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救いを待つ少女達
和泉「ここが・・・歯車王国?」
20歳の女性・|林和泉《はやしいずみ》は、使用人を募集していた歯車王国にやってきた。
和泉「うまくやっていけたらいいなぁ」
和泉は期待を胸に、王城に入っていった。
他にも使用人にしてもらうために集まった人は何人もいる。
和泉「こんなに・・・。雇ってもらえるのかな」
和泉自身は知らない。
和泉には重度の記憶障害があり、一定期間で記憶を失ってしまうことを。
19歳の少女・|如月日寄《きさらぎひより》は、歯車王国の幹部補佐になり、めちゃくちゃ仕事に励んでいた。
日寄「コネシマさーん!次B国幹部との対談です!そろそろ時間ですよー!」
孝行「あ、そうやん!ありがとう日寄さん!」
日寄「トントンさーん!書類ここに置いておきますね!」
豚平「お、完璧やな!ありがとうな」
日寄は仕事熱心な幹部補佐としてみんなから慕われていた。
でも、日寄には誰にも言えない秘密がある。
それは、日寄の目がほとんど見えていないことだった。
16歳の少女・|篠宮千歳《しのみやちとせ》は、家出して歯車王国に一人で暮らしている。
現在は歯車王国の幹部になるために猛勉強中だ。
呂戊太「あ、千歳やん」
千歳「ロボロ様。こんにちは」
呂戊太「毎日勉強してて偉いなぁ、難しないん?」
千歳「幹部になるためですから。このくらいなんてことはありません」
千歳はそう言って笑っていたが、頭にあるのは姉のことばかり。
姉と仲直りしたいと思っていても、気まずい故にどうすることもできなかった。
17歳の少女・|菱川穂波《ひしかわほなみ》は、前通っていた学校でいじめられ、歯車王国に引っ越してきた。
若くして幹部になり、それなりに充実した日々を送っていた。
穂波「ありがとうございました!」
蓮「ええよ!ほなちゃんも強なったな!」
穂波「また戦闘訓練お相手してください!」
夜、蓮との戦闘訓練を終えた穂波は部屋に戻ると、暗い部屋の中で泣きじゃくった。
いじめられていたせいなのか、穂波は幼児退行している。
夜になると、子供のように泣いてしまうのだ。
18歳の少女・|菊池《きくち》あけびは、武器屋で店番をしている看板娘。
いつも同じ椅子に座ってにこやかに笑っていた。
あけび「いらっしゃいませ!」
希「あけび〜!」
あけび「いつも当店をご利用いただきありがとうございます!ナイフでしたらあちらにございますよ」
希「ありがとうな!ほなこれにしよかな〜」
いつも座って接客しているのには、理由があった。
あけびは下半身付随であり、車椅子がなければ動けなかったのだ。
17歳の|剣城《けんじょう》つるぎは、二刀流で戦う兵学校の生徒である。
肩につかないショートカットの美人で、初見では男の子だと思うだろう。
大「つるちゃーん」
つるぎ「ああ、鬱様ですか。毎日毎日僕のこと見にきて、よく飽きませんね」
大「暇やもん」
つるぎ「随分あっさりですね」
つるぎはれっきとした女の子だ。
家庭の事情で、つるぎは男性のフリをしなくてはならなかった。
18歳の少女・|涼風悠宇《すずかぜゆう》は、歯車王国の幹部になり、部屋にこもって仕事ばかりしていた。
舞音「ゆーうちゃん」
悠宇「マンちゃん」
舞音「仕事ばっかで疲れたやろ?お茶会行こ!」
悠宇「そうね。いつものカフェテリア?」
舞音「そうそう!早よ行こ!」
悠宇は、誰にも言っていない。
自分がアルビノで、日光の下を歩けないことを。
20歳の女性・|篠宮由美《しのみやゆみ》は、両親のもとを逃げ出し、歯車王国の幹部補佐として転がり込んでいた。
由美「皆様、もうすぐ幹部会議のお時間ですよ」
