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又旅浪漫
朝飯を済ませた俺は
いつものように今日の仕事をこなしていく
お出かけ前のニボシも貰えた
出先の仕入れはこれで済ませるとしよう。
完全に太陽が昇り始め、気温も上がってきた
お昼の町内チャイムまでもう少し時間がある。
まずは太陽の方角にある
大きな山へ向かうことにする。
そこにある崖の洞窟に"仕事の道具"があるのだ。
秋なんて程遠く感じてしまうほど
ニンゲンが作ったドーロは熱く揺らめいていた。
肉球が熱い。ネコは暑がりなのだ。
それに我々の肉球はデリケート、
こんなアチアチでイガイガの地面は
背中を掻く以外に使い道などない。
そんなニンゲンの謎の産物を横目に
上手いこと林や民家の陰を渡り歩く
しばらく歩くと山の麓が見えてくる。
「ひぃ、この熱気は敵わんな。
洞窟の道具は大丈夫だろうか?」
先ほど庭から眺めた時よりも大きいが
歩いてみるとそれほど遠くもない山に着いた。
「一旦木陰で休憩するとしよう」
山に入る前に
|麓《ふもと》にある草むらを鼻で掻き分け進むと
すぐに小綺麗な水源が目に入る。
ここで水分補給と休憩を済ませる
山の水分が喉を通り、腹に到達
体温がすぅっと下がって行くのが分かる。
目の前にはモンシロチョウが飛んでいる
もう子孫は残した後だろうか。
この後はどこに行くのだろうか。
そんな事をぼけっと考えながら
周りの気配に神経を研ぎ澄ませる
特に何の問題も起きていないが
これは入山前の儀式とでもいうべきか、
やっておかなければ後々面倒なのである。
ネコは他の生き物との無駄な遭遇は
どうも避ける傾向にあり、
どのネコも一人が楽だと思っている。
一人、いや一匹か、
いやいやそもそも単位など
ニンゲンが作った物でどちらか
悩んでも仕方のないことだ。
「入るか。」
いつもと変わらない様子を確認し
岩肌の陰にある|獣道《けものみち》から山へ入った。
本当に涼しくなるのか...
去年の記憶がない俺は
比較対象がないにも関わらず
いらぬ心配をしている。