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おいてきぼり? - 居残り林間学校 1-(5話)
未明からの会話 - ミチの事故の事2 - (4話)の続きです。
|「《Hk》でも
そろそろ戻らないとね
私達
今日は
自分達の時代に戻らないといけないから
というか
さっきから
サキブ先生が
早く帰ってこいと
呼んでいるわね
根っとわーく で」
|「《sN》だな
時間ギリギリってとこか」
シンラツと僕は立ち上がると
ヒカリと一緒に
大きな岩の
ちょうど人が入れるくらいの割れ目へ
向かう
中に入ると
自動に発光するアイボリーの壁の通路
少し進むと小型のモノレールが
止まっている
モノレールに乗り込むと
すぐに発車
まるで待っていたタクシーのよう
車内放送もなにもない
ずっと地下なので
はっきりとはわからないが
急勾配を下っているよう
|「《Hk》私達は
急いで帰らないといけないけど
トデボ君は未来に居残りね
未来の良いところを
いっぱい経験してきてね」
|「《sN》そうですね
未来の生活を知れば
私達の時代の常識が
いかにダメダメか
わかりますよ」
未明からの会話で興奮気味だった
シンラツの口調も
落ち着いている
あまりにもいろいろなことが
急にありすぎて
なにから整理してよいかわからなかったが
今はなにも考えないで
車窓に交互に流れる岩肌と
アイボリーの壁を
ぼぉっと眺めている
小型のモノレールは
したいに速度を落とし
停車すると
ゆっくりと地下の床に向かって
降下する
|「《Hk》さて
降りましょうか
皆と合流して
乗り換えないとね」
ヒカリ
シンラツ
に続いて降りた僕を
最初に待ち受けていたのは
サチ
いきなり僕に飛びつくと
僕の身体をよじ登って
おんぶ体勢に収まる
|「《sc》よかった
うちがうちらの時代に帰る前に
もう
会えんかと
思うたわ」
|「《tD》そっか
ごめん
ごめん」
|「《Sg》さあ皆さん
あちらのモノレールに乗るのですよ
もう
あまり
時間がないのですのよ
トリディボウ君も
話はモノレールの中で
いたしますですのよ」
地下の広場の反対側に
高所の軌道から
車体だけ降下した
先ほどより大きなモノレールが
止まっている
この時代に来て
最初に乗ったモノレールと
同じタイプのようだ
そのモノレールに向かって
サチをおぶったまま歩く
耳元でサチが囁く
|「《sc》ヒカリちゃん
素敵な|女子《ひと》やろ」
|「《tD》 … 」
|「《sc》でもな
あと数年待ってみな
うちも身長も伸びて
もっと魅力的になるで」
皆がモノレールに乗り込むと
モノレールは軌道の直下まで上昇し
動き始める
ほどなく地上に出て
森の中を走る
|「《Sg》さて
トリディボウ君
私達と別れたら
ツナグさんか
カタリ君が
あちらから会いに来てくれますから
しばらく待っているのですのよ
ツナグさん達からは
根っとわーくで
トリディボウ君のいる場所がわかるので
心配はないのですのよ
すぐに合流できなかった場あ
|「《tdm》キャァー!! |」《Sg》
小鹿さん
頑張って逃げて|」《tdm》
森の中を
人間の全速力の駆け足くらいの速度で走る
モノレールの車窓から見えるのは
野犬のような動物の群れに追いかけられる
鹿の群れ
|「《akm》でもヤケカミ達も痩せている
もうぐったりして走れなくなった
子供もいるし」
|「《mZ》ヤケカミは
野生化した犬たちです
過去に地球上の多くの地域で
人間は狼を絶滅させてしまいました
そのため草食動物達が無制限に増え
多くの植物種も絶滅の危機となりました
私達の文明が壊滅した後
このように人間が乱した
生態系のバラスを
もとに戻してくれたのが
飼い主たちの亡き後の
犬たちです
犬たちは人間に寄り添いながらも
人間の多くが死に絶えた後に
生態系のバランスを保つ
役割を持っていたのです」
|「《tdm》鹿さんがんばれ」
|「《akm》ヤケカミもがんばれ」
|「《tdm》ダメ
ヤケカミはがんばっちゃ」
|「《akm》じゃあ
ヤケカミのお腹をすかせた子はどうなるの」
|「《tdm》しらない
そんなこといったて」
|「《akm》じゃあ
どうしたらいいの」
|「《tdm》シクシク」
|「《akm》シクシク」
|「《tdm》エーン」
|「《akm》エーン」
|「《tdm+akm》(T_T)(T_T)」
座席のない窓際で
立って外を見ていた
トドマとアカマの所へ
僕の前に立っていた
サギブは慌てて向かう
サギブは
二人の後ろで
立ち膝になると
右腕でトドマ
左腕でアカマを
抱える
|「《Sg》トドマもアカマも
優しいですのね
アカマの思っていることも
トドマの思っていることも
正しいですのよ
どちらの気持ちも
大切にしておくですのよ」
サギブは
トドマとアカマを
抱えたまま
じっとしている
僕の隣の
サチと反対側に座っていた
ノテオが
僕を指先で2回つつく
|「《nt》無理に言葉で考えなくてもいい
言葉で表現できなくてもいい
身体の隅々から生まれる
いろいろな感覚を
大切にして」
ノテオの言葉が終わる前に
モノレールは減速を始め
ゆっくりと空中で停止する
|「《Sg》ほらほら
熊さんがいるよ」
|「《akm》ホントだ!
小熊もいる
親子だね」
|「《tdm》かわいぃ~」
トドマとアカマの機嫌も
すっかり直っている
熊の親子が
木々の向こうへ見えなくなると
モノレールは
また動き出す
それから少し走ると
また停車
今度は
地面に向かって降下する
降下も止まると
扉が開く
|「《Sg》さあ皆さん
降りるのですのよ」
サギブは立ち上がり
右手でトドマ
左手でアカマと
手を繋いでいる
降りたところは
森の中
道は不明瞭だが
下草がほとんどなく
シダが点在しているだけで
どこでも歩ける
所々に
可憐な花々も咲いている
僕達は
サギブとトドマとアカマに続いて
少し歩く
いつのまにか
すぐ隣を歩いていた
ヒカリが止まったので
僕も止まる
|「《Hk》私達は先に帰るけど
トリディボウ君も未来から帰ったら
音楽手伝ってね
作曲とかもするんでしょ」
|「《tD》いや
でも
お役に立てる自信
全く無いです
… 」
|「《Hk》いいのいいの
トリディボウ君の
感じるままにやってくれたら
じゃあね」
僕におんぶされていたサチも
飛び降りる
|「《sc》ほなね
帰ったら
インオサの選挙運動も
頼んだで」
|「《tD》いや
でも
それも
… 」
ヒカリとサチは小走りで
さらに少し先へ進んでいた
サギブ達の近くへ行くと
サギブと子供達は
輪になって手を繋ぐ
|「《Sg》そうですのよ!!
トリディボウ君に
まだ説明終わってなかったですのよ」
|「《nt》大丈夫
僕が全部説明した」
|「《Sg》そうd
ノテオが軽くジャンプすると
ノテオから連鎖するように
皆の姿が消えて行った
|」《Sg》
皆の姿が消えると同時に
僕の思考も全て消えてしまった
突然になにも考えられなくなった
あるのは森だけ
下草の少ない成熟した森
大型哺乳類が自由に歩き回れる森
視野の片隅で
モノレールがレール下へと上昇し
どこかへと走り去っていったが
それを視野の中心で
追おうとも思わない
(つづく)
つづきは11月3日投稿予定です。