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#12 誘拐
6時半、インターはまだ就寝しています。今日はフレンチトーストの予定なので、早めに起床しました。しかし、いつもこれぐらいな気もします。
前日につけておいた、食パンを入れたタッパーを取り出します。キッチンに置くと、インターホンが鳴りました。インターはパジャマですが、私は違います。
「はい」
ガチャリ、とドアを開けました。その後、視界が奪われました。どうやら、布の袋をすっぽりとかぶされたようです。
その後、背中を押され、歩きます。車に乗り込みました。
「シャットダウンボタンは?」
ボイスチェンジャーで変えているのかもしれません。男女の区別もつかない声がしました。
以前は、私の意思で強制シャットダウンをしました。
シャットダウンボタンは…ありません。インターのパソコンから操作が可能になります。ですが、嘘をつくほうが身のためでしょう。…あぁ、確かアップデートボタンが足の裏にありました。肌の色とカモフラージュしていますし、『アップデートボタン』という表記もありません。無論、私とインターしか使わないのですから。
「右足の裏にあります。シャットダウンから回復するときは、もう一度押します」
靴と靴下を脱がされ、右足の裏のボタンを押されました。
「シャットダウンを開始します。5,4,3,2,1」
そう言いました。
感情を察知されない、合成音声。初めてそれで良かったと思えました。
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「んぁ〜……うぇっ、もう8時!?」
やばいやばいやばいっ、もう、なんでネット起こしてくれなかったんだよーっ。
「ネットー!なんで起こさなかったのー?」
返事がない。
「ネットー?ねえ、ネットー?そんな冗談、面白くないよー?」
ねえ、ネットー?
そんな声が響き渡る。かちゃ、という音がした。一瞬期待するものの、アンドロイドである彼女の足音ではなく、機械の義足の音だ。
キッチンに向かう。いつもネットが包丁を使うスペースに、黄色い液に浸してある食パンが入ったタッパーがひとつ。
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目をつむり、シャットダウンした《《ふり》》をします。
2時間38分ほど経ちました。ブレーキがかかり、その後、右足のボタンを押されました。
「着いた」
視界に光が入り込みます。黒塗りの高級車に乗っていました。降りると、そこは豪華絢爛な豪邸でした。ヨーロッパのような。庭は広く、噴水があります。
声の主は、ただのスーツ男でした。
「今日から、お前はメイドだ」