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5.捜索
なんか検索欄にならない設定になってました(
--- ♢ No side ♢ ---
現在時刻五時五十六分。集合時間である六時まであと少しだ。入り口にはシェリアとアレルが揃い、オスカーはまだ集合していなかった。
「殺人って遺体が発見されないと立証されないらしいですね。」
「怖いなどうしたの急に」
「いや、チーム分けに腹が立ってきて。」
「なんで?」
「いや、おかしくないですか?なんでレルヴィさんとシェリアさんペアなんですか?」
「だって知り合いだし。てか仲間だし。」
「なのに私はあんま話した事ないオスカーさんとペア!!私何話せばいいんですか!?」
「それオスカーくんが聞いてたら君気まずくなって死んでるよ?」
「大丈夫です、オスカーさんはさっきキッチンにいましたから。」
「確認してから話さないでよ。」
何かと騒ぎながら、気付けば六時。オスカーがリビングから出てきて靴を履きにきた。
「‥どうかしたのか?」
「いえ何にも!!」
「怪しいな‥」
怪しいと言う目を向けられながらアレルは思った。「あれ、私今からこの人と妹さんを探すんだよね‥?」と。
♢
彼らは依頼主の家と妹が最後に出掛けると言っていた場所との中心、十字路にいた。
「じゃ、僕とレルヴィは依頼主の家がある東の路地を。オスカーくんとアレルくんは妹さんが出掛けて行った西の路地をお願い!」
「わかった。」
「了解です。‥ところで、レルヴィさんはどちらに?」
「もう集合場所にいるよ〜!だって彼女、人に見つかったら終わりだし。」
「確かに‥そうですね。」
「‥行くぞアレル。目指すは早期解決だ。」
「あ、はい!」
二人一組で行動を開始した。だが寝不足のせいだろうか、シェリアはある事を見逃していた。
アレルとオスカーコンビがヴィスを見つけたとして、オスカーは戦闘向きな能力ではないことを。アレルが能力を使うにはかなりの量の血が必要であることを。依頼主と出掛けた場所はかなりの距離がある事を。
その事を、考えていなかった。
♢
--- ♢ Aller side ♢ ---
「ん〜っと‥この先にある公園に出掛けると言っていたのが最後なんですよね‥」
「‥申し訳ないが、私はその依頼内容を詳しく聞いていない。一から話してもらってもいいか?」
「あ、はい!‥えっと、まず“ライアン”さんという方が妹さんの捜索依頼をしにきたんです。二日前に妹さんが『あの公園に遊びに行く』と言ったっきり帰ってこないみたいで‥一応探したけど公園にもいないから何処に行ったのかわからなくて心配だ、と言う内容でした。」
「成程‥ところで、あの公園とはなんだ?」
「あ、数年前に人が寄り付かなくなって古びてしまった公園のことです。あっちに住宅街が出来てしまったので、そっちの公園に人が集まるようになったみたいで。」
「教えてくれてありがとう。物知りだな。」
「いえ、偶然知ってた事ですので!‥あの、話変わって聞いてみたい事があるんですけど、行方不明者の捜索依頼って困りますか‥?」
「まぁ‥行方不明者は生死すらもわからないから困るな。」
「やっぱそうなりますよね‥」
「せめて生きてるかだけでも知れればいいんだが‥そんな事分かってたら行方不明じゃないんだよ‥」
妹さん、大丈夫かな‥
「‥分かれ道に来てしまったが、ここからどっちに進めば公園につくんだ?」
「えっと、ちょっと待ってください!」
私方向音痴だから勘で行くのは危険すぎるんだよなぁ‥大人しく地図を見よう。スマホを起動させて地図アプリを開いた。どうやら左に進むのが正解らしい。
「左‥みたいですね。左に行きましょう!」
「すまない、スマホを持っていなかったから助かった。では左に行こう。」
オスカーさんと私にはかなりの身長差があるから歩幅も随分と変わるはずなんだけど、さっきから同じペースで歩いてるな‥オスカーさんは私に歩幅を合わせてくれているみたい。少し話すのに緊張していたけど、思ったより怖くない人のよう。
「‥人がいるぞ。」
「人、ですか?」
「あぁ、黒髪ロングの女性‥のようだ。」
「黒髪ロングの女性‥それ、依頼人さんと同じ特徴です!ってか、何処にいるんですか!?」
「路地の突き当たりだ。」
「突き当たり暗すぎてよく見えないんですけど‥あ、いますね。」
「どうだ、依頼人と同じか?」
「‥はい、依頼人さんで間違いないと思います。でもとうしてここに‥」
「‥さっき地図で見させてもらったが、この突き当たりはあの公園のはずだ。」
「え、あ、そうですね!」
ヤバいオスカーさんとの話題考えてたせいでこの先が公園ってすっかり忘れてた‥しっかりしないと!
「私達に協力しようといるのかもしれない。話しかけてみよう。」
「そうですね‥私、先に行って話しかけてみます!」
そう言って私は依頼人さんの元へと駆け出した。だって全然私役に立ててないし!恥だし!!なんかオスカーさんが言ってるけど‥
「いや、一緒に行けば良くないか‥?」
キコエナイキコエナイ。
♢
--- ♢ No side ♢ ---
「あの〜‥ライアンさんですよね?」
アレルは依頼人・ライアンらしき人物に声をかけた。オスカーも追いついてきて、返事を待っていた。するとライアンはゆっくりとこちらを振り返り、2人を視界に収める。
真っ赤な瞳と幼さ残る顔、サラサラの黒髪を伸ばした見た目はまるで人形のように美しい。
「‥」
彼女はただ二人を見つめるだけで、返事をしなかった。瞬きはするので生きてはいるようだ。
「‥あの、私達依頼を受けたリュネットの者ですので、疑っているのならば御安心を。」
「‥」
オスカーが安心するよう味方だということを伝えても何も変わらなかった。
「‥と、」
小さな唇が少し動き、何かを呟いた。
真っ赤な瞳が閉じられ、その口が弧を描く。
「やっと来おったか。」
ブチッ。
皮膚を破る音が聞こえ、少女の首から何かが飛び出した。その血液は黒。閉じられた瞳が開けば、その瞳は先程の熟れた林檎のような赤い瞳ではなく、深淵のように真っ黒な瞳だった。
「長らく待ったぞ、人間達よ。」
目を細めて笑う姿はまるで悪女。そこに依頼しにきた少女の面影はない。
「え‥」
二人は理解が追いついていなかった。血の色が黒なのも、目の色が黒に変わるのも、ヴィスに寄生された人間の特徴なのだ。ヴィスに寄生され、体を突き破られれば喋ることはできないだろう。つまり彼女は、
「ヴィスと‥共存した‥?」
レルヴィのようにヴィスでもあり人間でもある存在になっていたのだ。