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あなたが
琥珀色の街、上海蟹の朝-くるり
ずっとマイキー視点
冷たい風が頬を擦るように横切っていった。
肌が乾燥していくようで、少しヒリッとした。
ぷらぷらと出歩いていると、路地の向こうに見慣れた柄シャツの男が建物の角に消えていく姿が見えた。
「なんだ。ここに居たのか」
血生臭い路地に足を踏み入れると、とても繁盛しているようには見えないさびれた商店街のような開けた道が、そこにはあった。
「探してたんだよ………ずっとさ!」
一番に目がついたのは青天井の廃屋に差している、柔らかい日差しだ。この色褪せた景色の中であそこだけ鮮やかな色合いになっていた。
直感で、歩き進めた。
「今日会いにきたのは昨日の思い出だけじゃ、お前が寂しいんじゃないかって思ったからなんだけどっさ!……」
相変わらず、返事はきこえない。カビの臭いが充満する中で、ただ血のにおいのする方へ進めばいい。彼奴の居場所はわかっている。
それなのに、やけに足が重かった。
「ッッ………ハアハアハアッ!!」
「っ……美味かったよな!昨日の中華。」
そこにいるのか。見つけたくなんか、なかったな。
苦しそうな息継ぎの音。血が止まらなくて、痛みも酷くて、きっとひどく怯えているんだろう。
「お前は、ひどく酔ってたから覚えてねーかもだけどな!」
ふと地面に目を向けると、埃に覆われた地面が一部だけ色褪せて、日焼けしていた。もちろん、彼奴の足跡もあった。一歩ずつゆっくりと踏みしめると彼奴の足は俺の一回りも大きい事がわかった。顔が引き攣っていくのがわかる。瞼と頬がヒリヒリと痛んで、じんわりと熱くなった。すると、すぐ近くに大きな血痕があった。もうじき、完全に乾くだろう。
「だからか、お前が路地裏に落ちてた空の酒瓶を猫だと思って撫でくり回してたときはもう!…」
「腹、抱えて笑ったよ……」
声に力が籠っていくのに、腕の震えはひどくなるばかりだった。
「なあ、お前その柄シャツお気に入りっツッてたよな?…」
「言いにくいけど、それすげえダセェよ」
こんなに重いものだったのだろうか。肩が重たい。ゆっくり、眼前まで掲げると鉛の塊から焦げたような匂いがした。
歩幅が小さくなっていく、彼奴の足跡とそばにある血痕を辿っていくと段々と鮮やかな赤になっていった。
このまま、踏み入れば………
途端に耳鳴りがした。それも直ぐにぷちっと、途切れた。
秒針の音だけが壁越しにきこえた。
たった一枚の壁越しだ。それも簡単に超えられる。
「もう、何もねえもんなッ………」
**カチャ**
重い鉛をこめかみに押し当てると中で弾がぶつかりあう、金属音が耳元できこえた。