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不思議の国の桜月
「ふゎぁ…」
小さな欠伸をする。
暇だぁ…
「ねぇお姉ちゃん、なんの本読んでるの?」
「秘密」
「え、見たら分かることなのに?」
「なんとなく」
「えぇ…」
そしてまた本に戻るお姉ちゃん。
河原でうとうとしてる私。
本がいるなら要るって云ってよーー!
眠りにつきそうな私の視界の端にその時入ったのは、
服を着た兎…あれ、
ひぐっちゃん……?
「ヤバイヤバイ芥川先輩との待ち合わせに遅刻しちゃう!!」
慌てて腕時計を見て走っていった。
足早っ…
なんとも不思議な光景だからか、すごく心を惹かれた。
「お姉ちゃん、一寸行ってくる!」
黙って頷くお姉ちゃん。
手を振ってくれたのに振り返ししながら、
私の足は既に|うさぎ《樋口ちゃん》を追っていた。
「一寸待って〜っ!あ、手袋落としてった!!」
「無理です遅れちゃいます!(´;ω;`)」
落とした手袋をまた渡そうとする。
その時地面に吸い込まれるように兎が消えた。
「え、っ」
スピードを緩めずについて行った私は、すぐにその理由を知ることになる。
「何この落とし穴ーーーーっっ!?」
飛び込んだのに、落ちる速さはゆっくり。
何とも不思議な感覚だけど、違和感はなかった。
何故かはわからない。
「やっと着いた…」
メッチャ一杯ドアあるんだけど。
何此処。
すると不意に、三本足のテーブルに行き当たった。
上には小さな金の鍵。
手にとって片っ端から当てはめて行ってるけれど、全然はまらない。
「…あれ」
一周廻って戻ってくると、見覚えのない小さなドアがあった。
案の定、鍵もぴったりはまってドアも開いた。
でも、すっごく小さい。
しゃがんでやっと向こうを覗けるぐらい。
「どーしよっかなぁ……ぁ、」
さっきの鍵が乗っていたテーブルを見ると、今度は
〈ワタシヲオノミ〉
そう書かれた瓶がある。
「…見るからに詐欺?」
毒?盛られてるのかな?
あ、もしかして最初から罠だった?
あれ?
…でも、瓶をずっと見ていると何かの衝動に駆られる。
上から差す光に反射して、キラキラといろんな色に輝いている。
「…綺麗だなぁ、、、」
やっぱり我慢できない。
「頂きますっ!」
飲んでみるとそれは私の好物が沢山混ざったような味がした。
苺のクレェプやケェキ、それからマカロンに…
要するに、甘かったって事。
そんなだから、あっという間に飲み干してしまった。
「…え、ぇ…あれ?」
周りを見ると、すっかり体が縮んでる。
これならドアを通れると思った束の間、鍵を取ってテーブルに置いてしまった事を思い出した。
勿論この背丈じゃ届かない。
「そんなぁ……」
すると、何処から来たのやら、小さいテーブルがあった。
上にはケーキが乗っている。
チョコペンの字で
〈ワタシヲオタベ〉
そう書いている。
なんにせよ、
「ケェキがあるなら食べない選択肢はないっ!!」
今まで食べた中で一番おいしかった。
でも、困ったことにどんどん体が大きくなっていく。
しまいには天井に頭がついてしまった。
「何なのこれ…誰か仕掛けた?能力…穴っていうのはボスだけど、、」
兎に角この体を如何にか…
「あれ、」
何時の間にか、手に持っていたウサギの手袋を手にはめていた。
「つまり、、どんどん小さくなってる?」
慌ててテーブルの上の鍵もしっかりつかむ。
兎の手袋を外すと、丁度いい背丈になっていた。
鍵を開けて、ドアを開く。
抜けると其処は大きなお屋敷の前だった。
数歩進んで見回すと、澄んだ空気の匂いがする。
「でも、、此処からどこに行けばいいの?」
慌てて引き返してきた白兎、
侯爵夫人を探しては |アリス《桜月》を|アン《銀》と間違える。
手袋扇子も探しては |アン《銀》に使いを云い付けた。
|アリス《桜月》は慌ててお屋敷へ
小さな瓶も見つけては飲んだ。
はてさてどうなることやらは、
アリスとアンと白兎。
「私、アンじゃないんだけど…」
お屋敷の中に慌てて入って、手袋と扇子を取りに行った。
見覚えのある小瓶が窓辺に置いてある。
「また背が伸びるのかなぁ…」
その時、少し思った。
背が伸びれば太宰さんを逆に揶揄えるんじゃないかって!!
