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入学式、大遅刻案件。
――
『 っはぁッ、はぁッ 』
待って…
死ぬ。(
私ってこんなに運動できない人でしたっけ!!?
一応、高校生の時にバド シングルス全国優勝したハズなんだけどなぁ!!?
クッソ、何でこの坂こんなに急なんだよ…!!!
しかも長ぇんだよ!!!(
『 はーッ、はーッ……つ、着いたぁ… 』
――桜が咲き乱れ、思わずくすっと笑ってしまいそうな程澄み切った空。
The・春 と言った感じだ。
入学おめでとう と書かれた看板が、体育館前に立てかけられている。
誰も居ない風景は、自分が完ッッッッ全に遅刻したことを非常によく物語っていた。(
乱れ切った荒い呼吸をゆっくりと整え、思いっきり深呼吸する。
うわ、イヤやなぁ…コレ絶対めっちゃ注目されてさ…もうこの時点でヤダ…
そろそろと、体育館の扉を開ける。
そこに居たのは―――――――――――――――
誰もいなかった!!!!!!!
否、誰も、ではない。
腹の出た、いかにもなズラを被ってるちょび髭脂ギトギトジジイと( 大失礼 )
聖ニコラウスのひげを短くしたような優しい表情の人、二人が残っている。
『 あ、アレ…?入学式の会場ってここで合ってますか…? 』
すると脂ジジイは、百匹の苦虫を噛み潰したかのように、顔を顰めた。
あ? 何だオメェ、やんのかゴルァ(
幼稚園時代の頃にはもう既にキレ性と謳われ、柔道もボクシングもやってきた私の
闘争心が限界に達しかけたその時、 サンタ先生がゆっくり口を開いた。
「 おや、君は…? 」
『 あ、遅刻して今来ました。 』
何だろう、サンタ先生が話すと、途端に空気が和んだ気がする。
暖かな日向のように、ほわほわする声だ。
絶対入学式で誰か寝ただろ、これ。(
「 嗚呼、後藤…雪穂さんだね。バドで推薦入学した 」
え、マジかよ私推薦入学してたんだけど。
新事実多すぎて頭割れそうだね。知らんけど。(
「 あのね困るんだよ。もう少し時間を考えて行動してもらいたいものですな。 」
ちょび髭が滝のような汗をひっきりなしに拭きながら、ぎろりと此方を見る。
うわ、私コイツ嫌いなんだけど。ぜってぇ面倒くせぇタイプだな。
『 あー、すいません 』
何だこのクソちょび髭。ムカつくなコイツ。
やっぱりどうやったって戦闘態勢に入る私を見て、サンタ先生が言った。
「 ほっほっほ、まぁ良いではないですか、教頭先生。 」
え、待ってサンタ先生めっちゃ好き。
おで、おまえ、すき。(((
てかちょび髭お前教頭なん????
呑気に考え事をしていると、サンタ先生の説明が終わるところだった。
終わった、なんにも聞いてなかった(
「 ――で、後藤さんは2組ね。…後藤さん? 体調でも悪いのかい…? 」
『 あ、いえ! 大丈夫です 』
「 そうか、そうか。では、教室までの道は分かるかな? 」
『 はい! 』
「 それじゃあ、いってらっしゃい。 」
サンタ先生( 校長先生 )とちょび髭( 教頭先生 )に見送られながら、
私は急ぎ足で体育館を出た。