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第3人生ー1
「大翔!見て見て!永遠が目を開けたわ!」
その声で、我に返った。
「本当だ!永遠おはよう~、パパだよ~」
既視感のある会話。16年前には天国と勘違いした場所。
まただ。また人生のやり直しだ。
……またやり直せる?
なれなかった教師になれる?
そうだ、これはチャンスだ。叶えたい教師の夢を叶えるための。
僕は3度目の人生を歩み始めた。
そこで気を付けたことがある。できるだけ2度目と同じ人生になるよう過ごしたことだ。僕の選択1つで人生が変わるなら、前回と同じ選択をすれば、お父さんの転勤が起こる。
そして、本来お父さんが転勤するはずだった県にも、教育大学の附属学校があったのだ。前回死んでしまったあの高校に入らずとも、教師への近道は開かれていた。
だから言い換えた。あの学校に入りたい、ではなく、教師になりたい、に。
小学6年生。遂にその時が来た。
「永遠、お父さん、4月から××県に転勤することになったんだ」
僕の読みは当たっていた。お父さんが言ったそこはまさに、教育大学のある県だった。
「学校の先生になりたいって言ってただろう?転勤先は附属中学校の近くなんだ」
「……うん。僕、そこに行くよ」
夢見た未来への前進。
今度のやり直しは、変われるような気がしていた。
人生3度目という異常なハンデをもらっているので、受験は少し簡単だった。
結果は、合格。全体1位を叩き出した。
3度目なんだから、きっとうまく行く。
説明会で、どうやらここは2度目のときの学校よりかなり偏差値が高いところらしいと知った。
もしこのまま何回か人生をやり直す破目になったら、とんでもない天才になってしまうのかもしれない。……いや、さすがに限界あるよな。
馬鹿馬鹿しい想像をしながら、荷造りを解いて中学校の荷物をまとめた。
診てもらった元いた県の病院でもらった、なんとも微妙にダサいカバのシールが余っていたので、とりあえず目印に貼っておいた。
入学から2週間が経った頃。
「あれ?」
通学鞄を漁る。やった宿題のノートが見つからない。
おかしいな、今朝ちゃんと入れたはずなのに……。
忘れたのかな。正直に先生に言いに行こう。
階段を下りて職員室に向かう途中、男子生徒とすれ違った。
……カバ?
「ちょっと!」
男子生徒を止めた。その手には、
「そのノート、僕のだよね?」
ダサいカバのシールが貼ってあるノートがあった。
彼は「あ、ごめんごめん間違えた~!」とノートを投げた。
「ちょ、投げないでよ!」
呼び止めるのも虚しく、彼は走って逃げてしまった。
なんなんだ、あいつ……。
それからというもの、そいつ(どうやら名前は|阿川《あがわ》というらしい)は度々僕の持ち物を「間違えて」持っていくようになった。
2度目よりかはメンタルに来ないやり口で、ただただ嫌なやつ止まり。
けど、本当に阿川は同じようなものを持ってるから、勘違いだったらと考えると、どうも怒れない。
阿川の地味な嫌がらせは、高校に入学し、受験期に入っても続いた。
だいこん様のアイデアです。
ちなみに「阿川」という苗字は、参加資料の「(以下A)」から、Aをイニシャルにしてみました。
夏休み明け、
「おかしいな、今朝ちゃんと入れたはずなのに」
で、
夏休みの宿題を全部やったのに全部家に忘れた苦い思い出。
大人しく知らん顔して言わずに帰りました。永遠くんはいい子です。