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4月1日、ひとつの嘘
今日は4月1日、エイプリルフールらしい。
学校は春休み、嘘をつく相手もいない。
そんな日に、元クラスメイトに呼び出された。
メールで『今日遊べる?』と来て、『遊べる』と返して。
久々に外に出て、少し桜を楽しんだりして。
そうして着いた、待ち合わせ場所の公園。
「よっ、待ったか?」
「別に、今来たところ」
その後、しばらく続く沈黙。
「……あのさ」
「……何?」
「その……好き、付き合って」
少し目を逸らしながらそう言われた。
「え、え、っと……」
驚いて、自分も少し目を逸らしてしまう。
嬉しい。けど、返事は少し迷う。
「……なんてね」
……え?
「ごめん、嘘。エイプリルフールだから、ちょっと嘘ついてみたくなっちゃって」
「……酷くない?それ」
「ごめんって。ほら、それよりさ、桜綺麗だからお花見しよっか!」
「え?だから……」
結局、その後は二人でお花見して帰った。
でも、自分に恋人なんて早いと思うし、これで良かったなって思う。
……告白の嘘をついても良い相手って思われていたことの方がショックだけど。
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「じゃあ、また進級式!」
そう言って解散した。
相手が見えなくなるまで見送って、見えなくなったら、少し溜め息をついた。
「……あ~あ」
今日呼び出したのは、告白するため。でも、いざ言った後に怖くなった。だから、エイプリルフールだってことを思い出して、それを使った。
本当、臆病で申し訳ない。
……でも、来年は、もう1回、告白するんだ。
嘘じゃない告白を。もう一度、来年の今日、ここで。
二人で桜を見ながら、色んなことを話した今日のことを、思い出しながら。
もう1回言うんだ。「付き合って」って。
吹いた風に舞う桜に、寄り添い合う一組の恋人たちの姿を思い描きながら、公園を出た。