一矢「あ、そういえば・・・」
豚平「資料どこやっけ?」
由美「こちらです」
テキパキと仕事をこなす彼女は、妹の千歳を探していた。
千歳に、謝るために。
15歳の少女・|園崎理瀬《そのざきりせ》は、とあるパソコン教室に通っている。
理瀬は同じパソコン教室に参加している一人の幹部と仲良くなっていた。
翔「理瀬さん。最近耳の調子はどうっすか?」
理瀬「大丈夫です。ちゃんと聞こえてますよ」
翔「よかった・・・困ったことあれば言ってくださいよ」
理瀬「ありがとうございます」
理瀬はその彼に嘘をついていた。
理瀬は難聴ではなく、聴覚過敏だったのだ。
15歳の少女・|嶋本刹那《しまもとせつな》は、王国幹部達がよくやってくるレストランで働いている。
最近、レストランに毎日のようにきてくれる常連の幹部がいる。
刹那「いらっしゃい。鬱様にチーノ様でしたか。最近ご贔屓にしてくれて感謝しています」
橙希「ええでええで!ここ美味いんやもん」
大「今度城に招待してええか?総統にも食べてもらいたいんや」
刹那「そんな恐れ多い・・・。美味しいと言っていただけるだけで嬉しいですわ」
刹那はそそくさとバックヤードに戻り、大きく咳き込み始めた。
刹那は喘息持ちで、時々咳が止まらなくなってしまうのである。
18歳の少女・|花緒亜澄《はなおあずみ》は、国立図書館の司書を務めている少女である。
幹部達も時々訪れる有名な図書館だった。
光「亜澄さん!」
亜澄「・・・あ、エーミール様。今日も調べ物ですか」
光「そう!パソコン使わせてもらえる?」
亜澄「いいですよ。どうぞ」
亜澄は光がいなくなったのを確認し、ため息をついた。
亜澄の左手は作り物・・・義手であり、誰かに見られるのを恐れていた。
21歳の女性・|大柳紗希《おおやぎさき》は、3年前から王国の幹部として働いている。
戦闘にはめちゃくちゃ強く、あの希すらも上回るほどの戦闘力を持っていた。
遼「なぁ紗希・・・あんたなんでそんな強いん?」
希「強くなる方法教えてやぁ」
紗希「いやいや・・・私戦うのそんなに好きじゃないし」
遼「えぇ・・・」
紗希自身は常識人で優しい性格なのだが、なぜそんなに強いのか。
それは、本人すら自覚なしの二重人格だからだ。
19歳の少女・|白夜麗奈《はくやれいな》は、1年前から使用人として幹部達に仕えていた。
王城では珍しく、住み込みではなく毎日家に帰っている。
麗奈「あら、ひとらん様・・・。お疲れ様です」
一矢「ありがとう。麗奈ちゃんはもう帰るの?」
麗奈「ええ。家で父と母が待っていますし」
一矢「そっか、気をつけてね」
家への帰り道、麗奈の足取りは重かった。家に帰れば、地獄が待っている。
両親の束縛という名の地獄が。
20歳の女性・|漣春花《さざなみはるか》は、王城専属看護師で、普段から医務室にこもっていた。
晋平「春花!ロボロのカルテちょうだい!」
春花「・・・ん」
晋平「ありがと!あとオスマンのカルテも」
春花「・・・(無言で差し出す)」
晋平「ありがとね!」
春花は軍医や幹部の前では一切喋らない。
ストレスにより、人前で喋ることができなくなってしまったのだ。
14歳の少女・|凪瀬綾乃《なぎせあやの》は、王城の最年少幹部として他の幹部から可愛がられていた。
晴人「あやちゃん!」
綾乃「んぇ、はるくん!どうしたの?」
晴人「これから遊びに行かない?美味しい喫茶店があるんよ!」
綾乃「いいの⁉︎やったー!行こ!」
最年少コンビの会話に他の幹部達も癒される中、綾乃は全く癒されなかった。
綾乃の袖の下には、多くの切り傷、青あざ、そしてリスカ痕が隠されている。
綾乃は親から虐待されていたのに、誰にも言えなかったのだ。
脅威の3000超え