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6.乗馬
「馬か?ちなみに今までに乗ったことは?」
「無いです。」
「では運動能力は?」
「普通です。」
「よし、わかった。7日で乗れるようにしてやろう。」
「いいんですか!?」
響は焦った。
(ちょっと待って。7日?遅くない?いや、乗馬できるようになるなら、もっと本来はかかるものなのか?だったら早いうちに入るけど…)
「これは無給で教えてやろう。ただし、そのあとに、遠くにお使いに行かせる仕事を行うことが対価じゃ。どうする?」
「やります!」
早く両親のもとへ行きたい。響はその思いで頑張った。
ああ、今頃どうなっているのかな?申し訳ないよ……。
「いいか、まずは馬に信頼してもらえ。これに一日かけろ。」
「はい?」
かくして、村長宅での生活が始まった。正直言って、乗馬の訓練以外も、日常生活はきついことが多い。トイレなんて……今では絶対に見ることはないであろうぼっとん便所だったのだ。響はその中で、精神的苦痛にも耐えながら……例えば、ベッドがふかふかじゃないとか、飯がまずいとか、その他もろもろもあったが、頑張った。
2日目には馬に乗せてもらえるようになり。
3日目にはひもで引かれなくても乗れるようになり。
4日目は3日目とおなじことを行い。
5日目は馬に乗って飛んだ。
6日目は、スピードを出すことを覚えさせられた。
そして、今日が7日目だ。
正直、筋肉痛がひどい。今まで、こんなに真面目に運動してこなかったから。その分が、今回にやってきている。
だけど、響は諦めなかった。
今日の内容は、1日、遠出して戻ってくるというものだった。
もちろん、護身術もあの過密なスケジュールの合間に習った。だが、簡単な魔物なら逃げればいいわけだし、そんなに必要はないと考えていた。
(よし、今日がチャンスだ!この山を回って、家まで戻って生存を伝えよう。)
その思いで響は旅立った。
お弁当は質素なものだけどもらった。条件としては、日が沈むまでに戻ってくること。
大体今は午前8時かな。この前の時に自信を無くしてしまったが、今でもある程度は当てることができるだろう。時計が置いていないのは、それもまた昔の生活に当てはめるためだろうと響は考えていた。響の頭の中から「魔物の存在」は何の疑問のないものとして受け入れられていた……。
響は、まず、山を越えず、遠回りすることを考えた。歩いて8時間のところは迂回しても速さが上がっている分、行き帰りには十分だろう、それが響の予測だった。
響は、1時になったらとりあえず引き返そう。そう思っていた。
ぱっかぱっか、ぱっかぱっか。
馬で軽快に駆けていく。
7日で乗れるよういなったのはもちろん響に素質があったからではない、村長の教えが厳しかったからだ。
だけど、実力はついていた。
そう、県によっては一番になれるかもしれない、というところくらいには。ただ、これでも村長は満足していなかったのだから、この村は、なんとレベルが高いことであろう。
(あれ?)
馬で駆けること3時間。響はおかしさを感じていた。いつまでたっても、曲線があらわれないのだ。
(もしかしてこの山って遠回りできないの?それとも反時計回りで行くべきだった?)
響は戸惑う。響の記憶にある山は、そんなに大きいようには見えなかったからだ。
「あ!」
集落を見つけた。
「え?」
だけど、喜んだのもつかの間、響はさらに戸惑うことになった。
(なんで、この村も、コンクリートがないの?)
思い返してみれば、今通ってきた道も舗装されていたわけではない。さらに、見たことがない動物もいたかもしれない。
ただ、響は昔の真似をしているのは一つの村だと思っていた。だから、戸惑ってしまったのだった。この村も、さっきの村と同様に古臭いことに。