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#5
--- 炭素side ---
さて、まずはクロムの周辺でも行くかな。わたしは『3番街』で、きょろきょろと歩き始めた。
3番街は、ストイヒア国で1番広い。わたしが普段住んでいるのは、14番町。ニッケルは3番街の、10の4に住む。新聞配達のときも、3番街だけはいつも迷ってしまう。
クロムは6の4に住んでいるらしい。北の窓で、草原が一望できる。西はバナジウム、東はマンガン、南はモリブデン。そこまでは地図で見て知っている。
ただ、行けるかどうかは全くの別問題だ。地図を片手に歩くのはきつい。
その途端、
「んぎゃっ!」
「うわっ!?」
とぶつかる音がした。
「うわうわうわ!!ごめんなさいっ!ああぁあ、6番さんを…この15番が…」
「いいわよ、別に…」
「ごめんっ!あ、初対面かな?あたしはリン!」
すっきりして、文字通り凛とした名前だ。炭素みたいなダサい名前と違っている。
「リン…わたしは炭素。6番?知ってるの?」
「ほら、『ニッケ新聞』。あたし毎日とってるんだ。だから、編集社欄のとこの顔写真も、チェック済みってわーけ」
「そう…」
白い髪を大きな三つ編みにして、その編み目ひとつひとつに赤色の球体のゴム。エプロンもどきと、ブーツ。全体的に赤・白・黒で統一されていた。
「んで、炭素さんはどーしたのっ?」
「あぁ…道に迷ったの」
「えぇ〜っ!?」
大袈裟にのぞかせた八重歯の奥から、声が出される。でかっ。
「そりゃ大変!でも、あたしに会えたのは幸運だね」
「え?」
「あたしはこう見えて、大工なんだ!」
どこからか持ち出してきた、よくみる骨の感じのおもちゃ?をぶんぶん振り回す。でも、子供がやっつけで回しているのではなく、鮮やかにまわしている。もう忍者みたいだ。
「こいつはあたしの相棒で、これが大工用品なんだ」
「へぇ…道、わかるの?」
「わかるさ。だって、殆どの家を建てたんだからね。近々、オガネソン?とやらの注文も入ったのさ。取り敢えず、誰の家へ?」
「あ〜…マンガンさんの家へ」
「了解っ!」
リンの記憶力は素晴らしく、ひとつも道に迷うことなく、効率的に到着した(らしい)。リン曰く、「これが最短ルートだ!」とのことで、そのわりには屋根とかも使っていた。「あたしの屋根は1億回のぼっても丈夫だから大丈夫さ」と言っていたのだが、真相は不明だ。
「ここがマンガンの家!んじゃ、あとは頑張ってね〜」
緩くも元気な口調で話す彼女を見送り、わたしはインターホンを押した。