私、天才!!!
躊躇う事なくそれを手に取って飲んだ。
予想通り、背はたちまち伸びる。
少しにしようと思ってたのに、一気にたくさん飲んじゃった…
「待って苦しい大きすぎ!」
今となっては小さく感じるその部屋に、ぎゅうぎゅうに詰められている。
「狭い…」
全く、こんな事になるならひぐっちゃんについて来なかったらよかった…
「銀!手袋と扇子は何処ですか!ってあれ、桜月だったんですか?…コンナニシンチョウタカカッタッケ((」
「そんな事言ってないで助けてっ!?」
「無理です怖いですそんな巨人」
「ねぇ私上司!!」
「立原如何にかしてください」
「え、俺!?無理だろ如何しろってんだよ…」
「あれ程巨大な人は初めて見た」
「じいさんもそう云ってんだし、俺らには如何にも出来ねぇな」
「芥川せんぱーい助けてください!!!!(´;ω;`)」
「ねぇヘルプはこっちなんだけど!?」
カオスじゃんもう何これ…
帰らせてくれ…もう…
「あ、桜月、キャンディでも舐めますか?」
「ねぇふざけて…キャンディ?」
もしかしたら、さっきと同じように体の大きさを変える効果があるかもしれない、とふと思った。
「やっぱり食べる!煙突から落として…」
「了解です!」
何とか狭い家の中、体を動かしながらキャンディを口に入れる。
すると見る見る小さくなっていった。
外に居る皆に問い詰められそうだったから、さっさと逃げてきた。
「此処は、、森、?」
でも、大きなキノコが置いてある。
というより、生えている。
上に何かあるかな、、
「わ"っ!!!」
「ん?」
覗いてみると、そこにドンと座っているのは乱歩さんだった。
「ら、乱歩さん?」
「君が来ることぐらい僕の超推理で分かっていたよ!で、何を聞きたいんだっけ?」
「そ、それが、、、、私は何なんですか、、?」
大きくなったり小さくなったりで頭が狂いそう…
「うーん、、それを僕が教えちゃ詰まんないから、ヒントだけあげる!片っぽは高くなるし、片っぽは低くなるよ。それじゃあね!」
「あ、ちょっ!!」
そのまま何処かへ駆けて行った。
軽い足取りで、スキップするように。
「…片っぽは高く、、?」
食べれる物と云ったらこの辺りは無いから、身長の話ではないのかな…
「あ、あった」
普通にあった。食べれるもの。
「今乗ってるじゃん」
きのこ。
どっちが片方か分からないものだから、彼方此方をちびちびと食べていく。
何時の間にか丁度いい身長になっていた。
「さて、何処に行こうかなぁ…」
さっき来たお屋敷とは逆側からも、何やら賑やかな声がする。
「行ってみよーっと」
森が開けたと思ったら、ヘンテコなお屋敷。
入り口では何やらカエルが云い合っている。
巻き込まれるのも面倒だったからすり抜けて入った。
誰かがスープを作ってる、。
その近くでは赤ちゃんをあやしてる侯爵夫人がいる。
じゃあ向こうのスープさんはメイドさんか何かかな…
「くしゅ、っ」
コショウ、入れ過ぎたのかな…
鼻がツンとして、くしゃみが出る。
周りにコショウの匂いが立ち込めてる。
如何にかならないかと思って見まわすと、
にんまりと笑った猫がいる。
あまりにも不思議な顔をしているから、侯爵夫人に聞いてしまった。
「どうしてこの猫、こんなに変な顔をしているんですか、、?」
「チェシャ猫だからに決まって居るだろう、愚者め」
「え」
芥川みたい…
そう云われれば顔もそう見えて来たかも。
