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君と歩んだこの日々を。♯4
教室に入ると、「えっ男?」「仲良くなれるかな?」
いろんな囁きが耳に入ってくる。
「名前、お願い」
担任に小声で唆され、最大限の声がでるように努力して
「霧瀬、花衣、です。よろしくお願いします。」
と、なんとか言い終わった。それでも一部には聞こえていなかったようで、後ろらへんの生徒は小首を傾げている。
__ただひとり、目を見開いて身を乗り出している少女がいた。
驚いていたようにみえたが、すぐに何もなかったように椅子に座り直してしまった。
担任が
「君の席はあそこね」
と、一番後ろの窓際の席を指さした。
俺が席につくと、ホームルームが始まった。
そして何故か一時間目はクラスメートの自己紹介と決まってしまった。
俺には必要なかった。
仲良くする気は端から無い。
まぁ、聞いておいて損はないだろうからとりあえず聞いておく。
「七宮樺恋。よろしく。」
そして、さっきの彼女の番がきた。
「七瀬葉乃です。よろしくね!」
七瀬、葉乃?聞いたことあるような気がする…
でも、思い出せない。
というか、思い出すのを、|やめた。《・ ・ ・ 》
何か開けてはいけない箱をこじ開けているような気が、花衣にはしたのだ。
「乃幹寿莉。よろしくね」「水野…」
そして、全員の自己紹介が終わった。一限目はそれだけで終わり、放課になった。
「ねぇっ!」
席にポツンと座っていると、肩を押して不意に話しかけられた。
「な、なな、なん、ですか?」
ギギギギギと首を後ろに向けると例の少女、葉乃がセミロングの髪を靡かせて立っていた。