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悪魔の血を引く者の生き様
ネロは一度、視線を逸らす。
「……この世界はな。悪魔と、人間の血が混じった存在がいるんだ」
そして、たっぷりと沈黙をとってから口を開いた。
「そいつらは生まれつき魔力が強く、その力は恐れられている」
ネロはエリスを見る。
「『|悪魔の血を引く者《インフェルノ・ブラッド》』は必ず黒髪で、高い魔力を持っている……」
エリスは一瞬、息を呑む。
「——条件は揃っているな」
そう…それはまさに、エリスの特徴とぴったり当てはまっていた。
「『|悪魔の血を引く者《インフェルノ・ブラッド》』ってのはな」
--- 「——“悪魔の血を引いている人間”の、総称だ」 ---
「…じゃあ、私は……悪魔の血を、引いているの?」
「あぁ…だけどな、嬢ちゃん。本当に悪魔の血を引いてるかどうかは、問題じゃないんだ」
「——連中にとって大事なのは、“悪魔っぽいかどうか”だ」
「…どういうこと?」
「別に、悪魔の血を引いている人間全員が凶悪で残忍な奴だと言うわけではない。それなのに、お前ら黒髪の人間は差別されている」
「連中は誰かを非難することで、自分は正しいことをしていると安心したいんだ」
つまり、とネロは言い換える。
「あいつらは、欲しているだよ——“悪役”をな」
「……じゃあ」
エリスは少し考えてから、こう言った。
「私が悪魔と契約した今は?」
ネロは、少しだけ笑う。
「今は、立派に“本物”だな」
そう言いながらも、ネロはすぐにこう続ける。
「…だから、なんだ?」
--- 「——お前がどう生きるかは、お前が決めろ」 ---
エリスの瞳が揺れる。
そして、エリスは気づいた。
——無意識のうちに、泣きそうになっていたことに。
純粋に悲しかったのだ。
誰とも交流することが許されず、前世と同じように、孤独に生きていかねばならないのかもしれないということが。
もちろん、ネロが友達になってくれたのは嬉しい。
…だけど。
(だけど、私は…!)
「——もっと、友達を作りたい…」
「“悪役”でも“脇役”でもない、“主人公”として生きたい…!!」
「…よく言った。上出来だ、嬢ちゃん」
ぐしゃっと、ネロの手がエリスの頭を撫でる。革のグローブがはめ込まれたその手は、力強くて大きかった。
「その望みを叶えたいなら——他者から与えられた“役”に従うな。“物語”は、己の手で奪って書き換えろ」
エリスは、真っすぐとネロの眼を見て。
——しっかりと、頷いた。