毛先が少し白い所とかも。
え、でも芥川はひぐっちゃんが…
もう訳分かんない。いいや。知らなーい。
「で、でもチェシャ猫ってなんでこんな顔をしてるんですか?」
「猫は皆笑えるだろう」
あ、此奴話らしい話できる…と思ったのも束の間、
「無知な奴め」
ぐさりと刺されて沈没した。
何か話題を変えようと思ったけれど、さっきから飛んでくる料理器具の所為で集中できない。
赤ちゃんに当たっちゃうし。
オマケに騒ぎ立てながら赤ちゃんを酷くゆするものだから、
可哀そうに火がついた様に泣いてるよ。赤ちゃん。
そのまま芥川は私に赤ちゃんを放り投げて、女王様とのクロケーの準備をしに行った。
「わ、ちょっ、暴れないでっ!?」
変な赤ちゃん。
四方八方に腕を突き出して暴れる。
終いにはブゥブゥと鼻を鳴らすの。
あれ、と思いながら見ていると、何時の間にか私は子豚を抱っこしてた。
「きゃ、っ!?」
慥かにさっきまで抱っこしてた赤ちゃんが、豚になってる。
…千と千尋(((
そのまま豚は自由に森へ走って行った。
どうしよう、、
目に着いたのは、チェシャ猫だった。
「えっと、チェシャ猫さん?」
呼びかけたら、さっきよりも口をにんまりさせて笑ってる。
「こ、これからどの道を行ったら善いか知りませんか?」
「よくぞ聞いてくれたね桜月ちゃん!」
「だ、っ太宰さん⁉」
「でも何処に行きたいんだい?」
「え、えっと、」
「行き先によっても道は変わるからねぇ…」
「…ど、何処かに着けたら!!」
「ふふ、なかなか面白い事を云うじゃないか。なら、懐かしい人たちに会ってきては如何だい?」
「え、?」
「あっちに行けば会えるよ!じゃあ、また後で合おう!」
そのまま消えて行った。
変な太宰さん…じゃなくてチェシャ猫。
「取り敢えず、その懐かしい人に会ってみよっか、、」
「三月ウサギちゃんにマッドハッターっっ!?何でここに⁉え、なんっ、ルイスさんの世界、え、あれ、?」
お茶会をしてる二人。
それと、間にクッションにされてる眠りネズミ…フョードル。
もう何が何だか…
「桜月ちゃん!久しぶりっ!!」
「三月ウサギちゃんも久しぶりっ!それからマッドハッターも!」
「でも何故此処に?」
「いやこっちの台詞!!」
「桜月ちゃん、何処から来たのぉ?」
「わ、私…ひぐっちゃんを追いかけて落ちて、それから…」
「僕等はね、ずっと此処に居るんだ」
「え?」
「ずーっと、此処に居るんだよぉ?」
「な、何か二人ともちょっと変、、?」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
「好きな物飲みなよ?」
「有難うございます!」
「あ、そろそろ時間じゃないぃ?」
「本当だ、そろそろ桜月ちゃんは此処を出なきゃ」
「え、な、」
何々何の話だかさっぱり分かんない。。。
取り敢えず二人に連れられて歩いて行った。
目的に着いた時、二人はいつの間にか居なかった。
「綺麗なお庭、、」
大きなお城の入り口のお庭に、沢山のバラが咲いていた。
でも変なのは、せっせと白薔薇を赤く塗って居る事。
しかも、|トランプの兵士《探偵社の人》たちが。
「あ、あの、何でそんなに塗ってるんですか?」
「桜月さん!これは王様に怒られるからですよ!」
「お、おい賢治、そう大声で云うんじゃない…」
「王様が来たよ!皆平伏すんだ!」
途端に脅える皆。
