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ツギハギだらけの思い出を【ツギハギスタッカート】
この小説は、とあ様の『ツギハギスタッカート』という曲の二次創作です。
https://www.youtube.com/watch?v=p2Irc9NPCtk&themeRefresh=1
↑本家様
自己解釈とずっと書きたかった関係性をごちゃごちゃにしたものになります。考察要素?とか作ったつもりなので、最後まで読んでみてください。
あの時期待した視線の糸で縫い合わせた、ツギハギだらけの思い出。
やってきたその日は彼への想いは告げず、ボタンも貰わず。寂しさ、切なさ、後悔。全てを込めた最後のツギハギを縫い付ける。
解けないようにしっかり玉留めをして、少し躊躇いながらも、糸に終止符を打った。
会心の出来だ。ひとしきり感動した後、あの日の決意を守ろうとして、やめる。
どこのゴミ箱も受け付けてくれなかったということにして、その思い出を優しく丁寧に溶かすことにした。
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タイミングが悪かっただけなののか、どのタイミングでも同じ今が訪れていたのかもわからない。
もう少し早く彼のことを好きになれていたら、もう少し彼と仲良くなれていたら、きっと私はその日を待たずに想いを伝えるだろう。
あと3ヶ月、たった3ヶ月で、彼は学校から姿を消す。私と彼がいつも話している通学路には、もっと早く姿を見せなくなる。
卒業。受験。一つ上の彼にのしかかっている言葉が、私の影を人知れず引っ張っていた。
学年が違う、変えられないこの事実を重ね合わせてくれるのが、学校からの下校時間だった。
彼が友達と別れてからの少ない時間。“知り合い”の世間話。彼の後ろ姿を認識した私と、なぜか何度も振り返ってくる彼。目が合えばピンとはられる糸を自ら|断ち切る《逸らす》私と、ふいっと目を逸らした彼。
視線の糸で縫われたツギハギだらけのこの時間が、もうそろそろ終わりを迎える。
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しょうもない会話しかしない帰り道、深入りはさせてくれない彼の声。隣同士だからこそ、プツッときれる視線の糸。
もうすぐこの糸は、永遠にちぎれたままになる。糸の中身はカラフルなはずなのに、ちぎれた瞬間に一色の芯が顔を出す。細い細いその芯は、きっと気が付いてもらえない。
時間が経つごとに、毎日の帰り道が惜しくなる。いつもの『じゃあね』が私の喉元に詰まったままになる。
自暴自棄になって、想いを伝えようとした。けど、ほんの少しの理性がそれを全力で止めた。
もう少しだけ、このまま。
でもきっと、卒業までにこの関係は進まない。変わらない。
寂しくて、でも吹っ切りたくて。諦められなくて、矛盾が生まれて。そしてまた『じゃあね』がやってくる。
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そっけない態度が嫌い。妙に高い身長が嫌い。近くじゃ合わない視線が嫌い。何考えてるかわかんない顔が嫌い。
何度もチラチラ見てきて、目があった瞬間に逸らされるところが嫌い。目があっただけでとんでもない動悸がやってくるから嫌い。
お願いだからこっちを見ないで、勘違いする。
お願いだからこっちを見て、違わない勘違いをして。
人の心が読めたらいいのに。
怖いから読みたくないよ。
思わせぶり、しないで。
生まれる矛盾を既読して、両想いを何度も考えて。精一杯の虚勢で無視して、そんな偶然起こるはずもなくて。
きっと、ずっと、向こうはなんとも思ってない。
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ツギハギだらけの思い出は、もう原型がほとんどない。
彼の気持ちも自分の気持ちもわからないまま、その日は絶対やってくる。
今はただ、『おめでとう』をいうための関係性と準備を。その日の帰り道は知られないよう泣いて、視線の糸で縫い合わせたツギハギに、贅沢を言うなら彼からもらったボタンを最後に縫い付けたい。
でも、それはきっと叶わないから。大切に、破かないようにボタンの代わりとなる最後のツギハギを縫い付ける。そのあとは──
全部、破いて捨ててしまおう。
なんとなく考察募集。個人的には『彼』の気持ちの考察とかくれると喜びます。どんなのでも構いません。
後感想もください。本家様聞いてね。