる中、
高校生と中学生(しかもおチビ…笑)が二人並んでる姿はよく分かりません。
しかも、いとこでもなんでもなく、普通に友達。
てかなんで私制服で来たんだろ。
そもそも私服がいつもジャージとかだからな。
癖で着てしまう。
まあ、私服ダサいからいいんだけど。
「美莉花。」
は!?何?
あ、聡一か。
急に名前で呼ばれるとビビるな。
「どした?」
「席、空いてる。座れば?」
聡一は新聞をこの世の終わりのような顔で睨めっこするおじさんとイヤホンして寝落ちしてる緑色の髪(細かく言えばピスタチオ色)のお姉さんの間にできた空席を指差しました。
「いいよ、聡一座りな。」
聡一優しいな〜。
聡一は座ったあとすぐに寝てしまった。
私も吊り革を握ったまま寝てしまいそうでした。
ガタンゴトンと一生鳴り止まない電車の揺れる音にぬくい電車の中。
あー、なんかウトウトしてきた。
立ったまま私はうっとりして少し寝た。
…と思ったら何気にすぐ着いてしまった。
「おい、聡一。起きろ〜。」
聡一はビクッとして起きた。
何驚いてんだこいつ。
聡一は不機嫌そうな顔をして歩きました。
「えー…と、稲毛駅1番のりば?に行くらしいよ。」
私たちは稲毛駅のバス停に向かった。
「多分時間かかると思うから、荷物持ってあげる。」
私は聡一の荷物を持った。
「ありがと。」
「どーいたしまして。」
私と聡一はただバスを待った。
「美莉花ー?」
「何?」
聡一は暑いのかぼーっとしながら言った。
「美莉花の親とか、友達とか、いいの?心配しないの?」
私はよーく考えてみた。
たしかに、警察に通報されるかもしれん。
聡一のバカ親は多分バカだから気づかないだろうけど、
私の親はゆるいけどさすがにこれはまずいかも。
でも、電話とか一通も来てないからな。
あと勇樹。
勇樹はあいつメンヘラじみてるから、
既読つけないとめっちゃ電話してきます。(一回通知切ったら30件も電話きてた。何事かと思ってメール開いたら宿題が分からないってメールだった)
「うーん、やばいかも。」
「バカじゃん。なんでついてきたの。」
ムカついたので私は聡一のお尻を叩きました。
「バカって何よ、一人じゃなーんもできないくせに。」
私は聡一の頭を掴んでグリグリしました。
「あと、ついてきたのは…。」
私はなんだか言えなかった。
聡一が好きだから、とか、心配だったから。
そんなこと言ったら、このガキは調子に乗るでしょう。
「分かんない。遊びに行きたかった…から?」
私はアハと笑った。
「俺の家出を遊びに行くと思ってたのかよ。」
聡一は呆れて言いました。
でも私がいなきゃ、どこに行くか決められなかったでしょ。
聡一のバカ、アホ、ドジ、間抜け、おたんこなす、かぼちゃ。(おたんこなすとかぼちゃはどこが悪口なの?なすとかぼちゃ可哀想)
とりあえずバスが来たので私たちは乗りました。
千葉海浜交通 高浜線【こじま公園経由]…長いです。読めませんし。
まあこのバスに乗って高浜南団地まで行きます。
聡一はまた寝てしまいました。
聡一の寝顔は子猫が寝ているように可愛いです。
私は周りの人のことを考えました。
私のダメ親父はきっと大丈夫だ大丈夫だと、
ゲラゲラ酒を煽りながら言うでしょう。
お父様とは呼びません。立派なお父さんではないから。
パパとは呼びません。パパと呼ばれる筋合いはないから。
親父なんて言葉使いたくないけど、
友達に紹介する時はいつも「ダメ親父」と言っています。
ダメ親父は何やっても失敗ばかりで、
無職で借金ばかりしています。(借金は自分のお母さん、いわば私のお祖母様に返済させました。どこまでダメなの)
お酒ばかり飲んでおつまみを食べながらテレビを一日中垂れ流してるジジイです。
お母さんが温厚で、寛大な人でなければ、
すぐに離婚に発展するでしょう。
私のお母さんは本当に頑張っています。
そんなダメ親父とバカ娘を養っている、
そんな母親を尊敬しています。(きっと作文にしたら花丸をもらえますね)
きっと母親はダメ親父に丸め込まれて、
多分大丈夫だとねじ伏せられてしまうでしょう。
ダメ親父には人一倍優しい母なので。
試しに電源を切っていたスマホを開いてみました。
つけると、親からのメールと着信はゼロ。
やっぱりダメ親父と甘母親だ。
勇樹からはメールが三件きてる。