「与謝野先生ありがとうございますッ!さ、桜月ちゃんも伏せるン…」
谷崎さん似のトランプに促されるのも聞かずに、私は王様を見に振り返ってしまった。
「…」
「中也ぁぁぁあああぁぁぁっっっ!?!?」
「うっせェ!首を撥ね、、桜月か。なら善い」
「へっ!?」
探偵社の人達に何者だよって目で見られた。
中也そんなに怖いんだ。
そのままよく分からないまんまに、何処かへ連れ出された。
何やら、クロケーをするって。
沢山の人が集まってる、、
中には見覚えの或る人も。
しかもこのクロケー、可笑しいのなんのって。
バットはフラミンゴで、ボールはハリネズミ。
皆順番もお構いなし。
本当にカオスだ。(白目)
王様も一分立たぬごとに首を斬れと喚いてるし。
如何すれば良いかもわからないままボーッとしてた。
「如何だい?調子は」
「だ、太宰さん!中也を止めて下さい!!」
「厭だよ!あのバカが何をしようと私には関係ないからねっ☆」
「うぅ…」
「あっ太宰手前!桜月から離れろ!!此奴の首を斬れ!!」
「王様、、頸しかないので切れません!!」
「あ、そっか|太宰さん《チェシャ猫》胴体ない…」
「マジ何なんだよ手前!!!」
「フフッ小さいから中也は脳味噌も小さいのだねぇ」
ムキーッと怒る中也。
こんな怒りっぽかったっけ。
「裁判を始めるぞ!」
「え、何の裁判……ですか?」
「ハートのジャックが俺の帽子を盗みやがったんだよ!!」
「これまた急な…」
そしてまたあっという間に裁判所に立っている私。
動物の裁判員。傍観者も動物。
「で、私は何故此処に?」
「桜月は見てるだけで善いから此処に居ろ」
「な、なんで?」
「俺がそう決めたからだ!」
「ねぇ中也そんな独裁者じゃ無かったよね!?」
「五月蠅ェ!首を切るぞ!!」
「もういいよ切って!そんな中也、中也じゃない!!」
云った途端に、周りにいたトランプが一斉に舞い上がって飛び掛ってきた。
「、っ!」
体を強張らせて、しゃがみ込む。
動物たちの凍り付いた顔が頭に残った。
「桜月、起きて」
「おね、ちゃん、?」
不思議そうに私を見てる。
あれ、さっきまで見てたのって、
夢。、?
「魘されたり喋ったり、忙しそうだった」
「そ、うなの、?」
未だ状況を掴めず見回すと、慥かにあの河原で、本を持っているお姉ちゃんが座ってる。
「そう云えば、中原中也が来てた。休憩時間すぎてるぞって」
「あ、そうだったの⁉ありがとう!私、行ってくる!」
黙って手を振って桜月を見送る。
私も立ち上がって持っている本を見ていた。
「不思議の国のアリス」
そう書かれた本を。
…桜月には、アリスみたいな無邪気さがずっと残っていてほしい。
あのまま、可愛らしい妹の儘で。
女王様がチェシャ猫の首を斬ろうとするシーンがこの二人で書きた過ぎて配役こうなった()
勝手にお二人さん連れてきて本当にごめんなさい!!!!!
この二人だけはこの二人しか思い浮かばなかった!!!!!!!
逆に他の人を当てるのが失礼な気さえしてきた。。
アリスさんもそうなっちゃうけどさ!!
すみません。
三月ウサギちゃんとマッドハッターさんのずっと此処に居る、は、桜月ちゃんが夢で見たとおり、ずっと心の中に居る、みたいなことを暗示してます。語彙力なくてごめんなさい。
今回色々問題ですね。
ほんとうにすみませんでした。
それと、こんな事になってしまってすみません…
リクエスト、ありがとうございました。