公開中
Tens:soleil 第8話
ガンバ ルヨ
先生
コツ…コツ…コツ…
「あ、そういえばカガリ君。みんなの星術の事知らないでしょ?」
「たしかに知らなかったな。教えてくれ。」
「うん。教えてあげる。」
ゼラウスと俺は階段を降りきった。
「アリアちゃんの星術は『生命のアリエッタ』って言って、植物の気持ちとかを音階にして聴くことができるんだって。気持ちが同調すれば自分の指示も聞いてくれるんだって。」
「へぇ。面白い術だな。じゃあ今そこに生えてる植物とも話せるのか?」
「そうなんじゃない?まぁ私には聞こえないけど。」
アリアの背中のマークは植物と話せることを表していたのか。そう考えたら結構納得いくな。
**ドォン!**
「うお!なんの音だ!」
ソレイユが反応した。
「あっち…アカデメイア学院ですね。」
「アカデメイア学院…?」
「あ、もうみんな起きるような時間だ。とりあえず行きましょうか。」
ゼラウスと俺は学院の方へ急いだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「全員避難しろぉ!死にたくねぇなら逃げやがれぇぇぇ!!!」
俺が学院に到着すると、金髪の男が銃器をもって暴れていた。
「あ、ゼラウス様ですか。どうしてこちらに?」
ヒレ耳の男性が腕を組みながらこちらに話しかけてきた。
「アレテー先生、これは今どう言う状況なの?」
「学院の不合格者が暴れているのでしょう。奴の顔は1番最初の面接で落とした男と似ています。しかも奴は多数の魔物を使役しています。」
「結構大変ね。」
「あ、そちらの方は…神の子…でしょうか?」
「ええ、そうよ。」
男はこちらを見つめた。
「まぁそんなことはどうでもいいです。早く止めましょう。ゼラウス様がいるのであればすぐに済みそうですね。」
「ええ、じゃあ早く終わらせるね。」
するとゼラウスは祈り始めた。
頭の後ろの光輪も光り始め、6つの羽がゼラウスを覆った。
「『時間』のアルコーン、力を少し貸してください。」
ゴーン…
鐘の音が鳴り響くと同時に、周りは動きを停止した。
ゼラウスは暴れていた男の方へ行き、男の額に触れた。
「ちょっと眠ってて。」
ゴーン…
再び時間が動き出した。
男は気がつくと倒れていた。
「さすがですね。ご協力、感謝いたします。」
「この男、ライト・スクウェアの人だね。」
ゼラウスは男の顔を覗き込みながら言った。
「ライト・スクウェアの人間は気性が荒いですね。穏やかさと言うものを知らないようです。」
「そこの神の子のあなた、魔物の処理の手伝いをお願いしま…あなた、武器を所持していないのですか?」
アレテーはこちらをまじまじと見た。
「あっ、武器なら俺が持ってるぜ!」
ソレイユはポケットから人間サイズの片手剣を取り出した。
ん…なんだ?なんか初めてみたはずなのに、使い方を覚えている様な気がする…。
「ありがとう、ソレイユ。」
俺は剣を持って魔物に斬りかかった。
ザシュッ!
ザン!
あれ…剣なんて初めて持ったのに、戦えてる?
アレテーは心を読んだかの様に、俺の剣術に合わせて戦い方を変えた。
「最後の一匹です!」
ザン!
剣の音と共に、魔物は崩れ去った。
「はぁ…はぁ…」
「カガリ君、大丈夫?今デメテルちゃん達がここに向かってるんだって。」
「そ…うか…。」
それにしても…戦闘能力に関してはあまり問題はないようね。まぁ結構疲れているけど。
「あっ、ゼラウス様〜。助けに来ましたよ〜」
「カガリ君、私は館に戻るからデメテルちゃんの言うこと、ちゃんと聞くのよ。」
応答はなかった。
この運動量でこの体力の消耗量…帰ったら修行のメニューでも考えておこうかしら…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ん…ん?」
「あ、起きた?」
起きるとデメテルの膝の上にいた。
「あぁ、こら。動かないでね。今治療中だからね。」
「起きたのですか?私は下の階で研究をしていますので、非常時になった場合は呼んで下さい。では。」
アレテーは壊れていない方の階段を降りていった。
「ねぇカガリ君?私ね、君に伝えたいことがあるんだ。」
「な…んだ?」
「私、前に君を治療した時魔術で治療したって言ったでしょ?」
それがどうしたんだ?と、答えたかったが呂律が回らず喋れなかった。
「実はそれ、嘘なんだ。あれと今君を治療しているこれは、私の星術『道を歩む慈悲の心』だよ。」
「どうして…そんな嘘を?」
デメテルは表情を変えずに話し始めた。
「ランゼ君の事は覚えてる?あの子の星術は、『吹き荒れる地盤』って言って、身体能力とかを大幅に強化する代わりに感情の起伏が大きくなってしまって、しかも術中は記憶がないの。彼はその力で家族をみんな殺してしまったから。」
「彼は星霜の館に来たときから星術の話をしたがらないの。私も彼の前ではあまり星術の話をしないようにしているの。」
「ごめんね。嘘ついちゃって。」
そうだったのか…ランゼが素っ気ない態度だったのはそんな過去があったからなのか…。
「帰って時間があったら話しかけてみてくれない?彼…女の子と話すのが苦手らしくて…。」
「ああ…分かった。出来る限りな…」
「ありがとう。」
「そもそも、シャッフングや永霓とかの国以外の人類は極端に魔力が少ないから、魔術を使えない人間が多いけどね。」
**ドン!**
「え?なんだこれ…」
急に下の階から爆発音が鳴った。
「よし!治療も終わったし…どうする?下の階に行く?」
「行ってみよう。アレテーが心配だ。」
俺とデメテルは壊れていない方の階段を降り始めた。
専門用語解説
アカデメイア学院
オリンポスで最も大きく、世界中から天才が集う学院。
様々な研究機関が学院内に存在しており「勉学の頂点を目指したければアカデメイアを目指せ。」と言う言葉もあるほどに巨大で、研究内容は多岐に渡る。