既読をつけずにそーっと見た。
なーんだ、ゲームの招待かよ。
私はそっとスマホを閉じました。
さあ、ダメ親父と甘母親の話をしていたらすぐつきました。(行き方を丁寧に書いたから、行ってみてね)
聡一はすでに起きていて楽しみなのかそわそわしてました。
お金を払って降りました。
「なんかしょっぱい匂いがする!」
聡一はバスから降りるとそう叫びました。
「海だもん。潮の匂いでしょ。」
私たちは家族連れがたくさんいる人たちについていけば海にたどり着けるという寸法で、
家族連れに紛れて歩きました。
「うわぁー!海だ!」
「声でかいよバカ。」
聡一のテンションはいつもとは全く違います。
笑顔に満ち溢れてます。
私は海に着いても、ダメ親父と甘母のことを考えていました。
起きてないだけかもしれない。
起きて私がいなかったら、きっと私を心配するよね。
「美莉花…?どうしたの?」
聡一が私の顔を覗き込みました。
「あ、えーと、考え事してた。ごめん。」
「周りが心配なら帰っていいよ。」
聡一は声を低くして言いました。
私は慌てて聡一に言いました。
「ううん、大丈夫。」
私は聡一と一緒に裸足で砂浜を歩きました。
暑いです。とっても。
私は潔癖症なところがあるので、指の間に砂が入るのがとても気持ち悪いです。
海まで来ました。
私は水面に足をつけました。
生ぬるい…なんか表現が違うな。
表面は温かいけど、中は冷たい…それが生ぬるいなのか?
分かんないけど、とりあえず気持ちいいということだけは伝えます。
「聡一ー。」
聡一は振り返りました。
私は砂を思い切り投げました。
聡一は砂だらけです。
聡一は不機嫌な顔をしました。
あははあははと聡一で笑い合いました。
「おい!」
後ろから誰かに怒鳴られました。
見ると私につま先が向いている、顔を真っ赤にしたおじさんがいました。
鼻息が荒く、汗ばんでいて臭いです。
「何ですか。」
「うるっさいんだよお前ら!寝てるのに!太陽の光を遮るな!」
なんか、あん時の聡一に似てる。
態度悪い聡一。
なんかイライラしてきた。
聡一を見ると眉間にシワを寄せています。
おじさんもシワができています。
すると、聡一が私の前に出ました。
「うるせえよジジイ。別の場所で寝りゃいいだろうが。お前みたいな老害ゴミムシは海くんな。」
え、え、聡一?
そんなことしたらこのゴミムシ…ふふ。
このおじさんが怒りますよ。
老害なんて言葉どこで覚えたんですか。
一丁前に人を貶す言葉ばかり覚えちゃってね。
「そうだよしわくちゃ。家で新聞でも読んでろ。」
私も聡一と同じように言いました。
あん時の聡一が涙ぐんだ時の声で。
老害ゴミムシは黙り込んで、
レジャーシートを持ってどこかに行ってしまいました。
論破されてしまったみたいですね。
聡一と向かい合って大笑いしました。
そんなこともあって、20時になってしまいました。
夜の街並みは蒸し暑くて蒸し暑くて、
汗が服に滲んで気色悪いです。
スマホの電源を入れ直すと、
たくさん親から電話が入っていました。
「聡一、私ちょっと電話してくる。」
「親?」
「そう。そこで待ってて。」
私は聡一から離れて、何件も入っていた中で一番新しい留守電を聞いてみました。
お母さんの声です。
『美莉花、今あんたどこにいるのよ。連絡もなしに出ていくなんて。もう19時ですよ。早く帰ってきなさい。家に帰ったら説教ですよ。でもちゃんと帰ってきなさい。お父さんに代わるわね。』
ダメ親父?
ダメ親父とはあまり話したことがないけど。
『美莉花。お前がなんで出ていったか分からないけど、早く帰ってこい。あったかい飯も風呂も布団もある。俺たちは美莉花に尽くしてる。だから帰ってこ』
ここで、電話は切れてしまいました。
変なところで切れてる。
ダメ親父らしいや。
でも、その電話が愛おしいです。
説教は嫌だけど、私は帰ることにしました。
「聡一、私の親がバカ心配してるから、帰るけど、聡一はどうする?」
聡一は黙りました。
「俺も帰る。」
私たちはバス停に向かって歩き出しました。
自由って最高だけど、
縛られてるのも、案外悪くないかもね。
じゃー、帰ろっか。
リクエストガチありがとう!
これから低浮上になります!
だいたい夏休みいっぱいは休みます!
それでは!